GOD SLAYER’S

猫乃麗雅

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― 第一章・旅立ち ―

第7話 契約

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自国の関所を通過して、5分後にはサーヌの関所も超えたところで、ラーザが、

紫蓮しれん、ここからはモンスター達が出現しやすくなるから、装備を整えておこう。」

と声を掛けてきた。

それを受けて、

「装備、フルバージョン。」

と、唱えた紫蓮の衣服が、〝シュッ!〟と瞬時に変わった。

これは亜空間と繋がっているのが主な理由である。

[鮮紅せんこうの豹一団]を見てみると、弥太郎は当然の如く武士の鎧兜に身を包んでいた。

ラーザは【戦士】で、バウンは【騎士】のようだ。

更に、イザッドが【魔法使い】であり、ラットは【格闘家】であることが判明した。

他にも、【ビショップ】や【弓使い】に【剣士】といった、人間や獣人が見受けられる。

この集団には、【巫女】と【神官】や、【修道士】もいるのだが、彼女らは別に〝神の下僕〟ではない。

寧ろ、この世の神たちを否定している者たちだ。

また、獣人族に妖精族は元より、魔物にさえも、宗教があるのだという。

どの種族においても熱心な信者は多くないようだが、時に宗教間での争いが勃発している。


一方で、このパーティーメンバーのように、尊重し合っている者たちも珍しくない。

彼らにとって、地上を支配せんとする[神]は共通の敵だからである。

2~3分が経った頃に、スライム12体/ラージマウス8体/ハニービー15体といった、計35体のモンスターに遭遇した。


この世界では、[魔物ノ国]以外の、いろいろな国で生活しているモンスター達もいる。

人族や獣人族に妖精族の肉は、動物などよりも美味なため、それを狙っている魔物がいたり、異性と交わる目的のモンスターも存在しているようだ。

なかには、それらを生きたまま捕獲して、売り渡す連中も少なくない。

魔人やダークエルフなどの知能が高い者たちや、報酬さえ支払えば仕事を請け負ってくれるドワーフのお陰で、[魔物ノ国]も発展しており、通貨が使用できる。

より優れた武器や防具を入手したいモンスター達は、捕らえた人間などを売って稼ぎを得ているのだという。

売却された者たちは、普通に喰われたり、犯された後に食べられてしまったり、或いは、奴隷にされてしまうそうだ。

それ以外には、腕試しで来訪しているモンスター達もいるとのことだった。

ちなみに、[神之国]で暮らしている魔物はあまり見ない。

おそらく、その領内では活動し辛いのだろう。


弥太郎が、

「あまり強い面子じゃない筈だが…、正面から来たってことは、なかなか腕に覚えがありそうだな。」

と呟く。

右隣にいるラーザが、それを聞き取り、

「なぁに、ボクらだったら問題ないさ。」

と、笑みを浮かべた。

バウンの、

「来るよ!」

との言葉に、全員が身構える。

身長1.5M程で、毛並みが灰色の、ラージマウス(鼠)たちが突撃してきた。

それと同時に、身長1Mぐらいの、ハニービー(蜂)たちも、羽音を響かせながら飛んでくる。

戦士・騎士・剣士・格闘家・シーフが鼠どもと激突し、魔法使い・弓使いが蜂たちを打ち落とすべく魔法や矢を放つ。

サーヴァント達も、各自の判断で、地上戦や空中戦を繰り広げていく。

敵味方入り乱れるなか、その隙間からスライムたちが、回復系の後方支援部隊に襲い掛かってきた。

その中に、まだまだ経験の浅い紫蓮もいる。

これは弥太郎の指示によるものだった。

基本的には、横幅80㎝×縦幅30㎝×高さ20㎝くらいで、なだらかな山・・・・・・のようなフォルムをしているスライムたちが、直径40㎝ほどの球体に変化して、〝ポーン ポーン〟と弾んでくる。

それぞれ、水色や、紫色であったり、黄色に、赤色といった、様々な色をしている。

流石に諸国を旅して回っているだけあって、このメンバーは慣れている様子だ。

巫女や神官に修道士が、冷静に、杖で殴り付けたり、鞭で打っていた。

そのような状況下で、1匹のスライムが、紫蓮に体当たりを仕掛ける。

しかし、動きを見切った彼が、右斜め上から、左斜め下へと、刀を振るった。

ズバッ!

と、まともにダメージをくらった水色のスライムが、地面に落ちて、本来の形状に戻る。

「こっちは東の大陸で地獄を見てきたんだ! 舐めんなよ!!」

と見下ろして、とどめを刺そうとする紫蓮に、相手が[契約の書]を差し出してきた。

縦が36㎝で、横は25㎝であろう、薄茶色の紙に、横書きで文字が記されている。

[契約の書]は、どのモンスターであれ、その頭上に現れるようだ。

「これが、“契約の書”…?」

と首を傾げる彼に、

「どれどれぇ~?」

と、近寄ってきた1人の巫女が覗き込み、

「あ! 凄い! この子・・・、星5つの“激レア”だよ!!」

と騒ぎだした。

「珍しいのか?」

と、質問した紫蓮に、

「“進化系”とも書いてあるしね。」
「取り敢えず、契約しちゃいなよ。」
「これら先、君の役に立ってくれそうだから。」

と微笑んだ。

〝どちらの手でもいいから、紙に触れれば契約成立〟との事だったので、右手を添えてみたら、[契約の書]が青白く光って〝フッ〟と消えた。

これに連動して同じように青白く光ったスライムの身体に、縦5㎝の五角形っぽい金色の“紋章”が浮かび上がった。

紫蓮が人生初の[サーヴァント契約]を済ませたころ、[鮮紅の豹一団]が敵の半数を倒したようだ。

残りの魔物たちは恐れをなしたのであろう、散り散りなって逃げ出した―。
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