勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【238話】 プリ胸ハンケツメイド勇者

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あくる朝、お城の一室で目を覚ましたリリアは査問に呼び出されるまで待機中。
リリアは夜中一度目を覚ましてトイレに行った。その時は衛兵がドアで見張っていたが、朝食前にトイレに行った時には廊下の向こうに衛兵がいるのみで、ドアの見張りはいなくなっていた。まぁ、リリアに逃げる気はない。
朝食が終わると、片づけに来た者がホウキのダカットを返却していった。
「お帰り、ダカット。よく戻ってこれたね。昨日取り上げられて、お城を出るまで預かられるのかと思ってたよ」リリア。
「俺、リリアの使い魔だって主張したんだ。使い魔を契約主から遠ざけるのは不当だって言ってやったんだ、魔権侵害にあたるって。そしたら、偉そうなのが来て、武器でも強い魔法を帯びた道具でもないし、面倒だから返してこいって、何とかなったよ」ダカットがリリアの手の中で言う。
「コトロの小言のお陰で妙な知恵が働くのね、まぁ、お帰りなさいだね」リリアが笑う。

で、することも無いのでリリアはダカットとおしゃべりをしていたらドアにノックがされて人が入ってきた。
見ると執事姿の女二人。一人は白髪交じりに巻き髪の年配、一人は若く痩せた女性。
「係長様、先ほど廊下で見た娘です」痩せ女が言う。
「本当ね、こんな部屋に… あなた名前は」巻き髪。
「え?… リリア、と申します」リリア。
「リリア…ですか… リストにはいません。私は今回五名と聞いていましたが…」痩せ女。
「私も、五名と聞いていましたが… ザッカー様も時々こういうところがありますからねぇ… とにかく、名札を渡して準備させなさい。あなた、ここでなにをやっているのですか、もう集合の時間ですよ、昨日ちゃんと説明を受けているはずです」巻き髪。
「いや… 呼び出されるまでここで待機って言われましたけど…」リリア。
こっちは説明された通りに過ごしているぞ!怒られる筋合いないやい!
「とにかく、準備とホウキを持って集合しなさい。 なんですか、その服装は!それは礼服ですよ… とにかく、服を用意するから早く!早く!」

何だか良くわからないが呼び出しの様なので、ディルが用意した服を着た途端怒られた。
“なんだよ、おまえらが用意した礼服だろ”とリリアは不満がっていたが、直ぐに新たな服が準備され着替えさせられた。
「リサ、ちょっとサイズが小さいようです。まるでメイドコスプレしている娼婦のようです」巻き髪。
「この方、背が高くて… 今はこれしか準備できません。今日六名いるとは聞いておりませんでしたので… いかがしましょうか」痩せ。
「仕方ありません。とりあえず出てもらいましょう、風紀にそぐわないですが中庭なので大丈夫でしょう。さぁ、早く!」巻き髪。

リリアは何だか良くわからないがメイド服を着せられホウキを手に中庭に出された。
メイド服がリリアの体に合わなくて、メッチャぴっちりとしている。
胸元が露でピチピチで、歩くだけでボインボインしている。ヒラヒラスカートの丈も短く、自分では見えないがお尻丸見えな感覚。
「この恰好でですか?庭でやるんですか?え?えぇ?」
あれよあれよという間に痩せ女に手を引かれて中庭に連れ出された。
胸には“清掃三部中庭執務担当・三等当番生”のタグにリリア自ら手書きで“Lilia(研修中)”と書きこまされた札をつけさせられた。
廊下を移動する時の衛兵達の熱い視線がリリアに突き刺さる。


で、そのままリリアは中庭掃除番の研修生としてデビュー。
「これってもう、刑が確定してるのかな?」リリアがダカットに聞く。
「いや、お城のルールなんて知らないよ、罰金刑の公共サービスみたなやつなのか?」ダカットが答える。
「そこの方!手を動かしてください!まぁ!何ですか!その恰好!ここは娼館ではないのですよ! えぇ?今日はこれしかないからこれで出てくれと?仕方ありませんわねぇ」班長なる女がリリアを注意する。
「あの… 掃除って、あたし掃除道具持ってないんですけど… はぃ?あぁ、これはダカット… ホウキですけど…ホウキではないです。話せば長くなりますが、ホウキですが掃除道具ではないので… 別なホウキを…」
リリアが言うと物凄い勢いで怒られた。
リリアはダカットを手に、胸をプリンプリン、ハンケツ姿の直立不動で怒鳴られている。
「なんだこの罰ゲーム、てんで理解不能よ」リリアが呟く。

仕方がないのでリリアはダカットで地面を掃く。
「人権無視だよな、これって」ダカット。
「ちょっと我慢しててよ、怒鳴られたくないよ…」リリア。
「ちょっと、あなた!もっと力入れて掃いてください!」
リリアは中庭でおかしなことになっている。

その頃、査問のために呼び出しに来た者はリリアが部屋から消えていると知り、勇者脱走として騒ぎになり始めていた…


ようやく、リリアは公聴室で査問を受けている。

リリアは庭掃除している間に、勇者が脱走したと大騒ぎになっていた。
誰も中庭掃除をしているリリアが勇者リリアだと気がつかない。結局庭掃除を終わらせて廊下を移動中にリリア本人が騒ぎに気がついた。
「あれ?あたしの事で大騒ぎしてる?」リリアはキョロキョロする。
衛兵や執事、偉そうなのが何人もリリアを通り過ぎるがそれと全然気がつかない。
徹底してエア勇者っぷりを発揮している。
が、誰もピッチピチのメイド服でホウキを手にハンケツ出した女が勇者だと想像もしないだろうから仕方がない部分もある。

“誰も気がつかないし、もうこのまま帰ろうかな?”リリアは悪い事を考えていた。
「勇者が逃げたぞ、査問会前に脱走した、捕らえ次第、牢に放り込め、公開処刑もやむを得ない」騒ぎになっている。
「はい!はい!はい!リリアはここに居ます!朝からお城を出たことなんてありません!ちゃんといますよ!」
廊下でリリアは大きな声で手を上げた。
「………」
周りが止まり、リリアに注目する…
「勇者を探せ!脱走だ!」
誰も勇者リリアの言葉には耳も貸さず…

自ら名乗り出たが信じてもらえず、掃除班長に迷惑な冗談はやめろと怒られていたら、ようやくディルがリリアに気がついてくれた。
「リリア?リリア…殿? とにかく、よかった、さぁ早く、こちらへ!」
ディルはリリアの格好に驚いていたがリリアの手を取ると廊下を急ぐ。
リリアはディルのおかげで脱走罪を免れそうだ。

「ちょっとあなた、休憩が終わったら、中庭の花壇に水やりよ!」
リリアの背中から班長の声がする。
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