勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【28話】 帰郷

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コトロがリリアの冒険者デビューのパーティーメンバーを準備する間日程が空くので、リリアはウッソ村に戻って来た。凱旋帰郷とでもいうのだろうか。
昨日、ルーダ・コートの街からレンタホースにお土産を積んで戻ったのだ。
ファーザー・ゼフに牛肉鍋の材料と筆記用具セット、アランには皮のグローブ、村にはトマトとポテトの苗。
コトロがバーの仕入れ先から、とっても良い肉を仕入れてくれた、リリアも鼻が高い。
また、ギルドの資金を少し都合もしてくれた、リリアの傭兵給料と勲章は来月にならないとリリアの手元に届かない。
国公認勇者のリリアは申請すればルーダ・コートからウッソ村まで国の馬車を借りられたのだが、馬車手付きだと、村に滞在する間、気を使ってしょうがないと思い、今回はレンタホースしてみたのだ。馬は一日89Gから、ロバは59Gから借りられる。乗馬経験はあまりないリリアだったが、練習がてら良い経験にもなる。乗り慣れないのでお尻がゴワゴワになる思いだ。
昨日はリリアが国の認定勇者になったお祝いを村人にしてもらい、夜はゼフ、シュエルノ、アイラ、ジェシカの三人の修道女とアランを招いて、肉鍋パーティーを教会でやった。
リリアはしばらくルーダ・コートの住民となるので、シェリフ・リーダーを退き、アランがリーダーを引き受けることになった。とっても適任だ。
ゼフも「一番手がかかる一番弟子が教会を卒業する」寂しそうにしながらもリリアの成長を一番喜んでいるようだった。


今朝は教会の皆でテーブルを囲んで、リリアが肉鍋の残りで作った雑炊を食べた。鶏鍋をした次の朝、メルが作ってくれた鶏雑炊が思い出される。今はリリアが皆に作る立場。
リリアは朝食の後かたづけを終えると修道女の中で一番年上、リリアと約10歳違いのシュエルノを呼んだ。
「おいで、シュエル… こっちよ、久々リリアのお膝よ」
シュエルノは嬉しそうにリリアの膝に来る。たかだか1ヶ月程度の留守だったけど、なんだか重くなったように感じる。
「シュエル、リリアは街に住むことになったからね」
「うん…」
「でも、たまにお肉とお土産買って戻るからね」
「うん… シュエルはお人形がいい」
「わかった、任せなさい、今度ね」リリアはシュエルを抱えながら本題に入る。
「シュエル、リリアは今日、自分の部屋を片付けるから、そしたら、シュエルがリリアの部屋を使いなさい。今日からあなたがエルダー・シスター」
「ほんとう!シュエルノがリリアの部屋を使えるの?」喜ぶシュエルノ、今日から教会で一番のお姉さんだ。
「そよ、アイラとジェシカの面倒をちゃんとみるのよ、それにゼフ様もね」
「シュエルはシェリフの子よ、がんばるよ」良い意気込みだ。
「… 別に強くなくても、頑張んなくてもいいのよ、傍にいてあげてね」そう言うとリリアは腕の中で喜んでいるシュエルノに続けた。
「リリアはお墓参りしているから、用事があるなら裏にいるってゼフ様に伝えてね」
そう言ってリリアはシュエルノを膝から下ろすとテーブルから立ち上がった。


教会の裏にある墓地。ガウとメルも仲良く眠っている。
うっとおし天気だったが、リリアが会いにくると空が少しずつ晴だした。リリアの帰郷を喜んでくれている。
“父さん、母さん、ただいま戻りました。お土産よ、皆これが美味しいって。リリアにはわからないけど”葡萄酒一本を供える。
“リリアは勇者として国に迎えられたのよ… 幸せなことよね…たぶん。父さんを誇りに思うわ”リリアが勇者になった記事を供える。ちゃんと良い内容の記事だけ集めてある。
“母さんリリアの弓で戦争に勝ったのよ、両軍で二千人の兵士の命が救われたって。これは誇れるわね。戦争の英雄なんだって”その記事を供える。
“それでリリアは金星と雷の勲章を貰えるらしいの。本当かしらね… 本当に貰ったら見せにくるわ。リリア17歳にして父さん、母さんを超えるわね。まぁリリアなら当然ね”
リリアが目を開けてお墓をみると、日が差し始め、刻まれた文字に影が出来始めていた。
「…父さん、母さんまたね、リリアを誇ってね」リリアが立ち上がるとちょうど、アランがやって来た。

「リリア、馬にエサやらないと腹を空かせて柵をかじりまくってるぞ」
「そっか、今エサあげて、川にでもつれてくわ」うっかりしていた、リリアは苦笑い。
「馬糞の掃除もな」アランが言う。
「はい、シェリフ・リーダー」答えると二人仲良く歩き出した。
ウッソ村ももう秋が来始める
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