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― 第一章・旅立ち ―
第6話 国境へ
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「侍王?」
と首を傾げる紫蓮に、弥太郎が、
「知らないか? 南の大陸では割と有名だぞ。」
と、返す。
続いてラーザが、
「まぁ、“国主”であって、神の血筋たる王族ではないんだけどね。」
「多くの人たちが畏敬の念を込めて〝侍王〟って呼んでるのさ。」
と説明した。
更にイザッドが、
「もともとは冒険者だったらしいがの…、数十年ぶり帰郷した地元が神に支配されて様変わりしていたことを悲観して、連中を倒し、国の独立を成功させたのじゃ。」
「今から5年ほど前に。」
と、補足する。
「一人で?!」
と尋ねる紫蓮に、今度はバウンが、
「いや、最初は子息たち、家族と一緒に立ち上がり、次第に国中の人々が仲間に加わったそうだよ。」
と、教えてくれた。
「でも、ま、ここから国4つ分は西に移動しないといけないから長旅になるのと、本人に会える保証は無いんだけどね…。」
「それでも行ってみるかい?」
とのラーザの言葉に、紫蓮が、
「ああ。」
と頷いた。
一行は、翌日の朝に出発した。
よく見ると、兎のラット以外にも、“羊”や“猫”などの[半獣]が確認できる。
また、額に[サーヴァントの紋章]がある“アント(蟻)”や“アラクネ(蜘蛛)”であったり“ラミア(蛇)”に“ワーバット(蝙蝠《こうもり》)”といったモンスター達もいた。
「紫蓮、ボクらはまず、ここより南に在る“サーヌ国”の首都に立ち寄るからね。」
と、ラーザが声を掛け、弥太郎が、
「サーヌの王都にいる商人に依頼された品物を届けたから、サイン(署名)を貰った“受領証”を持って行くんだ。」
「それを確認してもらい、〝不備が無ければ報酬が支払われる〟 という仕組みになっている。」
と、述べた。
「冒険者って、そういう仕事をしているのか?」
と聞いてみたら、ラットが、
「それぞれだよ。」
「例えば、逃げ出して迷子になっているペットを探し出すとか、街の清掃や畑仕事の手伝い、という簡単なクエストを請け負っているパーティーもあれば、傭兵稼業オンリーという団体もいるよ。」
と、語り、
「ねッ、ラーザ。」
と話題を振った。
これに、ラーザが、
「あぁ、そうだな。」
「で、ボクらは、旅するのが好きだから、今回みたいな仕事を選んでいるってわけさ。」
と、答えた。
更に、イザッドによれば、
「〝稼ぎが良ければ、仕事の内容は厭わない〟という連中は、クライアントが神であれ魔族であれ、大金欲しさに依頼を受けておるがのぉ。」
「儂らは、そういうのをあまり好まんので、相手はきちんと選んでおるのじゃ。」
との事だった。
紫蓮が、
「なぁ、“サーヴァント”とは言え、“神之国”でモンスターを連れ歩いても大丈夫なのか?」
「基本的には敵同士なんだから、あいつらに知られたら粛清されてしまうんじゃ?」
と、疑問を呈したところ、バウンが、
「サーヴァントは人間の眷属だからね。入国を認めないと不満に思った人々が、魔族であれどこであれ、各種族の“アンチ神”たちに味方し兼ねないんだ。」
と口を開き、弥太郎が、
「つまり…、〝全ての冒険者が敵に回ったら厄介になる〟という訳だ。」
「ただでさえ、神々に反旗を翻したり、互角に渡り歩く国々が増えてきたからな。」
「足元掬われるのを嫌がっての忖度だろう。」
と、付け加えた。
そんな会話をしながら、草原の土道を進んでいたら、サーヌとの国境付近に在る石造りの関所が見えてきた―。
と首を傾げる紫蓮に、弥太郎が、
「知らないか? 南の大陸では割と有名だぞ。」
と、返す。
続いてラーザが、
「まぁ、“国主”であって、神の血筋たる王族ではないんだけどね。」
「多くの人たちが畏敬の念を込めて〝侍王〟って呼んでるのさ。」
と説明した。
更にイザッドが、
「もともとは冒険者だったらしいがの…、数十年ぶり帰郷した地元が神に支配されて様変わりしていたことを悲観して、連中を倒し、国の独立を成功させたのじゃ。」
「今から5年ほど前に。」
と、補足する。
「一人で?!」
と尋ねる紫蓮に、今度はバウンが、
「いや、最初は子息たち、家族と一緒に立ち上がり、次第に国中の人々が仲間に加わったそうだよ。」
と、教えてくれた。
「でも、ま、ここから国4つ分は西に移動しないといけないから長旅になるのと、本人に会える保証は無いんだけどね…。」
「それでも行ってみるかい?」
とのラーザの言葉に、紫蓮が、
「ああ。」
と頷いた。
一行は、翌日の朝に出発した。
よく見ると、兎のラット以外にも、“羊”や“猫”などの[半獣]が確認できる。
また、額に[サーヴァントの紋章]がある“アント(蟻)”や“アラクネ(蜘蛛)”であったり“ラミア(蛇)”に“ワーバット(蝙蝠《こうもり》)”といったモンスター達もいた。
「紫蓮、ボクらはまず、ここより南に在る“サーヌ国”の首都に立ち寄るからね。」
と、ラーザが声を掛け、弥太郎が、
「サーヌの王都にいる商人に依頼された品物を届けたから、サイン(署名)を貰った“受領証”を持って行くんだ。」
「それを確認してもらい、〝不備が無ければ報酬が支払われる〟 という仕組みになっている。」
と、述べた。
「冒険者って、そういう仕事をしているのか?」
と聞いてみたら、ラットが、
「それぞれだよ。」
「例えば、逃げ出して迷子になっているペットを探し出すとか、街の清掃や畑仕事の手伝い、という簡単なクエストを請け負っているパーティーもあれば、傭兵稼業オンリーという団体もいるよ。」
と、語り、
「ねッ、ラーザ。」
と話題を振った。
これに、ラーザが、
「あぁ、そうだな。」
「で、ボクらは、旅するのが好きだから、今回みたいな仕事を選んでいるってわけさ。」
と、答えた。
更に、イザッドによれば、
「〝稼ぎが良ければ、仕事の内容は厭わない〟という連中は、クライアントが神であれ魔族であれ、大金欲しさに依頼を受けておるがのぉ。」
「儂らは、そういうのをあまり好まんので、相手はきちんと選んでおるのじゃ。」
との事だった。
紫蓮が、
「なぁ、“サーヴァント”とは言え、“神之国”でモンスターを連れ歩いても大丈夫なのか?」
「基本的には敵同士なんだから、あいつらに知られたら粛清されてしまうんじゃ?」
と、疑問を呈したところ、バウンが、
「サーヴァントは人間の眷属だからね。入国を認めないと不満に思った人々が、魔族であれどこであれ、各種族の“アンチ神”たちに味方し兼ねないんだ。」
と口を開き、弥太郎が、
「つまり…、〝全ての冒険者が敵に回ったら厄介になる〟という訳だ。」
「ただでさえ、神々に反旗を翻したり、互角に渡り歩く国々が増えてきたからな。」
「足元掬われるのを嫌がっての忖度だろう。」
と、付け加えた。
そんな会話をしながら、草原の土道を進んでいたら、サーヌとの国境付近に在る石造りの関所が見えてきた―。
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