砂漠の国のハレム

さち

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夜会当日

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 シャイムのお披露目を目的とした夜会当日、シャイムは朝から落ち着かずにそわそわと過ごしていた。
「そんなにそわそわしてどうしたの?少しは落ち着きなよ」
庭で一緒にお茶をしていたアランが呆れたように言う。シャイムは恥ずかしそうに「すみません」と謝った。
「今夜は初めての夜会なので、緊張してしまって」
「ああ、今夜はシャイムのお披露目だものね。大丈夫だよ。シャイムは陛下のおそばにいればいいんだから」
落ち着かない理由に納得したアランが苦笑しながら言う。シャイムはうなずきながらもそれでも緊張すると言った。
「たくさん人がくるんですよね?俺、人がたくさんいるところって慣れなくて」
「元々いたのは村だっけ?人はそんなに多くなかったの?」
「えっと、一応村でしたけど、村外れの、あまり人がこないところに住んでいたので」
アランは「ふうん」と言いながら違和感を覚えた。
 シャイムの母は元々その村の生まれではなかったようだとシャイムは言っていた。なのにわざわざ村外れに住んだのは村人がよそ者を嫌ったか、シャイムの母親が訳ありで、あえて他者との接触を拒んだか、どちらかしか考えられなかった。だが、シャイムはそのことに違和感を感じていないようだった。ならばあえて言う必要はないだろうとアランは結論づけた。
「夜会には陛下もカシムも、僕たちも行くんだから。みんな一緒なら怖くないでしょ?それに、今夜はウルファさまもくるって聞いたし。貴族の連中も悪さできないよ」
「ウルファさま?」
初めて聞いた名にシャイムが首をかしげる。アランは首をかしげるシャイムを見ると「陛下の姉君だよ」と教えた。
「陛下の姉君は陛下によく似てらっしゃるよ。気が強い方だし頭もいいから貴族なんて言い負かしてしまうんだ」
「すごい方なんですね」
「そうだよ。だからウルファさまが出席なさるときはいつもうるさい貴族も大人しいんだ」
クスクス笑いながら言うアランにシャイムは「早くお会いしてみたいです」と微笑んだ。
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