勇者の血を継ぐ者

エコマスク

文字の大きさ
340 / 519

【171話】 三日目のエリフテン

しおりを挟む
リリア達はエリフテン塔の最上階でBBQパーティー中。
空には星が広がり樹海と草原が黒く広がる。昼間なら僅かだか海も見えるのだ。ランカシムに近い場所。
エリフテンでの二日目を終えようとしている。

塔の砦壁を奪還した後はわりかし簡単な掃討だった。
リリアとロメリオが狙撃しながら前衛の筋肉部隊が活躍、塔内も魔物の数は比較的少なく一階が少々大変だった程度で二階の魔物の数は激減、三階からはほぼいなくなってそれ以上の階はひっそりとしたものだった。
「おぉ!凄いな!眺めが良い!」
最上階まで上がって皆感動する。
「最高だね!今日は計画通り、攻撃班とイベント班で最上階BBQだね」リリア。

これで明日以降の三日目から荷物の搬入等と準備が開始されるだろう。
ドラゴンもやってくる。
問題も残っている。周囲を出来る限り掃討しておかなければならなかったがその時間は無かった。まぁ、野外の魔物の治安までは完全に保証できない。これは適当に報告しておけば良いだろう。
問題は五階~七階は魔物を用意しなければならない。これは少々厄介だ。

「明日がんばろうよ!今日は皆でお疲れ様よ!」
「攻撃班の人お疲れ様!イベント班は明日からがんば!」
食べて飲んでぐっすり休んで二日目が終わった。


三日目

朝から最寄りの村を出発してきた荷馬車とスタッフが到着してくる。
リリア達は朝から塔までの道を警備、ちょこちょこ魔物被害が報告されるので応援に回り馬車護衛達と協力して撃退している。
「俺達解散しないほうが良いっすね」ブラックが呟く。
「はい、お姫様の世話に塔に入らなければ良いので申請して警備に残ってもらいますよ。あれだけ人が来ているのなら何人か増えた所で問題無いはずです」コトロ。
「それにしてもバイト料が良いからってあたし達でこの道筋を全部カバーって無茶があるよね」リリアが言う。

お昼休みをして、リリア達は作戦準備。見るとコドモドラゴンが来ていて、荷物を塔の上まで運んでいる。何でも上の階へ運ぶ重い荷物はコドモドラゴンに運ばせるのだそうだ。
「コドモドラゴンよ!あたしドラゴン好きなの!勇者と言えばドラゴンよ!」リリアは興奮している。
「スタッフの人数、飾り、結構お金かけてますよ。何で安全確保にけちるですかねぇ」コトロが呟く。確かに、式にはお金がかかっているようだ…まぁ、そういう物だから文句も言えない…
「今日、演出のドラドン到着でしょ?早く見たいなぁ!」リリアは何だかウキウキしているようだ。
「あんなのトカゲの大きくなったのニャン」ネーコが言う。


で、リリア達は作戦開始。とっても大事な作戦。
ブラック達は到着した馬車護衛を束ねて道の警備、リリア、コトロ、ネーコ、ラビは魔物を捕まえる仕事がある。魔物を適当に塔に配置しなければならない。

これがなかなか上手い事いかない。怪我も多い。
「痛ぁい… 結局倒しちゃったじゃない! 捕獲って大変ねぇ…倒す方がよっぽど楽だよねぇ」
「生け捕りにして連れて帰るだなんてやったこと無いですからね… 危ないですね…」コトロ。
「ネーコ、疲れたニャン」
「危険ピョン…」

馬車に檻と網等を積んで出てきたが、これが思った以上に大苦戦。
どんな感じかと言うと…


「グリーンローパーよ、比較的大人しい、皆行くわよ!」
でグリーンローパーを四人で囲み
「で、どうするニャン?」
「網には入らないピョン」
「… 誘導よ、誘導して馬車に積むわよ!」
「… それは無理があると思いますけど…」
「とにかく心を合わせて… 痛い!いたたた!」

「リリたん!大ネズミぴょん! あれなら何とかなるピョン」
「所詮ネズミだからねぇ… 相応しくない気が…」

「ゾンビにゃん!誘導できそうニャン」
「人が死んでるのは… どうだろう…」

「トードぴょん!」
「私絶対嫌ですから…」コトロ。

「オバケマッシュ」
「あんなの持ち込んだら集団幻覚にかかるよ」

「ビッグジョーズ!ソウルイーター」
「王子様一人で勝てるかなぁ…」

とにかく思ったより難しい上に、そもそも生け捕り自体が大作業だ。怪我が多くなり全然成果が上がらない。もう夕方…
「何よこれ… ぶっ倒す方がよっぽど楽じゃん… あたし今までで一番血を流した気がするよ」リリアは息が上がって装備が血で汚れている。
「致命傷にならないから無理しがちで危険です、とりあえず戻りましょう… 別にいなくたって式の進行上問題無いと思いますよ…」

結局何か少しでも持って帰ろうと捕獲できたのは大ネズミ三匹、グリーンスライム三匹、ファイアーフラワー二匹。


塔に戻ってイベント係りのリーダーに報告。
「えぇっと… 頑張ったんですけど… どうでしょうか? あの… 危険過ぎず、良い線ついていると思うけど…」リリアは馬車の荷台を見せる。檻に入っている。
「… 大ネズミは… 結婚式の余興ですからネズミは無いですよね… ファイアーフラワーは見栄えが良さそうですね、採用です。 スライムはちょっと凡庸過ぎるというか… ってか、盥の中で溺死していますよ」イベント係りが指摘する。
「あ… 本当だ… ニャン、水入れ過ぎないでって言ったのに… 湿らせる程度で良いんだよ、ヒタヒタにしたら溺れるよ」リリアが言う。
「だって、干からびないようにってリリたんが言ったニャン!ネーコはやる事やったニャン!」ネーコが反論する。

「… そういう事ですのでファイアーフラワーを配置しておいてください、後は処分してください」あっさり言うと忙し気に建物に戻っていった。


「何だよ… あんなに苦労したのに… 泣きそうだよ…」リリアは不満そうだ。
「仕方無いですよ… スライムはその辺に流せば溶けて消えます。ネズミはリリースに行きましょう。何か手立てを考えましょう」コトロが慰める。
「あたしはもう捕まえに行かないからね」
リリアは不満そうにスライムの盥をその辺に流すと馬車に乗り込んだ。
「皆で作戦考えましょう。戻って来たらドラゴンを見に行きましょうよ」コトロが珍しく気を使っている。

そうとう苦労したのだろう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

4人の勇者とЯΔMЦDΛ

無鳴-ヴィオ-
ファンタジー
5人の少年少女が勇者に選ばれ世界を救う話。 それぞれが主人公的存在。始まりの時代。そして、彼女達の物語。 炎の勇者、焔-ほむら- 女 13歳 水の勇者、萃-すい- 女 14歳 雷の勇者、空-そら- 女 13歳 土の勇者、楓-ふう- 女 13歳 木の勇者、来-らい- 男 12歳

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

処理中です...