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【79.5話】 リリアとカベロ ※78.5話の続き※
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「よし… ここで待機よ。必要最低限おしゃべりはダメよ。話すときは静かにね」
早朝、カベロを伴ってリリアは山に入り、川辺の木々に身を潜めた。
今日は鹿でも猪でも何かは仕留める気でいく決心のリリア。カベロの腕前では奇跡が起こる可能性は低すぎる。村の誰かからもっと勉強するか、将来的には猟犬を飼い慣らすのも手かも知れない。
「残念だけど、カベロにはまだ狩りは難しいわ。今日はあたしが教えながら獲るからよく見ていてね」
リップサービスしてあげても本人のためになることは一つもない。はっきりと伝える。
「日中はわりと安全な山中にいて、朝夕は餌場や水辺に来ることが多い。場合によっては人里近くにも出てくるのよ。カベロ、朝起きたらお腹空いてご飯食べるでしょ?ご飯食べたら水飲みたくなるでしょ?お腹いっぱいになったら部屋に引っ込んで寝るでしょ?… まぁ、二度寝はしないか、うっふっふっふ」
リリアが解説する。
「今日は昨日歩き回った場所は避けて、違う場所の川辺に待機するからね。池のような静かな場所より川のせせらぎがある方が察知され難いからね」
そう言ってカベロと山に入って来た。
現在、リリアとカベロは川辺の木々に身を潜めている。
カベロは父親と狩りに入っていただけあってきちんと静かにしている。
“自分が小さい時、周りからはこんな感じに見えていたのかな?”リリアはカベロを見ながら思う。
「お… 来た来た… けど、グリズリー… 熊さんの親子ですねぇ」リリアがカベロに呟く。
「獲らないの?」カベロが聞く。
大きな親熊と子熊がお揃いで、清流に喉を潤しに来ている。仕留められそうだが…
「子熊は獲らないのよ。親熊の方は食べ応えありそうねぇ。だけど、大きすぎて仕留めてさばいてもお姉ちゃんじゃ運べないかな…」
親熊はメッチャデカい。仕留めてから、放置するわけにも、カベロを残してリリアが村人を呼ぶのも、カベロに呼びに行かすのも良い策ではない。熊は諦めよう。
「熊肉も美味しいけどねぇ… でも、何となく自信持てた。鹿も来そうよ」
しばらく、川の流れを見ながら過ごす。
ちょっとした魔物がウロウロしているが、下手に倒すより、気がつかれないようにやり過ごす。
「あまり日が高くなると、見込み無くなるわね」リリアが言いかけた時カベロが口を開いた。
「リリア姉ちゃん… あれ…」
見ると熊が居た場所と反対側の川下に牡鹿が水を飲みに現れた。
リリアが指を口に当て“お静かに”をして、木の陰からゆっくり立ち上がる。カベロも見逃すまいと身を乗り出す。
シカも警戒しているが、水を飲む瞬間に仕留めたい。クイックエイム、クイックショット。
シカも長々ダラダラ飲んではくれない。手際よくいく。
“水辺を警戒しながら水を飲む… 頭を下げる… 今!”
「ドっ」と首の付け根に矢が刺さり、一瞬逃げる素振りを見せたまま倒れた。
“急所を外して、カベロに止めを刺させようか?”
一瞬頭に過ったが… まぁ、仕事を果たさないとね…
「おぉ!父ちゃんみたいだ、すげぇ」カベロは感動。
この日、朝と夕の各往復でシカを仕留めたリリアとカベロ。
「お嬢ちゃん、良い腕してるじゃねぇか。いきなり知らない土地で2頭か、やるねぇ」村の肉屋。
「今日は幸運だったのよ。助手君にも助けられたわ」リリアは満足そうにしている。
シカ肉の買い取り金を全部カベロに手渡す。
「これ全部くれるの?」カベロは目を丸くしている。相場だが、実際自分で受け取るのは初めてなのだろう。
「リリアちゃんからのお礼よ。今日は手伝って貰ったからカベロの稼ぎ」リリアは微笑む。
「見上げたねぇ、粋だねぇ」肉屋が感心する。
「あたし、国の公認勇者リリアよ、国民を助けるがお仕事」
ちゃっかり宣伝するリリア。
リリアが宿に戻り、夕ご飯に出ようとしているとドアがノックされた。出て見るとカベロと母親が立っていてお礼を述べる。
「うふ、いいのよ。カベロの最初の稼ぎよ。カベロにはさばくのと運ぶのを手伝ってもらったし、がんばって一人前になって欲しいわ。……しばらくこの村で一緒に居て欲しい?… うーん、リリ姉は移動して仕事しているからねぇ… また来るわよ… あっ、いやぁ、泣かないで、また来るまた来る。今度はあたしがカベロの助手やるよ…」
カベロの気持ちはわかるけど、仕事があるから仕方ない。明日のおかずにしてくれと母親から漬物をいただいた。何度もお礼を言う母親にリリアは答える。
「あたし、国の公認勇者リリアなの、国民のお手伝いはお仕事なのよ」
去る母子にニコニコ手を振るリリア。
早朝、カベロを伴ってリリアは山に入り、川辺の木々に身を潜めた。
今日は鹿でも猪でも何かは仕留める気でいく決心のリリア。カベロの腕前では奇跡が起こる可能性は低すぎる。村の誰かからもっと勉強するか、将来的には猟犬を飼い慣らすのも手かも知れない。
「残念だけど、カベロにはまだ狩りは難しいわ。今日はあたしが教えながら獲るからよく見ていてね」
リップサービスしてあげても本人のためになることは一つもない。はっきりと伝える。
「日中はわりと安全な山中にいて、朝夕は餌場や水辺に来ることが多い。場合によっては人里近くにも出てくるのよ。カベロ、朝起きたらお腹空いてご飯食べるでしょ?ご飯食べたら水飲みたくなるでしょ?お腹いっぱいになったら部屋に引っ込んで寝るでしょ?… まぁ、二度寝はしないか、うっふっふっふ」
リリアが解説する。
「今日は昨日歩き回った場所は避けて、違う場所の川辺に待機するからね。池のような静かな場所より川のせせらぎがある方が察知され難いからね」
そう言ってカベロと山に入って来た。
現在、リリアとカベロは川辺の木々に身を潜めている。
カベロは父親と狩りに入っていただけあってきちんと静かにしている。
“自分が小さい時、周りからはこんな感じに見えていたのかな?”リリアはカベロを見ながら思う。
「お… 来た来た… けど、グリズリー… 熊さんの親子ですねぇ」リリアがカベロに呟く。
「獲らないの?」カベロが聞く。
大きな親熊と子熊がお揃いで、清流に喉を潤しに来ている。仕留められそうだが…
「子熊は獲らないのよ。親熊の方は食べ応えありそうねぇ。だけど、大きすぎて仕留めてさばいてもお姉ちゃんじゃ運べないかな…」
親熊はメッチャデカい。仕留めてから、放置するわけにも、カベロを残してリリアが村人を呼ぶのも、カベロに呼びに行かすのも良い策ではない。熊は諦めよう。
「熊肉も美味しいけどねぇ… でも、何となく自信持てた。鹿も来そうよ」
しばらく、川の流れを見ながら過ごす。
ちょっとした魔物がウロウロしているが、下手に倒すより、気がつかれないようにやり過ごす。
「あまり日が高くなると、見込み無くなるわね」リリアが言いかけた時カベロが口を開いた。
「リリア姉ちゃん… あれ…」
見ると熊が居た場所と反対側の川下に牡鹿が水を飲みに現れた。
リリアが指を口に当て“お静かに”をして、木の陰からゆっくり立ち上がる。カベロも見逃すまいと身を乗り出す。
シカも警戒しているが、水を飲む瞬間に仕留めたい。クイックエイム、クイックショット。
シカも長々ダラダラ飲んではくれない。手際よくいく。
“水辺を警戒しながら水を飲む… 頭を下げる… 今!”
「ドっ」と首の付け根に矢が刺さり、一瞬逃げる素振りを見せたまま倒れた。
“急所を外して、カベロに止めを刺させようか?”
一瞬頭に過ったが… まぁ、仕事を果たさないとね…
「おぉ!父ちゃんみたいだ、すげぇ」カベロは感動。
この日、朝と夕の各往復でシカを仕留めたリリアとカベロ。
「お嬢ちゃん、良い腕してるじゃねぇか。いきなり知らない土地で2頭か、やるねぇ」村の肉屋。
「今日は幸運だったのよ。助手君にも助けられたわ」リリアは満足そうにしている。
シカ肉の買い取り金を全部カベロに手渡す。
「これ全部くれるの?」カベロは目を丸くしている。相場だが、実際自分で受け取るのは初めてなのだろう。
「リリアちゃんからのお礼よ。今日は手伝って貰ったからカベロの稼ぎ」リリアは微笑む。
「見上げたねぇ、粋だねぇ」肉屋が感心する。
「あたし、国の公認勇者リリアよ、国民を助けるがお仕事」
ちゃっかり宣伝するリリア。
リリアが宿に戻り、夕ご飯に出ようとしているとドアがノックされた。出て見るとカベロと母親が立っていてお礼を述べる。
「うふ、いいのよ。カベロの最初の稼ぎよ。カベロにはさばくのと運ぶのを手伝ってもらったし、がんばって一人前になって欲しいわ。……しばらくこの村で一緒に居て欲しい?… うーん、リリ姉は移動して仕事しているからねぇ… また来るわよ… あっ、いやぁ、泣かないで、また来るまた来る。今度はあたしがカベロの助手やるよ…」
カベロの気持ちはわかるけど、仕事があるから仕方ない。明日のおかずにしてくれと母親から漬物をいただいた。何度もお礼を言う母親にリリアは答える。
「あたし、国の公認勇者リリアなの、国民のお手伝いはお仕事なのよ」
去る母子にニコニコ手を振るリリア。
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