異世界に転生したので裏社会から支配する

Jaja

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第4章 雌伏の時

第89話 刀

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 「また負けた」

 「うふふふ。これ良いわぁ。しっくりくるのよ」

 アンジーとの模擬戦。
 俺は未だに勝ちを拾えていない。
 体術はそれなりに自信があったんだけどな。
 レベル差もあるし、やっぱり対人戦での経験値が違う。長く生きてるだけあるよね。

 「どぅえ!?」

 「不快な事を考えてたわね?」

 そんな事を考えてるとアンジーが刀で斬りかかったきた。そう、刀である。
 岩山生活も落ち着いてきて、工房も出来たって事で早速侍の専用装備であろう刀を試作してもらった。勿論俺は作り方なんてほとんど知らない。

 でもテレビでチラッと見た事はあるんだよね。ほぼあやふやな知識だったけど、鍛治組+何故かエリザベスにその情報を伝えた。
 なんか何回も折り返して鍛えたりするんだよと。
 ほんとこれぐらいの知識しかないし、玉鋼の作り方すら知らない。

 それでもうちの生産組は形にしてくれました。
 見た目はもう刀である。工程とか合ってるのか知らないけど、立派な刀。
 ファンタジー鉱石が使われてようが、刀である。

 「でももう少し重さが欲しいわねぇ」

 「その辺は鍛治組と話し合ってくれ」

 俺も武器を使った戦闘スタイルを考えてるんだけどなぁ。
 どの武器にしようか迷ってる。いや、職業をいっぱい取れるんだし、とりあえず適当に触れば良いんだろうけどさ。
 ある程度極めてから次に行きたい訳よ。
 そうなると、必然的に時間が掛かる訳で。
 最初の武器選びも慎重になっちゃうよね。

 「無難に剣で良いじゃないの。あなたは職業を選べるんだから」

 「ロマン武器に憧れて…」

 「最初からイロモノに走ると時間がかかるわよ」

 いや、おっしゃる通りなんですけどね。
 ほら、大鎌とかさ。カッコいいじゃん? ハルバードなんてのも良い。薙刀とかにも憧れるなぁ。
 そんな事を言ってるとアンジーに呆れた目で見られながらため息を吐かれた。

 「まぁ、もう少し考えるよ。体術を更に磨くのも悪くないしね」

 実は侍にも憧れてるんだけど。
 異世界に転生したら刀なんて定番だよね。
 主人公の半分は刀を持ってるんじゃないかと、ある種の偏見を持っています。


 「お疲れさん」

 「いえ。私は精霊に魔力を渡してるだけですので」

 アンジーにぼろんちょんにやられてから、俺はカタリーナの所に向かった。
 カタリーナは朝から晩まで岩山の前で鉱石を抽出している。他の土魔法持ちにもお願い出来ないかと思ったんだが、その場所に触れてない事にはどうにもならないと言われた。
 精霊がどれだけチートか良く分かる。

 「精霊って働きすぎで疲れたりしないの?」

 「まさか。それどころか嫉妬されて困ってるくらいですよ」

 「嫉妬?」

 精霊という存在は魔力が大好きらしい。
 自分の位階を上げるのにも、食料的な意味でも、味的な意味でも。
 その人によって、魔力の味が違うらしく、カタリーナの魔力は混じりっ気がないから精霊に大人気らしい。

 で、最近土の精霊ばっかりに魔力を上げてるから他の精霊が私達にもちょうだいなと嫉妬してるらしい。可愛い生き物じゃないか。見れないのが残念で仕方ない。

 「位階ってのは? 低位精霊とか中位精霊とか?」

 「よくご存知ですね。一番上に精霊王という位階があって、そこから大中小です。私は今まで精霊王をエルフの国で一度見た事があるだけで、大精霊は見た事ありません」

 ふむふむ。異世界のお約束だからね。
 なんか、悉くお約束を守ってくる異世界だよなぁ、ここって。
 だからこそ、絶対日本風の国があると思ってるんだが。

 「魔力を渡したら精霊は成長するって事だよね? カタリーナはもう百年以上やってるのに、大精霊になってるのを見た事ないの?」

 「はい。私は各属性に一体ずつ精霊と契約を交わして、他は必要に応じてその辺にいる精霊に力を貸してもらってますが、中位精霊までしか見た事がありません」

 ほう。契約。俺も出来たりしない?
 あ、無理ですか。そうですか。

 「光と闇はボスに会ってから契約したので、まだ低位精霊です。しかし、ボスの近くにいる光と闇の精霊は中位が多いですね」

 カタリーナに聞いた所によると、俺の周りには光と闇の精霊がまとわりついてるらしい。
 俺から溢れる余剰魔力がご馳走らしい。

 「契約したり、エルフじゃないと精霊魔法は使えない?」

 「恐らく。私は見た事がありません」

 ふむぅ。そんなに俺の魔力が美味しいなら、使ってない時はあげてもいいんだけど。
 魔力を渡す方法はないものか。
 あ、そうだ。

 「どう?」

 「とても喜んでますよ」

 俺は常に身体強化して魔力制御でなるべく魔力を垂れ流さないようにしてるんだけど、それを辞めてみた。なんかこの上なく無駄にしてる感じが、貧乏性の俺を変にドキドキさせる。
 でもいつも力を貸してもらってるっぽいし、偶にはこういうご褒美があってもいいよね。

 「精霊に名前とか付けないの?」

 「? 名前ですか? 精霊は精霊なのですが…」

 いや、ほら。
 異世界で定番じゃん。自分の契約精霊に名前を付けるとか。それが進化の条件だったりするんだよ。

 「いつも力を貸してくれる契約精霊ぐらいには名前を付けてあげなよ。 いつも土の精霊とかそのままでしか呼んでないでしょ? もしかしたら喜んでくれるかもよ?」

 「はぁ…」

 まぁ、そこまで言うならみたいな感じでカタリーナは名前を考え始めた。
 別に上手くいったら儲け物程度に考えてくれたらいいよ。失敗とかないんだしさ。
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