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忘れたくない
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入浴を終えたテオドールはバスルームを出た。
ソファーを見れば案の定リリィベルが天使の寝顔で眠っている。
「ふっ・・・かわい・・・」
タオルで髪乾かしながら静かに呟いた。
まだ18時を過ぎた所、食事まではまだ時間がある。
もう少しだけ寝かせてあげよう‥‥
テオドールは、静かに机に向かった。
この後の花園でのデートを思い浮かべる。
それだけで胸が弾む。
その心を何度も射抜きたい‥
自然と笑みがこぼれた。
リリィベルが見える向かい側のソファーに座った。
頬杖をついて、じっと見つめた。
・・・最近のリリィベルは、恐怖の色を見せなくなった。
それは、王城を離れたからか・・・
この視察で慌ただしく、悲しい現実を居ながらも、楽しく過ごせたからだろうか・・・。
何にせよ・・・穏やかな寝顔を見られて良かった・・・。
「・・・・・・」
自分だけだと、縋られているのは、男としては嬉しかった。
唯一無二の存在であることが、
だが、それと同時に、大事なものを・・・・
削っているようで・・・・。
「でも・・・こんなに可愛い寝顔してるから・・・。」
テオドールが微笑んだ。リリィベルの唇が弧を描いていたから・・・。
その夢の中で幸せに笑って・・・。
その隣には、俺が居てほしい・・・。夢の中でも・・・。
フランクはリリィベルが眠っているのを見て早々と下がらせた。
手にした書類を見ていてからさほど時間は経っていない。
だが、その時だった・・・。
シャンデリアの光に、反射した雫。
「!・・・・・」
寝ているリリィベルの閉じた瞳から流れ落ちた。
その雫。
テオドールは・・・息を呑んだ。
さっきまであんなに穏やかだった寝顔が・・・。
眉を顰めて・・・声も出さずに・・・・・
何故・・・泣いている・・・・?
「・・・・・・・・・・・」
「!・・・リリィ・・・・?」
控え目に声を掛けた。
けれど、リリィベルは目を覚まさなかった。
ただ、小さな唇が僅かに震えた。
「お・・ね・・・がい・・・・・」
悲し気に涙を流して、願う。
「・・・・ご・・・・めん・・・・ね・・・・・・」
「・・・・・・・・」
テオドールは、眉を顰めた。
その呟かれた言葉が・・・・心を射抜くから・・・・。
テオドールの瞳から、涙が一筋流れる。
意図せず・・・その声に、反応するように・・・魂が・・・。
何も考えていなかった。
ただ、リリィベルの言葉を聞いたら・・・
涙が勝手に流れた。ハラハラと・・・手元から書類が落ちていく。
それはまるで、自分の感情が崩れ落ちていくようだった。
「・・・・・なぜ・・・・・・」
テオドールは、その場に顔を伏せて、片手で目元を覆った。
一度流れた涙は、簡単には止まらない。
いつもそうだ・・・。
俺が暁に戻る瞬間・・・・。
リリィベルであるように、礼蘭であるように・・・この魂に届いて・・・・。
ただ、涙が溢れてくる。
起こしてあげるべきなのだろう・・・。
でも、なぜか・・・それが出来なくて・・・・。
その【おねがい】と【ごめんね】が・・・・。
頭に、心に、魂に・・・全身に絡みついて。
そんな言葉でも、聞いていたいと。暁が言っている・・・。
「っ・・・ぅ・・・・っ・・・・」
俺とリリィは、暁と礼蘭で・・・。
この体に生まれ変わっても・・・。
何故俺たち涙を流すのかは、記憶が戻らない限り、その答えにたどり着く事はない。
「どうしてっ・・・・・」
テオドールは涙が流しながら立ち上がると、リリィベルにゆっくりと近づいた。
眠っているリリィベルを、見ていると。
絶望感が押し寄せた・・・。
「っ・・・起きろっ・・・・・」
小さく・・・囁いた・・・。
リリィベルの肩を揺すって、それでもダメで、耐えられなくて、ぎゅっとその頭を抱きしめた。
それでもリリィベルは、悲し気に涙を流した寝顔のままだった。
「っ・・・・リリィっ・・・・・起きろっ・・・・・」
テオドールは焦った様に声を上げた。
身体を少し起こして抱きしめたのに、リリィベルは、まだ苦しい夢の中。
これは・・・・・。
これは・・・・夢だ・・・。
俺は・・・・・こんな場面を・・・・・・・。
「起きろっ・・・・!!リリィっ!!!!!!」
悲鳴のような声で、叫んだ。
「うぅっ・・・・。」
リリィベルの瞼が揺れた。
テオドールはそれを見て・・・顔を歪めた。
ほら・・・・起きるだろう・・・・?
「!!っ・・・・リリ・・・ィ・・・・。」
リリィベルが、瞳をうっすらと開けた。テオドールは、ほっとした様に震えながら笑みを浮かべた。
「・・・・・ぁ・・・・・き・・・・・・ら・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
テオドールは、放心した。リリィベルの唇からこぼれた名前。
そしてまた閉じられる瞼・・・。苦しみ続ける夢に入り込もうとする・・・。
リリィ・・・やはりお前は・・・・・
暁を・・・・覚えている・・・・。
その夢の中で・・・お前は・・・何を思って泣いた・・・・。
お前は・・・・俺に何を謝った・・・・。
「っ・・・れい・・・ら・・・・・」
リリィベルを抱きしめたテオドールからこぼれた名前は、昔の名前・・・・。
出会いは巡ってくるのに・・・・
俺たちは出会ったのに・・・
また愛し合うのに・・・
ぼうっとしていたその魂を抱きしめるように。番(つがい)はただ、言葉が溢れてくる。
「っ・・・やめてくれっ・・っ・・・・」
「・・・お前をっ・・・・忘れたくないっ・・・・・。」
忘れたくないと、暁はいつ・・・・願った?
俺じゃなかった頃の俺は、お前をいつ忘れた・・・・。
そして、何故お前に向かって・・・。
忘れたくないと・・・・。
テオドールは天を仰いだ。涙を流しながら・・・。
「早くっ・・・っ・・・早くっ・・・・
俺の記憶を・・・・っ・・・・返してくれっ・・・・・・。」
リリィが夢の中で暁と会っている・・・。
そして泣いている。
願を掛ける・・・。
礼蘭・・・・お前は・・・・どうして・・・・・。
俺の腕から・・・飛んで行ってしまったんだ・・・・。
ソファーを見れば案の定リリィベルが天使の寝顔で眠っている。
「ふっ・・・かわい・・・」
タオルで髪乾かしながら静かに呟いた。
まだ18時を過ぎた所、食事まではまだ時間がある。
もう少しだけ寝かせてあげよう‥‥
テオドールは、静かに机に向かった。
この後の花園でのデートを思い浮かべる。
それだけで胸が弾む。
その心を何度も射抜きたい‥
自然と笑みがこぼれた。
リリィベルが見える向かい側のソファーに座った。
頬杖をついて、じっと見つめた。
・・・最近のリリィベルは、恐怖の色を見せなくなった。
それは、王城を離れたからか・・・
この視察で慌ただしく、悲しい現実を居ながらも、楽しく過ごせたからだろうか・・・。
何にせよ・・・穏やかな寝顔を見られて良かった・・・。
「・・・・・・」
自分だけだと、縋られているのは、男としては嬉しかった。
唯一無二の存在であることが、
だが、それと同時に、大事なものを・・・・
削っているようで・・・・。
「でも・・・こんなに可愛い寝顔してるから・・・。」
テオドールが微笑んだ。リリィベルの唇が弧を描いていたから・・・。
その夢の中で幸せに笑って・・・。
その隣には、俺が居てほしい・・・。夢の中でも・・・。
フランクはリリィベルが眠っているのを見て早々と下がらせた。
手にした書類を見ていてからさほど時間は経っていない。
だが、その時だった・・・。
シャンデリアの光に、反射した雫。
「!・・・・・」
寝ているリリィベルの閉じた瞳から流れ落ちた。
その雫。
テオドールは・・・息を呑んだ。
さっきまであんなに穏やかだった寝顔が・・・。
眉を顰めて・・・声も出さずに・・・・・
何故・・・泣いている・・・・?
「・・・・・・・・・・・」
「!・・・リリィ・・・・?」
控え目に声を掛けた。
けれど、リリィベルは目を覚まさなかった。
ただ、小さな唇が僅かに震えた。
「お・・ね・・・がい・・・・・」
悲し気に涙を流して、願う。
「・・・・ご・・・・めん・・・・ね・・・・・・」
「・・・・・・・・」
テオドールは、眉を顰めた。
その呟かれた言葉が・・・・心を射抜くから・・・・。
テオドールの瞳から、涙が一筋流れる。
意図せず・・・その声に、反応するように・・・魂が・・・。
何も考えていなかった。
ただ、リリィベルの言葉を聞いたら・・・
涙が勝手に流れた。ハラハラと・・・手元から書類が落ちていく。
それはまるで、自分の感情が崩れ落ちていくようだった。
「・・・・・なぜ・・・・・・」
テオドールは、その場に顔を伏せて、片手で目元を覆った。
一度流れた涙は、簡単には止まらない。
いつもそうだ・・・。
俺が暁に戻る瞬間・・・・。
リリィベルであるように、礼蘭であるように・・・この魂に届いて・・・・。
ただ、涙が溢れてくる。
起こしてあげるべきなのだろう・・・。
でも、なぜか・・・それが出来なくて・・・・。
その【おねがい】と【ごめんね】が・・・・。
頭に、心に、魂に・・・全身に絡みついて。
そんな言葉でも、聞いていたいと。暁が言っている・・・。
「っ・・・ぅ・・・・っ・・・・」
俺とリリィは、暁と礼蘭で・・・。
この体に生まれ変わっても・・・。
何故俺たち涙を流すのかは、記憶が戻らない限り、その答えにたどり着く事はない。
「どうしてっ・・・・・」
テオドールは涙が流しながら立ち上がると、リリィベルにゆっくりと近づいた。
眠っているリリィベルを、見ていると。
絶望感が押し寄せた・・・。
「っ・・・起きろっ・・・・・」
小さく・・・囁いた・・・。
リリィベルの肩を揺すって、それでもダメで、耐えられなくて、ぎゅっとその頭を抱きしめた。
それでもリリィベルは、悲し気に涙を流した寝顔のままだった。
「っ・・・・リリィっ・・・・・起きろっ・・・・・」
テオドールは焦った様に声を上げた。
身体を少し起こして抱きしめたのに、リリィベルは、まだ苦しい夢の中。
これは・・・・・。
これは・・・・夢だ・・・。
俺は・・・・・こんな場面を・・・・・・・。
「起きろっ・・・・!!リリィっ!!!!!!」
悲鳴のような声で、叫んだ。
「うぅっ・・・・。」
リリィベルの瞼が揺れた。
テオドールはそれを見て・・・顔を歪めた。
ほら・・・・起きるだろう・・・・?
「!!っ・・・・リリ・・・ィ・・・・。」
リリィベルが、瞳をうっすらと開けた。テオドールは、ほっとした様に震えながら笑みを浮かべた。
「・・・・・ぁ・・・・・き・・・・・・ら・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
テオドールは、放心した。リリィベルの唇からこぼれた名前。
そしてまた閉じられる瞼・・・。苦しみ続ける夢に入り込もうとする・・・。
リリィ・・・やはりお前は・・・・・
暁を・・・・覚えている・・・・。
その夢の中で・・・お前は・・・何を思って泣いた・・・・。
お前は・・・・俺に何を謝った・・・・。
「っ・・・れい・・・ら・・・・・」
リリィベルを抱きしめたテオドールからこぼれた名前は、昔の名前・・・・。
出会いは巡ってくるのに・・・・
俺たちは出会ったのに・・・
また愛し合うのに・・・
ぼうっとしていたその魂を抱きしめるように。番(つがい)はただ、言葉が溢れてくる。
「っ・・・やめてくれっ・・っ・・・・」
「・・・お前をっ・・・・忘れたくないっ・・・・・。」
忘れたくないと、暁はいつ・・・・願った?
俺じゃなかった頃の俺は、お前をいつ忘れた・・・・。
そして、何故お前に向かって・・・。
忘れたくないと・・・・。
テオドールは天を仰いだ。涙を流しながら・・・。
「早くっ・・・っ・・・早くっ・・・・
俺の記憶を・・・・っ・・・・返してくれっ・・・・・・。」
リリィが夢の中で暁と会っている・・・。
そして泣いている。
願を掛ける・・・。
礼蘭・・・・お前は・・・・どうして・・・・・。
俺の腕から・・・飛んで行ってしまったんだ・・・・。
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