竜公子の花嫁

arisawa

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第一章

2.選ばれた花嫁候補たち

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 世間では、竜公子と呼ばれているけれど、実際のところ、私――レイモンド・フォン・ルーベンス――は一度も目にしたことはなかった。
 
 幼い頃から、その存在は父母から聞かされていたけれど、争いのない今の世は、双竜に頼る必要もないせいか、双竜が棲むという洞窟へと足を向けることもなかったため、会う機会がなかっただけなのだけれど、会ったこともない双竜によって、自分の花嫁が決められることに、なんとも言いがたい思いを感じていた。

 なにせ、祖父母と両親を見ながら育った私は、自分も結婚するなら恋愛結婚で……と思っていたのだ。
 今更、勝手に花嫁を決められても困る。
 とはいえ、残念ながら、今の所、恋愛結婚をしたくても、相手がいないのだけど……
 
 いま、自分の前には、父大公と宰相がいて、テーブルの上には、花嫁候補たちの絵姿が広げられている。
 ちらりと見える絵姿の中には、夜会で見たことがある令嬢もいるようだけど、見たことがあるだけで、その令嬢がどのような人物かまでは判らない。

 宰相イルギス・ブレイクウィル侯爵が、私の視線の先を見て、徐に花嫁候補たちを紹介してくれた。

「こちらの方は、ライラ・エルグランデ子爵令嬢です」
 そう言って差し出されたのは、褐色の髪に、翡翠色の瞳を持つ令嬢の絵姿だった。

「こちらの方は、アナベル・アルフレイム公爵令嬢です」
 そう言われて、差し出された絵姿には、見知った顔が描かれている。
 先代のアルフレイム公は祖父の弟で、アナベルとはまた従兄妹の関係となる。
 見事な黒髪と黒曜石のような瞳を持つ女性だ。

「こちらの方は、リリーナ・クレベリオ侯爵令嬢です」
 豪奢な金髪に、赤い瞳が印象的な女性の姿がそこに描かれていた。

「こちらの方が、マリーベル・オルドリッチ侯爵令嬢です」
 銀青色の髪に、青灰色の瞳は、夜空に輝く星々を思わせた。

「以上が、レイモンド様の花嫁候補ですが、お伝えしたように、最終的な判断は双竜様がお決めになられます」

「ふむ、どの御令嬢もそれぞれ美しい、これは、どの御令嬢が嫁いでこようと、楽しみではないか?」

 他人事だと思って、父は気楽でいいなぁと思わずにはいられない。
 
 さて、大人しく、双竜が花嫁を選ぶのを待つのがよいのだろうが、私としては、どうしようか――

 
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