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人生はどうだった?
しおりを挟む『やぁ‥君の人生はどうだった?』
「‥ここ、どこだよ」
俺が目覚めた場所はこの世のものではありえない程、先も見えないのに、上から天使の梯子が降り注ぎ、幻想的に光り輝いていた。
放り出された様に座った俺の下は、まるでオーロラが流れるように揺らめいている。
そして、目の前には人間離れしたイケメンが偉そうに腰に手を当てて立っていた。
『いやだから‥君の人生はどうだった?』
ふと‥自分の手のひらを見た。
俺は確か、86歳で召され‥
30歳の時に会社の後輩だった年下の女性と結婚して、子供にも恵まれて、幸せな人生だった。
不満もなく、幸せ‥だったよ?
手のひらは、30歳ぐらいの働き盛りの若い手のひら
年老いた見慣れていた俺ではなかった。
死んだら、若返るのかよ。
てか、こいつ誰だよ。
『?誰だよ?って顔してるね』
「わかってんじゃねーか」
金髪で、仏教じゃねーなって事が一目瞭然な目の前のイケメン野郎。着ている服だって、‥ギリシャ神話かよ。
頼りなさげな絹のような布を際どく上手に着こなして
高そうな装飾品つけて、両手首には天国と地獄です。みたいな白い宝石と黒い宝石がついたそれぞれの腕輪。
うざいくらい眩しい笑顔と色っぽい低い声。
『あぁ‥そうか、君は元々そういう性格だったね?』
「は?」
そういうってなんだよ。てか、なんも言ってねーよ。
「別にいーけど‥」
だって俺は元々‥
『そうだ、君はとても、なんて言うか‥
正直に言って申し訳ないけど、そんなに明るい男ではなかったね。』
はははっ‥てまぶしく笑って言う目の前の男。
「‥‥さっき会ったばっかりだってのに失礼な奴だな。
喧嘩売ってんのかよ。
俺は普通に‥やりたい仕事もして、結婚もして‥‥‥幸せな人生を‥‥」
幸せ‥‥そう幸せだったはずだ。
バリバリ働いて、普通に結婚して、子供もいて、孫もいて、みんなに見送られた俺は幸せな人生だっただろ?
頭の中を巡るこれまでの人生。別に不満なんてない。
穏やかな最後だった。
『そうだね‥幸せでなによりだよ。』
俺は神話野郎の顔を見上げた。
『‥神話野郎とは、失礼な』
呆れ顔をした男は、俺の考えをまんまと口にした。
お前だって俺に失礼な事言ってんだろうが‥‥
なんだ、心が読めるのか‥死んだ世界はなんでもありだな。
「で、俺は‥これからどうなる?死んだのだから、ひょっとしてこれから三途の川へ案内してくれるのか?」
『あぁ‥‥三途の川とは、そなたの世界の死後の世界の事だなぁ‥送ろうか?』
ニヤリと微笑み、指先をひらりと流した。
言っている意味が分からない。ソナタノセカイ?
送ろうか?って飲み会の後女口説いたイケメン上司かよ。
てか、そもそも日本の死後では無い?なにこれ。
まぁ、浮世離れしたギリシャ神話みたいな野郎が目の前にいるくるいだから、でも俺はどうしてこうなった?
『当たり前のようにギリシャ神話と、まぁよい。
まぁ私は、なんだろう‥次の人生へと導く者とでも言うか』
「なんだよ、いいとこ紹介してくれんのかよ」
唇を片方吊り上げて皮肉を言った。
ホストみたいな顔しやがって。
『まったく‥ホストだなんて、そんな安っぽい男の象徴と同列扱いをするなんて、蝋人形にしてやろうか?』
「閣下かよ」
『お前は、幸せな男よな‥こんな皮肉の塊のような男のくせに、幸せな人生を謳歌して、まったく、理解に苦しむよ。
お前のような男に‥』
「ずいぶん言ってくれるじゃねぇか。まぁ、俺はそんな、いい奴じゃねぇよ。」
『よく理解しているな。やはり本質は変わらぬものよ』
「俺のこと見てたのかよ。」
『あぁ‥見ていたさ。お前が毒気を抜かれ、幸せな人生だと、その口から出るように。この目でしかと‥』
目を細め、やや冷ややかに俺を見つめギリシャ野郎は言った。
『お前は、これまで健康的で、普通の幸せな人生を送った。
良かったな。』
ふっと、鼻で笑うギリシャ神話の金髪野郎‥
「なんだよ。ギリシャ野郎って言ったのがそんなにお気に召さなかったか?そんな馬鹿にされる覚えはねーけどな』
そう言った俺にギリシャ野郎は真顔になった。
『私は、願いを叶えてやったまでだ。』
‥願い?
「願いだと?神は願いを叶えてくれるのかよ。
お前が神かは知らんけどな。
神頼みってのは。ちゃんとあるんだな。
俺は幸せを願った事があったか?俺は自分の選択で人生を終えたんだと思ったけどな」
『ふっ‥まさに幸せな男よ。拍手してやろう。』
ニヤリとしながらパンパンと軽く、マジに拍手しやがった。
その姿がカチンときて野郎を睨み付けた。
「いい加減、死んだ俺をどうにかしてくんねーのかよ。
お前としゃべるのも飽きたんだけど。」
『あぁ、同感だ。私は願いを叶えてやったまで‥
それはお前の望みではなかった。私は健気な魂の願いを叶えてやったまでだ。』
「他人の幸せ願う奴なんているのかよ。」
他人の幸せを願うだと?馬鹿馬鹿しいな。
俺はどうしてこんなにイラついているのか。
もちろんこの野郎との会話のせいもある。
だが
なぜこの男にこんなに言われなきゃならないのか。
どうしてこんなに嫌な考えが、言葉が浮かんでくるのか。
なんだ、イライラする。身体もだるい。
『あぁ‥そろそろ素がでてきたな‥まぁ、仕方あるまい。』
ニヤッと笑った野郎は、俺の額に手を当てた。
『お前に一つ、教えてやろう。‥あぁ、一つでは終わらないかな?』
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