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その目を凝らして 14
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ラグロイアへと続く道、馬車の中でリリィベルとテオドールは向かい合って座っていた。
「テオ?ベルになんて言葉を言ったのです?」
リリィベルは少し恥ずかし気に怒っていた。
「なんでもないっ・・・ベルがお前のように細い首だから擽って遊んでいただけだ。」
「っ・・・あんな幼子がっ・・・・あんな事を人前でっ・・・・。」
テオドールは、それでも悪気はなかった。
だから、リリィベルの手を取ってその手の甲に口付けた。
「・・・どうせ食べられるのだからそう怒るな・・・。」
その言葉にリリィベルはさらに顔を真っ赤にして眉を吊り上げた。
「っ誤魔化してもっ・・・」
テオドールの唇は、手の甲からどんどんと上に向かってチュッと上がっていく。
「~~~~~っ・・・テオっ・・・。」
湯気が上がりそうな程リリィベルは真っ赤になった。
片目を開いて、テオドールはリリィベルを見た。そして縋るような目をした。
「もうさっさと食われるというのはどうだ?」
「っ・・・そのような事っ・・・おっしゃらないでっ・・・。」
手をテオドールから引こうとしてもビクともしない。そんなのは当たり前だった。
「結婚式まであと何日あることか・・・俺は狂ってしまう・・・。
お前も言ってたじゃねぇか・・・。我慢してるのは俺だけじゃねぇって・・・。」
「っ・・・そんなっ・・・」
「偽りか?」
「そっ・・・そんな事はっ・・・・。」
この愛しい人に抗う事はきっと出来ない・・・。
今は、一緒に眠るだけでも、甘くて、愛しくて、どれだけ安堵している事か・・・。
それに加えて・・・なんて・・・。
リリィベルは、瞳を俯かせて呟いた。
「っ・・・これ以上・・・されたら・・・私は溺れてしまいますっ・・・・。」
「っ・・・」
その表情に男の本能がとことん擽られる。
テオドールは、リリィベルの頬に手を当てた。
「・・・俺も一緒に溺れる・・・」
「テオっ・・・。」
馬車がガタンと止まる。
「んっ・・・」
その衝撃に2人の近づいた唇が重なった。
思いがけず自分たちのタイミングとは違ったが、まるで後押しされたようだった。
2人は幸せに唇を重ね続ける。
けれど
「お二人様、着きましたよー。続きはお部屋でどうぞー・・・」
今度も馬車のカーテンなど閉めずに、そのロマンスは騎士たちが見放題だった。
カールのその色気のない一言に、テオドールはカールをギロリと睨んだ。
馬車の扉はバァン!っとテオドールの不機嫌の度合いを示すように勢いよく開かれた。
リリィベルの手を取り、降りる。
「・・・カール・・・お前の座は、フィリップに渡すとしよう・・・。」
「えっ!!!いやっ・・・。」
カールは一気に青ざめた。後方についていたフィリップが密にグッと拳を握りしめて喜んだ。
「でっ・・殿下っ・・・冗談ですよね?」
「近々、カールとフィリップで勝負して決めようではないか・・・。」
冷ややかな瞳がカールに突き刺さる。
「やったぁ!!」
フィリップは大喜びだ。
「イーノク、城に戻り次第決闘させような。」
「賛成です。殿下。」
「うそぉ!!!」
イーノクまでもがテオドールに賛成した。
リリィベルの手を引き、ラグロイアの玄関へと向かう。
カールが頭をぐしゃぐしゃと搔き乱した。
その様子を、イーノクは笑ってみていた。
「その軽口直した方がいいぞ?主に向かって・・・」
サイモンはカールに忠告した。
「こんなの愛じゃないか!俺は殿下を愛してるんだ!!」
「やめろ。敬愛していると言え気持ち悪い。殿下に変な噂が立つ。いいからさっさと荷を運べ。」
うぁぁっとカールの叫ぶ声を聴きながら、テオドールはラグロイアの扉を開いた。
開いた先では、清潔な身なりの男が頭を下げて迎えた。
「皇太子殿下、リリィベル様、ラグロイアへお越し下さり光栄で御座います。」
「そなたが、ロラン・ゲトラン子爵だな?」
「左様でございます殿下。」
「ホテルの副支配人だそうだな?」
「はい。今宵は殿下とリリィベル様のひと時を当ホテルでお過ごしいただける事、誠に光栄でございます。
お部屋までご案内いたします。」
「あぁ、よろしく頼む。」
「宜しくお願いいたします。ゲトラン子爵。」
「とんでもございません。では、こちらへ・・・。」
外観も白い煉瓦作りだが、中も白を基調としてシャンデリアがキラキラ光り、その清潔感を引き立てた。
綺麗に配置されている美術品も控え目ながら、価値のあるものだ。
スイートルームへは玄関を入った真正面にマリンブルー色のカーペットが敷かれた広い階段を上がる。その他の部屋は両端にターコイズブルー色のカーペットが敷かれた階段で分かれていた。
ゲトラン子爵に案内されスイートルームへ向かう途中。
「騎士たちにも部屋あるか?」
「もちろんでございます。人数が多いので、ツインルームで御座いますが宜しいでしょうか?」
「急な宿泊で、無理をさせてしまったか?」
「とんでもございません。」
3階まで階段を上がると、二手に分かれ、一室だけの扉がある廊下に出た。
その扉が開かれると
「わぁ・・・・・」
っとリリィベルは思わず声を漏らした。
部屋から見える窓から、湖が一望できた。
まだ正午過ぎの秋の陽が差し込む時、陽が水面に反射してきらきらと輝いている。
白を基調に部屋の中はロイヤルブルーのカーテンがまだ涼しさを表現していた。
ベッドの天幕はきめ細やかなレースが纏められていて高級感がある。
家具もアンティークな物ばかり。王城の一室だとしても良いくらいだった。
リリィベルの表情にゲトラン子爵も満足気だった。余程自信があるようだ。
窓から外を眺めるリリィベルの隣に立ち、テオドールはリリィベルの横顔を見た。
「リリィ、気に入ったようだな。」
「はい殿下・・・とても美しいです。あっ・・・あそこにあるのは船ですね!
2人で乗りたいです。」
「あぁ、そうしよう。クーニッツ伯爵には感謝しないとな。」
「はい。殿下・・・。とても素晴らしいホテルですね。」
見ているだけでも楽しそうなリリィベルにテオドールの顔が緩む。
扉の側で、ゲトラン子爵は口を開いた。
「殿下、湖を渡りますと花園が御座います。お二人でゆったり過ごすことができましょう。
空気が澄んでいて当ホテルの自慢の花園で御座います。」
「そうか。ありがとう。後ほど船を一隻用意してくれ。」
「もちろんでございます殿下。」
丁寧に腰を曲げたゲトラン子爵に、テオドールはクーニッツに似た安心感を覚えた。
「リリィ、軽く昼食をとろう。街に出るのと船で出るのとどちらがいい?」
「あぁ・・・迷ってしまいます・・・。」
困り顔のリリィベルに、ゲトランは口を開いた。
「湖の周りは、夜には蛍が舞いますし、外灯も御座います。今夜は満月で御座いますし、
きっと夜の船もお楽しみ頂けますよ?花園も外灯もありますし、素敵な夜をお過ごしいただけます。」
「夜の船・・・花園・・・殿下っ!夜も素敵ですね?夜は街が店が閉まりますから・・・。」
「では先に街に出掛けるとしよう。それでいいか?」
「はいっ殿下っ」
飛び跳ねそうなくらい、リリィベルはご機嫌だった。そして、また部屋の中を見渡していると
カタリナとイーノク達が荷物を運んでやってきた。
「あっ、カタリナ!軽食を済ませたら殿下と街へ出るわ?帰ったらお風呂に入るから
それまで準備をお願いできる?」
「もちろんでございます。リリィベル様。」
リリィベルの嬉しそうな顔に、カタリナも明るい笑顔で答えた。
主の喜びは、彼女にとっても喜びだった。ここの所心配な事が多かったが、
ここへきてから、子供たちの事はあったが、リリィベルの表情は明るい。
「では、私は軽食の用意を伝えて参りますので、それまでごゆっくりとお寛ぎを・・・。
失礼致します。殿下、リリィベル様。」
「あぁ、ありがとう。ゲトラン子爵。」
テオドールが退出を許すと、ゲトラン子爵は部屋を出て行った。
「イーノク、軽食を済ませたら街へ出る。本当についてくるのか?」
「はい。もちろんでございます。」
笑顔で返すイーノクの意思はどうしても曲がらない。テオドールは、はぁっと息を吐いた。
「騎士たちに各々割り当てられた部屋で待機するよう伝えておけ。
ホテルの前と部屋の前には、交代で二人ずつ待機だ。」
「畏まりました。」
どんな時も、皇太子と婚約者が居る限り、騎士たちは見張りは欠かせない。
「お前は・・・まぁ・・・」
「殿下、扉の前で待機しておりますので、お出かけの時はご同行いたします。」
「・・・・そうだな・・・。お前もなんか腹に入れとけ・・・・。」
テオドールはもう、諦めた。
「テオ?ベルになんて言葉を言ったのです?」
リリィベルは少し恥ずかし気に怒っていた。
「なんでもないっ・・・ベルがお前のように細い首だから擽って遊んでいただけだ。」
「っ・・・あんな幼子がっ・・・・あんな事を人前でっ・・・・。」
テオドールは、それでも悪気はなかった。
だから、リリィベルの手を取ってその手の甲に口付けた。
「・・・どうせ食べられるのだからそう怒るな・・・。」
その言葉にリリィベルはさらに顔を真っ赤にして眉を吊り上げた。
「っ誤魔化してもっ・・・」
テオドールの唇は、手の甲からどんどんと上に向かってチュッと上がっていく。
「~~~~~っ・・・テオっ・・・。」
湯気が上がりそうな程リリィベルは真っ赤になった。
片目を開いて、テオドールはリリィベルを見た。そして縋るような目をした。
「もうさっさと食われるというのはどうだ?」
「っ・・・そのような事っ・・・おっしゃらないでっ・・・。」
手をテオドールから引こうとしてもビクともしない。そんなのは当たり前だった。
「結婚式まであと何日あることか・・・俺は狂ってしまう・・・。
お前も言ってたじゃねぇか・・・。我慢してるのは俺だけじゃねぇって・・・。」
「っ・・・そんなっ・・・」
「偽りか?」
「そっ・・・そんな事はっ・・・・。」
この愛しい人に抗う事はきっと出来ない・・・。
今は、一緒に眠るだけでも、甘くて、愛しくて、どれだけ安堵している事か・・・。
それに加えて・・・なんて・・・。
リリィベルは、瞳を俯かせて呟いた。
「っ・・・これ以上・・・されたら・・・私は溺れてしまいますっ・・・・。」
「っ・・・」
その表情に男の本能がとことん擽られる。
テオドールは、リリィベルの頬に手を当てた。
「・・・俺も一緒に溺れる・・・」
「テオっ・・・。」
馬車がガタンと止まる。
「んっ・・・」
その衝撃に2人の近づいた唇が重なった。
思いがけず自分たちのタイミングとは違ったが、まるで後押しされたようだった。
2人は幸せに唇を重ね続ける。
けれど
「お二人様、着きましたよー。続きはお部屋でどうぞー・・・」
今度も馬車のカーテンなど閉めずに、そのロマンスは騎士たちが見放題だった。
カールのその色気のない一言に、テオドールはカールをギロリと睨んだ。
馬車の扉はバァン!っとテオドールの不機嫌の度合いを示すように勢いよく開かれた。
リリィベルの手を取り、降りる。
「・・・カール・・・お前の座は、フィリップに渡すとしよう・・・。」
「えっ!!!いやっ・・・。」
カールは一気に青ざめた。後方についていたフィリップが密にグッと拳を握りしめて喜んだ。
「でっ・・殿下っ・・・冗談ですよね?」
「近々、カールとフィリップで勝負して決めようではないか・・・。」
冷ややかな瞳がカールに突き刺さる。
「やったぁ!!」
フィリップは大喜びだ。
「イーノク、城に戻り次第決闘させような。」
「賛成です。殿下。」
「うそぉ!!!」
イーノクまでもがテオドールに賛成した。
リリィベルの手を引き、ラグロイアの玄関へと向かう。
カールが頭をぐしゃぐしゃと搔き乱した。
その様子を、イーノクは笑ってみていた。
「その軽口直した方がいいぞ?主に向かって・・・」
サイモンはカールに忠告した。
「こんなの愛じゃないか!俺は殿下を愛してるんだ!!」
「やめろ。敬愛していると言え気持ち悪い。殿下に変な噂が立つ。いいからさっさと荷を運べ。」
うぁぁっとカールの叫ぶ声を聴きながら、テオドールはラグロイアの扉を開いた。
開いた先では、清潔な身なりの男が頭を下げて迎えた。
「皇太子殿下、リリィベル様、ラグロイアへお越し下さり光栄で御座います。」
「そなたが、ロラン・ゲトラン子爵だな?」
「左様でございます殿下。」
「ホテルの副支配人だそうだな?」
「はい。今宵は殿下とリリィベル様のひと時を当ホテルでお過ごしいただける事、誠に光栄でございます。
お部屋までご案内いたします。」
「あぁ、よろしく頼む。」
「宜しくお願いいたします。ゲトラン子爵。」
「とんでもございません。では、こちらへ・・・。」
外観も白い煉瓦作りだが、中も白を基調としてシャンデリアがキラキラ光り、その清潔感を引き立てた。
綺麗に配置されている美術品も控え目ながら、価値のあるものだ。
スイートルームへは玄関を入った真正面にマリンブルー色のカーペットが敷かれた広い階段を上がる。その他の部屋は両端にターコイズブルー色のカーペットが敷かれた階段で分かれていた。
ゲトラン子爵に案内されスイートルームへ向かう途中。
「騎士たちにも部屋あるか?」
「もちろんでございます。人数が多いので、ツインルームで御座いますが宜しいでしょうか?」
「急な宿泊で、無理をさせてしまったか?」
「とんでもございません。」
3階まで階段を上がると、二手に分かれ、一室だけの扉がある廊下に出た。
その扉が開かれると
「わぁ・・・・・」
っとリリィベルは思わず声を漏らした。
部屋から見える窓から、湖が一望できた。
まだ正午過ぎの秋の陽が差し込む時、陽が水面に反射してきらきらと輝いている。
白を基調に部屋の中はロイヤルブルーのカーテンがまだ涼しさを表現していた。
ベッドの天幕はきめ細やかなレースが纏められていて高級感がある。
家具もアンティークな物ばかり。王城の一室だとしても良いくらいだった。
リリィベルの表情にゲトラン子爵も満足気だった。余程自信があるようだ。
窓から外を眺めるリリィベルの隣に立ち、テオドールはリリィベルの横顔を見た。
「リリィ、気に入ったようだな。」
「はい殿下・・・とても美しいです。あっ・・・あそこにあるのは船ですね!
2人で乗りたいです。」
「あぁ、そうしよう。クーニッツ伯爵には感謝しないとな。」
「はい。殿下・・・。とても素晴らしいホテルですね。」
見ているだけでも楽しそうなリリィベルにテオドールの顔が緩む。
扉の側で、ゲトラン子爵は口を開いた。
「殿下、湖を渡りますと花園が御座います。お二人でゆったり過ごすことができましょう。
空気が澄んでいて当ホテルの自慢の花園で御座います。」
「そうか。ありがとう。後ほど船を一隻用意してくれ。」
「もちろんでございます殿下。」
丁寧に腰を曲げたゲトラン子爵に、テオドールはクーニッツに似た安心感を覚えた。
「リリィ、軽く昼食をとろう。街に出るのと船で出るのとどちらがいい?」
「あぁ・・・迷ってしまいます・・・。」
困り顔のリリィベルに、ゲトランは口を開いた。
「湖の周りは、夜には蛍が舞いますし、外灯も御座います。今夜は満月で御座いますし、
きっと夜の船もお楽しみ頂けますよ?花園も外灯もありますし、素敵な夜をお過ごしいただけます。」
「夜の船・・・花園・・・殿下っ!夜も素敵ですね?夜は街が店が閉まりますから・・・。」
「では先に街に出掛けるとしよう。それでいいか?」
「はいっ殿下っ」
飛び跳ねそうなくらい、リリィベルはご機嫌だった。そして、また部屋の中を見渡していると
カタリナとイーノク達が荷物を運んでやってきた。
「あっ、カタリナ!軽食を済ませたら殿下と街へ出るわ?帰ったらお風呂に入るから
それまで準備をお願いできる?」
「もちろんでございます。リリィベル様。」
リリィベルの嬉しそうな顔に、カタリナも明るい笑顔で答えた。
主の喜びは、彼女にとっても喜びだった。ここの所心配な事が多かったが、
ここへきてから、子供たちの事はあったが、リリィベルの表情は明るい。
「では、私は軽食の用意を伝えて参りますので、それまでごゆっくりとお寛ぎを・・・。
失礼致します。殿下、リリィベル様。」
「あぁ、ありがとう。ゲトラン子爵。」
テオドールが退出を許すと、ゲトラン子爵は部屋を出て行った。
「イーノク、軽食を済ませたら街へ出る。本当についてくるのか?」
「はい。もちろんでございます。」
笑顔で返すイーノクの意思はどうしても曲がらない。テオドールは、はぁっと息を吐いた。
「騎士たちに各々割り当てられた部屋で待機するよう伝えておけ。
ホテルの前と部屋の前には、交代で二人ずつ待機だ。」
「畏まりました。」
どんな時も、皇太子と婚約者が居る限り、騎士たちは見張りは欠かせない。
「お前は・・・まぁ・・・」
「殿下、扉の前で待機しておりますので、お出かけの時はご同行いたします。」
「・・・・そうだな・・・。お前もなんか腹に入れとけ・・・・。」
テオドールはもう、諦めた。
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