サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

Jaja

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第五章 魔王討伐

第145話 急襲

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 ヴェガが何故槍もどきを使う事になったか。
 それはここまでの道中で盗賊狩りをしている時まで話は遡る。

 「おお! とうとう捕食が仕事したな! 能力が増えてるぞ!」

 ヴェガが持っている捕食の能力。俺は最初、アシュラがそうだったように、食べれば経験値が微量もらえる能力だと思ってたけど、解析をしてみれば全然別物だった。
 捕食とは食べた相手のスキルや能力を低確率で取得出来るという、ラノベ主人公が持ってそうなユニーククラスの能力。

 「でも、これだけ食べてようやくか」

 最初は俺達は舞い上がって、どんどん人間をヴェガに渡して食べさせた。
 魔物は妲己とアシュラ、元人間組が食べるからね。
 でも一向に能力をラーニングする事が出来ずに、滅茶苦茶確率が低いんだなと残念に思ってたんだ。
 まぁ、ポンポン能力を獲得できたら、異能レベルだよねとすぐに納得したけど。

 次は同じスキル持ちを食べ続けたら、早期に獲得出来るのかの実験をしたいな。今までは無差別に食べさせてきたけど、ちょっとずつ厳選していこう。
 鮮度が重要かも気になるな。

 「【槍術】か。ありきたりだけど、覚えれたのは大きいぞ。良かったな」

 「……」

 ヴェガはまだ実感がないのか、首を傾げている。
 それでも嬉しそうに妲己とウェインにわたわたと身振り手振りで報告してるのは可愛らしい。
 最近では妲己が良く面倒を見て、模擬戦やらに付き合ってるから仲良しなんだよね。さすが聖母。
 ウェインは製作者だからかな?

 「ふむ。なんか虚な目をしてるのにも慣れてきたな。あれはあれで可愛いんじゃないかと思えてきた」

 楽しそうに話してるのを見て独り言を呟く。
 俺も異世界に来て中々価値観が変わってきてるようだ。まぁ、良い変化なんじゃないかな。
 





 それは突然やってきた。

 「ん? んんん? なんだこのスピード」

 「レト様。嫌な予感がします。すぐに戦闘準備を」

 魔法をぶっ放した後、案の定余波がやばそうだったので、影の中で程よい緊張感を維持しながら待機していると、俺の【音魔法】の探知に物凄い勢いで動く魔物の群れを感じ取った。
 グレースも【シックスセンス】で感じ取ったのか、即時戦闘態勢になっている。

 「この災害をものともせずに突っ込んでくるのか。しかも速さがやばい。すぐ接敵するぞ」

 俺は早速魔王が出てきたのかと、ワクワクしながら影から出る。
 そしてすぐに遠見で解析を開始する。


 『レブナント・ディザスター
  名前  ハイバック
  【魔物能力】
  剣聖術
  暗黒魔法
  火炎魔法
  死魔纏鎧
  暗黒闘技
  アンデッド生成          』


 「群れを率いてる奴はやべぇ。名前もあるし」

 「幹部ですかね?」

 出来ればそうであってほしい。これで下っ端とかなら俺達が挑むにはまだ実力が足りてなさすぎる。

 「とりあえず名前持ちの奴は俺がやる。他は、群れを相手にしてくれ。どいつも普通に強いから油断しないように。後、ヴェガのフォローはよろしく。まだヴェガ単体では多分勝てない」

 早口で指示を出して、俺は【鬼魔纏鎧】を使う。
 強そうな相手だし、初めから全力でいかないと。

 「ハッハァー!」

 俺はブラッド・チェーンで道を切り開きながら、名前持ちの魔物の所に特攻する。
 モブは眷属を信じて最低限しか処理していない。

 「ムッ!」

 接敵間近になると体内にブラッド・チェーンを収納。そして【感覚狂乱】を一点集中で脚にかける。
 レブナント・ディザスター。聞いた事もない魔物で、見た目は血色が悪い以外はほとんど人にみえる。

 「くたばりやがれ!」

 「ハッ!」

 俺は【感覚狂乱】で体勢を崩した所に顔面へ膝蹴りをお見舞いしようとしたが、持っていた剣の腹で綺麗に流される。

 「なンと野蛮ナ。あいサつも無シに襲イカかってクるトは」

 「俺達のあの魔法が挨拶代わりだよ!」

 片言で喋ってきてびっくり。うちの魔物は誰も喋らないから、ちょびっと羨ましいですねぇ。
 内心でそんな事を思いながら、近接戦へ移行する。相手は【剣聖術】やら【死魔纏鎧】を使って対抗してくるが、あれは合間合間に【感覚狂乱】や停止の【魔眼】、【影支配】で動きを阻害して、戦いを優位に進める。

 「小癪ナ!」

 「戦いに正々堂々なんてないんだよ!」

 勝てば良かろうなのだ。小物臭がプンプンする魔王って言われるかもな。それでも勝ち続けてればいつかは大魔王。そう信じてます。

 「ふはははは! 中々分かってきたぞ!」

 「クッ! コの!」

 吸血鬼の体ってやっぱり高スペックですわぁ。
 アシュラの【戦闘学習】を羨ましがってたけど、俺は素でその能力があるんじゃなかろうか。
 レブナント・ディザスターのハイバック君の【剣聖術】や【暗黒闘技】にどんどんと対応して、上回っていく。

 「ふむ。ここら辺が底か」

 戦い始めて15分程が経過。
 最初の数分で俺の方が実力を上回ってると判断してからは、戦闘技術向上の為に殺さないようにしてきたけど、引き出しがなくなってきた模様。

 眷属達の戦いは既に終わってるようで、こちらの邪魔をしないように観戦している。

 「一つ聞きたいんだけど」

 「ナ、ナんダ!?」

 戦闘は継続しつつ聞きたい事があったので、話しかけてみたけど、ハイバックには余り余裕が無いっぽい。息を若干切らせつつ、睨みつけるようにこちらを見てくる。アンデッドでも息切れするんだな。

 「お前の強さは魔王の部下の中でどの辺なの?」

 出来れば、No.2とか言ってほしい。それならこのまま魔王の元に特攻かけても、最悪逃げるぐらいは出来るはず。

 「俺ハ名持ちノナカでは一番ノ新参者ヨ!」

 「あ、教えてくれるんだ」

 ダメ元で聞いたのにあっさり教えてくれた。
 名持ちの新参者って事は、幹部の中では最弱って事かね? うーん。ファンタスティック。

 「俺ニ勝てタカラとイイキニなるなヨ! 今ニ他の方々ガお前ヲ討ち滅ぼしテクレル!」

 「なんで最後にそんな捨て台詞を吐くんだ。一気にモブのやられ役みたいになっちゃったぞ」

 「グ、グがぁぁア!」

 俺は血を一気に抜いて戦闘を終了する。ほとんど人型だからか、しっかり血が流れていた。
 多分アンデッドだと思うんだけど、血はあるんだな。
 
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