勇者の血を継ぐ者

エコマスク

文字の大きさ
125 / 519

【63.5話】 ミミックと斧戦士 ※過去の話し※

しおりを挟む
リリアはエルフの男性と村から村へ移動中。男性の通称はブアマと言うらしい。
今日の移動距離は大したことないので、リリアは村の宿屋で出会ったこの男とのんびり移動。同じ弓士だがブアマはアンデッド系に追加ダメージがある。

「村まであと少しね。たぶんあの森抜けた辺りじゃないかしら?」
おしゃべりしながら歩いていると
「………声が聞こえない?」リリアがふと足を止める。
「…確かに。助けを呼んでいるようだ」
二人は声のする方へと歩いていく。結構見通しが良いのにそれらしき人はいない。
「おーーーい 誰かぁぁぁーー 助けてくれーーーー」
はっきりと聞こえてきた。見ると道のちょっと土手下になった場所で叫んでいる男がいる。
リリアとブアマが急いで土手を下ると斧使いの戦士がミミックに食われかけている。
「待ってて、今助けるわ!」リリアは短剣を抜いて走り込む。
結構大きい、椅子程度の大きさはあるミミックだ。良くこんなに育ったものだ。いったい何人飲み込まれたことか。
「でぇい!」“ガッキン!!”剣で突き込んだが硬い箱に阻まれた。
「いったぁい…」剣は弾かれ、走り込んだ勢いで顔面をぶつけてひっくり返った。
「ボディは頑丈にできています」ブアマが叫ぶ。
考えてみれば、リリアもミミックと対峙するのは初めてだ。
食われかけている戦士は肩まで飲み込まれ、ガジガジと噛まれているので大量に出血している。
「剣で口の中、蓋の中を貫くか、テコの要領で口を開けさせよう」
リリアとブアマでとりあえず男をミミックから救出する。

リリアとブアマで斧戦士を介抱。ポーションを飲ましてあげる。ミミックは少し離れた場所で、なんか… くたん、と歪んで鎮座している。止めを刺さないといけないが、だいぶ弱っているようだ。とりあえず、かじられていた男を介抱。出血が酷かったが、回復してきている。
元気になってきた斧戦士に話を聞くと、道端に宝箱が落ちているから興味を持って開けようとしたら、見事にかぶりつかれたらしい。
「どう考えても、道端に宝箱って変でしょ」とリリアは言うが、確かにミミックを見ると、ピッカピカのボディが本物の鉄で出来ている質感がある。精神に作用する魔法を使う事もあるらしい。侮れない。

「こっちはもう大丈夫そうね」
戦士の回復を見ると問題なさそうだ。ミミックを片付けないと次の犠牲者がでかねない。リリアとブアマでミミックを倒す。
“バカン!”倒すと同時に箱がくだけてアイテムがドロップされた。
「わぉ!金塊よ!!500Gはありそう!」
「こっちは大きな魔法石。どれだけ飲み込んできたんだ!」
リリアもブアマの声をあげる。
「ねぇ!戦士さん、あなたの怪我も無駄じゃなかったわね!」とリリアが振り返った時だった…
「ァガ!!」
ブアマが短く叫んで前のめりに倒れた。背中がバックリと裂け血が噴き出る。見ると斧戦士の手に斧…
「やっ!ちょっ!何してんの?気は確かなの!」リリアが言うより先に斧が振り下ろされた。
「ぅぅ… グぅ…」
リリアも左肩から胸にかけて袈裟に切り下げられてしまった。一瞬早く避けたがかなりの深手、血が流れ落ちる。
「な、なにするの… あんた、こんな… わかってるの…」
リリアが右手に剣を持つ。ブアマはうつ伏して微動だにしない。血の池ができ始めている。
「うるせぇ!これは俺が先に見つけたんだ!俺のもんなんだよ!」
剣で防ぐのが精いっぱいのリリアだが、剣を叩き落とされ、腰から右太ももをバックリ切られた。がっくりと膝をつく。この出血はかなり危ない。
「あんた… 助けて… これが…」
リリアが見上げると男は狂気の形相で立っている。ブアマが本当に危険だ、早く助けないと。
「お金なんて… 持ってきなさいよ… その代わり、あたしと… エルフは生かして…」
男はジッとリリアを見つめたが、傷が深いと思ったのか「追ってきたら殺す」と言い残し、金と魔法石を持ち去って行った。
その後ろ姿を力なく見送ったリリア。
「ブアマ… 今… たす… と、父さん、母さん… リリア…」
リリアは呟くと倒れた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

4人の勇者とЯΔMЦDΛ

無鳴-ヴィオ-
ファンタジー
5人の少年少女が勇者に選ばれ世界を救う話。 それぞれが主人公的存在。始まりの時代。そして、彼女達の物語。 炎の勇者、焔-ほむら- 女 13歳 水の勇者、萃-すい- 女 14歳 雷の勇者、空-そら- 女 13歳 土の勇者、楓-ふう- 女 13歳 木の勇者、来-らい- 男 12歳

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

処理中です...