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【64話】 パントマイムなリリア
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ホイルテッド村で一泊したリリアとオフェリア。
冒険者酒場のような店がなく、宿屋の食堂で食事をした。
ジョブボード、リクエストボードに大した仕事が載ってなく、移動しようかと話していたら、宿屋の主人に仕事を探しているなら村長を訪ねてみろと教わった。
翌朝、村長を訪ねてみる。白髭のいかにも村長さんタイプの老人だ。
話しの内容は、森の奥に木の伐採と加工場があり、数戸の建物があるという。
最近、木材の需要が上がり、伐採を再開しようとしたが、魔物が多い上にどうやら建物にゴブリンが住みついているらしいというのだ。
小さな村でシェリフの質も数も足りず、伐採場の距離も村の守備範囲とは言い難く、村から正式に大人数は出せないので、誰かに退治してもらいたとのこと。
“ジョブボードを通さず、村長直々の頼み。村全体の困りごと。不確定な謝礼。非公式で少人数… この展開は… 勇者っぽい仕事の流れ…”
オフェリアがリリアを見ると、リリアは案の定、目を輝かせ、身を乗り出して聞いている。
「わかった、村長、あたし引き受けるは。オフェリア、いいでしょ!ゴブリンは退治しなくても、伐採に使う建物を奪い返したら良いのよね?」
リリアは機を得たりと生き生きしている。
「ちょっと、休憩入れましょう」オフェリアが重い荷物を下ろしながら言う。
「そ、そうね。思ったより激しいのね」リリアも疲れたようだ。荷物を下ろす。
伐採場までまだありそうだ。想像していたより遠い。
魔物もここまで想像した以上に多く、強い相手が多かった。ランド・シーホースを数体、イノガシラを数体倒し、シーホースの鱗とイノガシラの牙を入手。鎧に使われたり、骨董品になったり高く売れるアイテムをゲット。
しかし、ケガも多い。思ったより危険だが、二人で進めば何とかなりそうではある。オフェリアが気になるのは、リリアが普段より消耗をいとわずガンガンモードな事だ。妙に気合が入っていて、いつもより怪我が多く、薬もかなり消費しながら進んでいる。怪我しては「大丈夫、大丈夫」と言いながらポーションを飲んで進んで行く。
それに…
「リリア、この大量の食材は何なの?何日野宿するつもりよ。重くてしかたない」オフェリアが聞く。
「野宿なんかしないよ。これ全部ゴブリンにあげるのよ。贈り物。戦わず退去してもらうのよ」リリア。
「… ねぇ、言いたい事はわかるけど、そんなの出来るの?ゴブリンと話せるの?」当然の心配。
「まぁ、何とかなるわよ。今日は様子見てこれ置いて帰るわ。次は通訳でも連れてくるわよ」リリアは事もなげに答えるが、はたしてそんな風になるのだろうか?
伐採場の建物付近まで到着。
様子を見ると確かに結構な人数のゴブリンが住みついている。
なんか家族で… 村になっているといった感じ。
「オフェリア、食料はこっちのカバンへ。その他はそっちに分けて、そうそう… とりあえず、あたし行くから。オフェリアここで待ってて… 何とかなるわよ。やばかったら逃げてくるから、そしたら全力ランアウェーよ」
そう言うと、食料を背負って一人で村に歩いていく。大丈夫なのだろうか?いつでも飛び出せるように準備しながら離れてオフェリアは待つ。
オフェリアが見守る中、リリアは村に近寄って行く。ゴブリンの方もリリアに気がついたらしい。しげしげとリリアを眺めている。
リリアは荷物を下ろし、食料を出して並べ、万歳みたいなことしている。恐らく敵意が無いことをしるしているようだ。
ゴブリン達が一人、二人、四人、八人と増えていき、武器を手に集まって来た者もいる。徐々にリリアに近寄って来るのをリリアは手招きしてみたり、万歳してみたり、食事の真似したり、パントマイム大会している。
リリアとゴブリン達の距離が縮まり武器を手に警戒はしているが、ゴブリン達もリリアに敵意がないことは理解できたようだ。リリアは囲まれながら、何やら一生懸命話しながらパントマイムしている。どうなっているんだろうか?オフェリアも武器をしまい行ってみる。
出て来たオフェリアにゴブリン達も一瞬警戒を強めたが、リリア達に敵意がないとわかってか、二人を興味深々に囲む。
リリアは「わたしゎ、へいわぁのぉ、ししゃぁですぅ」とまるで異文化の人種に道を教えている人みたいな、変な発音でしゃべっている。これ意味あるのか?
「おにくぅ、ありまあぁすぅ。みなぁ、もっていってぇ、くださあぁいぃ」
変なイントネーションとパントマイム中のリリア。その話し方、意味ないんじゃないのか?
どうやら、食料が貰えることは伝わったらしい。肉、野菜が運ばれる。
ゴブリンの方も、偉そうなのが来て、何か言っているがもちろんリリア達には理解できない。
相手だって、いきなり見知らぬ人間の女からただで物が貰えるとは思っていない。
何か用か?何か要求があるのか?的なことを言っているようだが…
ゴブリンとリリアとでパントマム大会をしている。
「よし、とりあえず、今日は目的達成ね。やっぱり愛に言葉は要らないのよね」帰り道、リリアは満足そう。
「… ねぇ、本当に大丈夫なの?」オフェリアは心配。
「大丈夫よ、次はちゃんと交渉するから。あたし、小さい時ゴブリンと山であったけど、戦わなかったし、冒険者になってからも交渉でお互いに平和的解決しているのを見たことあるのよ。誰も死なずに済んだらそれに越した事ないじゃない」リリアは自信ありげだ。
「…」オフェリアは何とも言えない。
「鹿でも獲って帰りたわねぇ」リリアは足取り軽く森を抜けていく。
冒険者酒場のような店がなく、宿屋の食堂で食事をした。
ジョブボード、リクエストボードに大した仕事が載ってなく、移動しようかと話していたら、宿屋の主人に仕事を探しているなら村長を訪ねてみろと教わった。
翌朝、村長を訪ねてみる。白髭のいかにも村長さんタイプの老人だ。
話しの内容は、森の奥に木の伐採と加工場があり、数戸の建物があるという。
最近、木材の需要が上がり、伐採を再開しようとしたが、魔物が多い上にどうやら建物にゴブリンが住みついているらしいというのだ。
小さな村でシェリフの質も数も足りず、伐採場の距離も村の守備範囲とは言い難く、村から正式に大人数は出せないので、誰かに退治してもらいたとのこと。
“ジョブボードを通さず、村長直々の頼み。村全体の困りごと。不確定な謝礼。非公式で少人数… この展開は… 勇者っぽい仕事の流れ…”
オフェリアがリリアを見ると、リリアは案の定、目を輝かせ、身を乗り出して聞いている。
「わかった、村長、あたし引き受けるは。オフェリア、いいでしょ!ゴブリンは退治しなくても、伐採に使う建物を奪い返したら良いのよね?」
リリアは機を得たりと生き生きしている。
「ちょっと、休憩入れましょう」オフェリアが重い荷物を下ろしながら言う。
「そ、そうね。思ったより激しいのね」リリアも疲れたようだ。荷物を下ろす。
伐採場までまだありそうだ。想像していたより遠い。
魔物もここまで想像した以上に多く、強い相手が多かった。ランド・シーホースを数体、イノガシラを数体倒し、シーホースの鱗とイノガシラの牙を入手。鎧に使われたり、骨董品になったり高く売れるアイテムをゲット。
しかし、ケガも多い。思ったより危険だが、二人で進めば何とかなりそうではある。オフェリアが気になるのは、リリアが普段より消耗をいとわずガンガンモードな事だ。妙に気合が入っていて、いつもより怪我が多く、薬もかなり消費しながら進んでいる。怪我しては「大丈夫、大丈夫」と言いながらポーションを飲んで進んで行く。
それに…
「リリア、この大量の食材は何なの?何日野宿するつもりよ。重くてしかたない」オフェリアが聞く。
「野宿なんかしないよ。これ全部ゴブリンにあげるのよ。贈り物。戦わず退去してもらうのよ」リリア。
「… ねぇ、言いたい事はわかるけど、そんなの出来るの?ゴブリンと話せるの?」当然の心配。
「まぁ、何とかなるわよ。今日は様子見てこれ置いて帰るわ。次は通訳でも連れてくるわよ」リリアは事もなげに答えるが、はたしてそんな風になるのだろうか?
伐採場の建物付近まで到着。
様子を見ると確かに結構な人数のゴブリンが住みついている。
なんか家族で… 村になっているといった感じ。
「オフェリア、食料はこっちのカバンへ。その他はそっちに分けて、そうそう… とりあえず、あたし行くから。オフェリアここで待ってて… 何とかなるわよ。やばかったら逃げてくるから、そしたら全力ランアウェーよ」
そう言うと、食料を背負って一人で村に歩いていく。大丈夫なのだろうか?いつでも飛び出せるように準備しながら離れてオフェリアは待つ。
オフェリアが見守る中、リリアは村に近寄って行く。ゴブリンの方もリリアに気がついたらしい。しげしげとリリアを眺めている。
リリアは荷物を下ろし、食料を出して並べ、万歳みたいなことしている。恐らく敵意が無いことをしるしているようだ。
ゴブリン達が一人、二人、四人、八人と増えていき、武器を手に集まって来た者もいる。徐々にリリアに近寄って来るのをリリアは手招きしてみたり、万歳してみたり、食事の真似したり、パントマイム大会している。
リリアとゴブリン達の距離が縮まり武器を手に警戒はしているが、ゴブリン達もリリアに敵意がないことは理解できたようだ。リリアは囲まれながら、何やら一生懸命話しながらパントマイムしている。どうなっているんだろうか?オフェリアも武器をしまい行ってみる。
出て来たオフェリアにゴブリン達も一瞬警戒を強めたが、リリア達に敵意がないとわかってか、二人を興味深々に囲む。
リリアは「わたしゎ、へいわぁのぉ、ししゃぁですぅ」とまるで異文化の人種に道を教えている人みたいな、変な発音でしゃべっている。これ意味あるのか?
「おにくぅ、ありまあぁすぅ。みなぁ、もっていってぇ、くださあぁいぃ」
変なイントネーションとパントマイム中のリリア。その話し方、意味ないんじゃないのか?
どうやら、食料が貰えることは伝わったらしい。肉、野菜が運ばれる。
ゴブリンの方も、偉そうなのが来て、何か言っているがもちろんリリア達には理解できない。
相手だって、いきなり見知らぬ人間の女からただで物が貰えるとは思っていない。
何か用か?何か要求があるのか?的なことを言っているようだが…
ゴブリンとリリアとでパントマム大会をしている。
「よし、とりあえず、今日は目的達成ね。やっぱり愛に言葉は要らないのよね」帰り道、リリアは満足そう。
「… ねぇ、本当に大丈夫なの?」オフェリアは心配。
「大丈夫よ、次はちゃんと交渉するから。あたし、小さい時ゴブリンと山であったけど、戦わなかったし、冒険者になってからも交渉でお互いに平和的解決しているのを見たことあるのよ。誰も死なずに済んだらそれに越した事ないじゃない」リリアは自信ありげだ。
「…」オフェリアは何とも言えない。
「鹿でも獲って帰りたわねぇ」リリアは足取り軽く森を抜けていく。
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