サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

第六章 ゆるり旅

第180話 必中

　
　新たに眷属になったキンブルはおっぱい星人だった。

　「それで？　そんな動機で森から出て来てなんであっさり捕まったんだ？」

　「普通に騙されたんだ。大きなおっぱいに惹かれて一晩お相手をお願いしたら、どうやら闇組織の人間だったみたいだね。薬で眠らされて売り飛ばされてしまった。なにやら魔力が放出出来ない魔道具を取り付けられてて絶体絶命だったんだよ。いやぁ。我ながら迂闊だったなぁ」

　話を聞くと、どうやら森を出てから三年ぐらいは順風満帆な生活を送っていたらしい。
　冒険者登録をして、お金を稼ぎ娼館に行く。
　もしくはそこらの巨乳女子を引っ掛ける。

　持ち前の顔面美と【詐術】込みの話術で女に困る事は無かったようだ。ムカつく。今の吸血鬼フェイスもかなりイケメンだけど、やっぱり他のイケメンはムカつく。

　しかし、いつものように巨乳女子を引っ掛けたら、それが闇組織の人間であれよあれよと売り物に。それで王城に捕えられていたと。

　「ふむん。俺に見つかって良かったな」

　「よ、良かったんだろうか…」

　少なくとも死ぬ事は無くなったんだから。
　良い事だと俺は思うよ。株式会社ヴァンパイアはアットホームな職場だぜ。
　安心してこれから俺の為に働いてくれたまえ。

　「ほ、報酬は…？」

　「報酬？」

　なんだそれ。初めて聞く言葉だな。
　うちの会社に報酬という概念はありません。
　いや、何々が欲しいとか言われたら普通に用意するけど。

　「僕は巨乳女子が欲しい！！」

　「お前グレースに手を出したらぶっ飛ばすぞ」

　こんな奴と穴兄弟なんかになりたくない。
　グレースは俺の物なので悪しからず。

　「街に寄った時に娼館に行くぐらいなら許可を出すけど」

　「あ、ありがとうこざいます！　喜んで働くよ！高級娼館行っても良いかい！？　僕の稼ぎじゃ中々手を出せなくて！　あんなにお金があるなら行ってみたいよ！！」

　がめつい。こいつ中々肝が据わってるな。
　影に雑に放置されてる金貨をズビシッと指差して高級娼館を所望してきやがった。

　「それは好きにしたらって感じだけど。問題は俺達がそんなに街に寄らない事なんだよな」

　「え？　そうなのかい？」

　「今は俺のお城を作りたいから王都巡りしてるけど。それが終わったら本格的に城作りをする予定だし。街や国から離れた所に建てる予定だし、当分行かなくなるんじゃないかなぁ」

　「そ、そんな…。僕の生き甲斐なんだよ！！　なんとかならないのかい！？」

　うーん。そう言われましても。
　国を作って歓楽街でも作れば、娼館も作るだろうけど。なんなら日本ばりに多種多様な風俗街を作ってやろうかなと思うけど。
　それをやるとしてもかなり先の事だしなぁ。

　「あの捕えられてた女。何人か生け捕りにしておけば良かったな。それをこいつにあげれば良かったや」

　使い道が無いと思ってスパッとやっちゃった。
　失敗したな。まさかおっぱい星人が居るとは思って無かったし。

　「殺しちゃったんですか！？　あぁ！　なんて勿体無い事を！！」

　殺したって言って、次に出てくる言葉が勿体無いか。こいつ、こう見えて実はイカれてるな？　まぁ、それぐらいの感性がないとうちの眷属でやっていくのは厳しいけど。

　平気で人を実験する奴も居るし、嬉しそうに食べる奴もいる。
　その光景を見ても普通にしてられるかは見物だな。

　「それよりお前のユニークスキルだよ」

　「ユニークスキル？」

　あ、こいつにステータスの事説明してないや。
　って事で軽く説明。【必中】が気になって仕方ない。

　「凄いですね…。自分のレベルが分かるとは。因みにレト様は？」

　「魔物はレベル制じゃないみたいなんだよな。グレースやテレサは300超えてるぞ」

　「さ、300…。僕の5倍…」

　「とりあえずお前の目標は超越者になる事だな」

　「100でなれるんだね？　頑張りますよ！！
その代わりご褒美に娼館をお願いしたい！！」

　99で壁にぶち当たるけど。まぁ、気長に頑張ってくれたまえ。迷宮に入ればすぐだよ。
　この果てなき欲望があるなら頑張ってくれるんじゃないかな。適当に女を餌にしとけばひたすら働きそうな気がするな。

　「それで【必中】だね？　いやぁ。女の子を喜ばす為に使っていたのが、そんな大層なものだとは」

　実演してくれた【必中】は中々面白かった。
　まずはキンブルがターゲットを指定。
　今回は俺を指定して、そこらに落ちてた金貨を全然違う方向に指で飛ばす

　すると、金貨は意味不明な軌道を描いて、俺の元まで飛んできた。
　何回かやってもらって避けたりもしてみたけど、しっかり追尾してくる。

　当たれば終わりなようで、弾いたりして防ぐ事は出来るけど絶対に当たるってやばいよな。
　こんな良い能力をキンブルは酒の席で女を引っ掛ける為に使ってたらしい。
　ステータスが見えなければ、なんでこうなるかなんて自分でも薄っすらとしか理解出来ないからな。

　「そういえば僕の弓や魔法は外れた事はないね。天才なのかと思ってたよ」

　そう勘違いしても仕方ないよね。
　遠距離攻撃をする奴は垂涎のスキルだろう。
　これはウェインに銃の作成を急がせるべきだ。
　キンブルを立派なスナイパーに仕立てあげてやりたい。

　「そのターゲット指定ってどうやってるの？」

　「えーっと…。目に見えてる範囲だね」

　なんだ。それは残念。顔さえ分かってれば良いとかなら更にやばかったのに。
　遠方にいる相手を暗殺し放題って思ったのに。

　「いや、望遠鏡とかを使えばいけるのか？　人工衛星越しに視認するのはありなのか？」

　気になってきた。早くウェインに人工衛星作ってもらわないと。作り方なんて全く知らないけど。
　最初は雑魚と思ったけど、かなり有用なユニークスキルじゃんね。