ハッピーエンドを待っている 〜転生したけど前世の記憶を思い出したい〜

真田音夢李

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生涯の恋 1

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【うっ‥‥‥なぁんで‥‥っっ‥‥‥なんでっ‥‥‥俺は‥‥っ
 礼蘭と一緒に生きたかったっ‥‥子供もっ‥‥‥何にも知らないでっ‥‥‥愛してるって‥‥伝えたかったぁっ‥‥‥っ‥ぁぁぁぁぁぁ‥‥‥‥。】




 ねぇ‥‥‥あき‥‥‥




【ぁぁぁっ‥‥‥れぃぃ‥‥‥俺はっ‥‥れいをまもるってっ‥‥‥ぜんぜん守れなかったぁぁぁぁ‥‥‥守れなかったぁぁぁぁ‥‥‥ぁぁぁぁぁっ‥‥‥ぅうぅっぅぅぁぁ‥‥‥っ‥‥‥子供もっ‥‥‥もぉいねぇぇ‥っ‥‥れいもぉっ‥‥‥子供もぉっ‥‥‥ぁぁぁぁあぁっ‥‥‥‥っ‥‥‥‥】







 あき‥‥‥ねぇ‥‥‥あき‥‥‥?






 私の声‥‥‥聞こえないよね‥‥‥‥






 こんなに泣いてるあきを見て‥‥私は‥‥‥‥




 どうしたらいいか‥‥分からない‥‥‥



 でもね、あきをね‥‥‥


 ただ1人にしてしまった事を‥‥‥後悔してるけど‥‥‥




 あなたを守ることが出来たことは‥‥‥



 後悔してないの‥‥‥



 一緒に‥‥生きて‥‥‥あきに赤ちゃんを抱かせてあげられなかった事‥‥‥



 あきと一緒に生きられなかった事‥‥‥



 とても‥‥‥悲しいよ‥‥‥‥




 あきにね‥‥‥



 ずっと、愛してるって‥‥‥伝えたいのに‥‥‥




 私の心は、体を‥‥離れて‥‥泣いてるあきを‥‥


 見てるしか出来ないの‥‥‥




 ねぇあき‥‥‥‥


 あき‥‥‥


 あき‥‥‥




 あいしてるよ‥‥‥‥‥







 世界が真っ暗で、目を開けてるのか、閉じているのか分からなかった。

 あきの、驚いた顔を見てからずっと‥‥‥。
 ここに居る。

 何度も、あたりに手を伸ばしたけど‥‥‥


 何もなくて‥‥‥


 暁も居なくて‥‥‥身体が冷たくて‥‥‥

 心にぽっかり穴が空いてるみたいに何もなくて‥‥


 不思議で、たまらなかったよ‥‥‥。




 《おや‥‥‥君がきたのかい?》


 しばらくすると、暗闇で声が聞こえた。
 色っぽい低い声が、頭に響いた。

「‥‥誰‥‥?‥‥どこ‥‥‥?」

 《死ぬ運命じゃなかった者が来てしまった‥‥おまけに2人もだ‥‥‥。》


「‥‥‥死ぬ‥‥?」

 この言葉の意味が分からなくて、床に手をついたまま、体は固まった。


 《あぁ、そうか‥‥‥気づく間もなかったんだね。

 君は、君の命は‥‥すでに消えてしまったよ?》



「‥‥‥死んだ‥‥‥の?」


 《そうだよ‥‥‥君の人生は‥‥‥》


「私っ‥‥‥明日‥‥結婚式‥‥なの‥‥‥。

 お腹に‥‥‥あきの赤ちゃんが‥‥‥‥‥」


 呆然と、呟いた。そして肩を落とした。


 《ああ、だから2人もの命が‥‥消えてしまったね‥‥。》

「‥‥死んだ‥‥?」

 《‥‥受け止められないのも無理はない。仕方ない‥‥。

 わかるまで、教えてあげるよ。君は死んでしまったよ?

 さっき、君は、君の夫を庇い車にぶつかっただろう?

 痛みで覚えていないのだ。その時だよ?


 死ぬのは幼い子供だったんだが‥‥まぁ、君の夫も無傷では無かったが‥‥。命はあったはずの運命だった。


 君は、身代わりに死んでしまったよ。》


「‥‥‥あの‥‥女の子‥‥‥?」

 《ああそうだ。君の夫が抱いていた幼い女の子だ‥‥。
 あの子の命は、あの事故で死ぬはずだった。君はあの子に命をあげてしまったんだね‥。理解できるかな?

 お腹の子と一緒に‥‥‥》



「死んだ‥‥‥じゃあ‥‥‥結婚式‥‥は‥‥‥」


 《花嫁の君が死んだのだから‥‥出来ないだろうね‥‥》


「‥‥ちょっと‥‥ぶつかっただけよ‥‥?」

 《混乱するのも無理ないけど、君の小さな身体が死んでしまうには十分だよ。頭を強く打ったんだ。

 まぁ、死んでしまったから‥‥痛くはないだろう‥‥?》




「‥‥痛く‥‥ないわ‥‥‥。」

 《痛みは感じないだろうね。それは幸いかな?》



「‥‥‥暁は‥‥?」



 《‥‥君の夫なら‥‥ずっと君を呼んでいるよ‥‥。》


「‥‥帰れない‥‥?」




 《言っただろう?君は死んだんだ。生きている者とは違うんだよ。ここには何もないだろう?

 人を助けて自分が死んでしまうなんて‥‥扱いに困ってしまうよ‥‥。そして、まだ理解出来ていないね‥‥。


 困ったなぁ‥‥‥私の元に来るなんて‥‥》



 その声は、とても頭に低く響いて、胸にストンと落ちてくる。





 私は‥‥‥死んだ‥‥‥。



 死んで‥‥しまった‥‥‥‥。





 死んでしまったら、どんな風なのだろうと、誰に分からないその死後の世界は、綺麗な草原も、三途の川も何もなくて



 こんな‥‥真っ暗闇なの‥‥‥?


 私はただ瞼を閉じているだけの様なのに‥‥。



 私が見た最後は‥‥‥暁のハッと驚いた顔‥‥。






 私は‥‥死んだ‥‥‥。


 だから、此処に‥‥暁は居ないのね‥‥‥。




 いつか、この感情も‥‥消えてしまうのだろうか‥‥。




「‥‥‥死んだ‥‥‥‥。」



 涙も出なかった‥‥‥信じられなくて、でも何もない、こんな所にただ1人で‥‥。私の時間は‥‥あの時止まってしまった‥‥。


 痛くもない‥‥‥。


 なにも‥‥‥ただ、死んだ‥‥‥。



「あ‥‥‥赤ちゃん‥‥‥‥。」


 まだほっそりとしたお腹に手を当てた。


 その時、自分の悲しみが込み上げた。

 暁との絆。暁との愛の証‥‥。


 生を受けるはずだった命‥‥‥。



「私の‥‥赤ちゃん‥‥‥私のせい‥‥‥っ‥‥でも‥‥‥。」



 暁を‥‥目の前にいた暁を‥‥‥。


 そう、あの女の子を抱き上げていた暁を見て‥‥。


 未来を思い描いた刹那‥‥‥。



 そんな幸せな未来も‥‥‥無くなってしまった‥‥‥。




「っ‥‥ごっ‥‥‥ごめん‥‥‥ね‥‥‥‥。」


 お腹の子は、このまま大きくなる事なく私と死んでしまった。


 無鉄砲な私は、暁を守りたい気持ちでいっぱいで、体を投げ出した。


 じゃなかったら‥‥暁を失ってしまうかもしれなかった。


 あなたを忘れた訳じゃないのに‥‥‥。


 ただ、暁を‥‥‥。




 《残念だけど、私は君を連れて行かないと‥‥‥。》

 また声が聞こえた。その声が聞こえた後、遠くで一点の光が見えた。それは星の輝きに似ていた。


「あそこに‥‥‥?」
 《ああ、そうだよ。怖いかい?》


 その声は、耳元で聞こえた。吐息も感じた。
 ふと反射的に振り返った。するとそこにはこの世の人とは思えない程の美しい男性がいた。

 神々しい金髪の男性だ。


「あなた‥‥は‥‥‥?」

 《私は、アレクシスと言う。星河礼蘭‥‥。あ、如月だったかい?‥‥君を次の人生へ導く者だよ。》

「次の‥人生‥‥?」


 《ああ、君は身代わりで死んでしまったからね。君の世界では一般的に生まれ変わるのには多少の時間を要するね。

 でも、私が君の案内役だ。次は、素晴らしい人生になる事を祈るよ。
 君の世界とは違う世界線だ‥。面白そうだろう?》


「‥‥私は‥‥いつも‥‥幸せだったわ‥‥‥?」

 《ふっ‥‥‥そうか‥‥君の夫は、君に手を合わせてもくれない夫だけど、それでも?》


「私は‥暁がいて‥‥毎日幸せだった‥‥‥素晴らしい人と‥‥素晴らしい人生だった。」

 《じゃあ、次も大丈夫だよ、君のその心は変わってしまうけれど、魂は変わらず、幸せになる事だろう。》






「‥‥‥‥このまま‥‥?もう行くの‥‥‥?」



 《君は、死んでしまったから‥‥ここで立ち止まる必要は無いよ。なんと言うのか、ああ、徳を積んだとでもいうのかな?‥‥‥君に降りかかる災難はないだろう。》




「‥‥‥っ‥‥‥暁に‥‥もう会えないの‥‥‥?」  



 《君が救ったんだ。彼の人生は続くよ。君は生まれ変わり新しい人生だ。彼は居ないよ。新しい人生で良い人が待っている事だろう。君の魂は‥‥星の様に輝いている。

 だから、私の所に来たのかな?》




 生まれ変わる‥‥



 暁のいない人生



 暁のいない世界‥‥



 暁を愛する事ができない心‥‥



「いや‥‥‥嫌っ‥‥‥そんな所は嫌!!!」



 初めて涙が流れた。

 死んでしまっても、涙は流れるんだね‥‥。
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