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1章「運命の幕開け」
4話 現実はチュートリアルのようには進まない
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「リオン、わたしを冒険者ギルドに連れてって!」
「……冒険者ギルドに?」
わたしの言葉にリオンがぽかんと口を開ける。
「な、なんでまた突然に」
「冒険者になりたいの!」
拳を握り私は声高らかに演説する。
「ずっとずっと憧れてたの。好きなジョブ、かっこいいスキル! 沢山クエストをこなして、モンスターを討伐して、素材とお金を集めて……いい防具を手に入れて、自由気ままに異世界ライフを過ごすのがずっと夢だったの! せっかく剣と魔法の世界にいるんだったら、ゲームの中の世界をリアルで体感したいじゃない!」
「……リ、リラ?」
勢い余って前世の自分が前面に出てくる。
ずっと「ドラゴンズ・サーガ」をソロプレイで遊んでいた。仲間はいないけど、自由気ままな一人旅。好きに遊んで難しいクエストをこなして、限定防具を手に入れて。寝る間も惜しんで、遊び尽くしたオンラインゲーム。
まさか夢にまで見たゲームのような世界に来れるなんて夢のようだ! ああ、リオン。早くわたしをギルドに連れて行って! そしてわたしは華々しく、冒険者として旅立つんだ!
目を輝かしながら演説するわたしに、リオンが圧倒されている。
「……どこにでも連れて行く、とはいったけれど。ギルドはちょっと無理かな」
「どうして!」
リオンは苦笑を浮かべながらわたしを見た。
「ギルドは“冒険者”しか入れないんだよ。リラはまだ冒険者じゃない」
「だったら、今から冒険者になる!」
キャラメイク画面では幼い子供のような見た目も作れた。それならば子供のわたしでもなれるはずだ。
なんて、そんなの屁理屈に過ぎないというのにわたしは駄々をこねる子供のようにリオンになんでどうしてと詰め寄ってしまう。
「リラ。君はまだ五歳で幼い子供だよ。おまけに体も弱い。そんな子に冒険者適正があると思うかい?」
「……うっ」
なにも言い返せなかった。
リオンの意見はもっともだ。事実わたしはまだ幼い子供。前世の世界でもまだまだ親に守ってもらう立場の人間。おまけにこんな体が弱いというのであれば、冒険者にはまず向かないだろう。
押し黙り俯くわたしに、リオンは優しく微笑みながら頭を撫でた。
「リラは本当にノエルに憧れているんだね。そんなに焦らずとも、大きくなったら冒険者になればいい。その時は私もリラを応援するよ」
なんて優しい紳士。思わずわたしの胸がきゅんと音がなった気がした。
「……本当に?」
「ああ。だからまずはしっかり体を治そう。今日は領地を軽く散歩するだけにしようか」
こちらをまっすぐ見つめてくるリオンにわたしは頷くしかできなかった。
どうやら異世界転生ものの主人公のように、わたしにはチート能力などのギフトは存在していないようだ。それもそうだ。人生そう簡単にうまく行くわけがないのだから。
あんなに優しくて素敵なお父様と、こんなに紳士的で素敵なお世話係に出会えただけでわたしは恵まれているのだろう。
慌てずともゆっくり行動していけばいい。わたしの人生は始まったばかりなのだから。
「……ねぇ、リオン」
「ん?」
「じゃあ、帰ってきたらアップルパイを作って。リオンのアップルパイは世界一おいしいんだから」
「いいよ。じゃあ、帰ってきたらとびきり美味しいパイを焼こうね」
二度目のおねだりは了承してくれた。
人生はチュートリアルのようにはサクサクとは進まないけれど、ようやくわたしは屋敷の外に出られることになった。
「……冒険者ギルドに?」
わたしの言葉にリオンがぽかんと口を開ける。
「な、なんでまた突然に」
「冒険者になりたいの!」
拳を握り私は声高らかに演説する。
「ずっとずっと憧れてたの。好きなジョブ、かっこいいスキル! 沢山クエストをこなして、モンスターを討伐して、素材とお金を集めて……いい防具を手に入れて、自由気ままに異世界ライフを過ごすのがずっと夢だったの! せっかく剣と魔法の世界にいるんだったら、ゲームの中の世界をリアルで体感したいじゃない!」
「……リ、リラ?」
勢い余って前世の自分が前面に出てくる。
ずっと「ドラゴンズ・サーガ」をソロプレイで遊んでいた。仲間はいないけど、自由気ままな一人旅。好きに遊んで難しいクエストをこなして、限定防具を手に入れて。寝る間も惜しんで、遊び尽くしたオンラインゲーム。
まさか夢にまで見たゲームのような世界に来れるなんて夢のようだ! ああ、リオン。早くわたしをギルドに連れて行って! そしてわたしは華々しく、冒険者として旅立つんだ!
目を輝かしながら演説するわたしに、リオンが圧倒されている。
「……どこにでも連れて行く、とはいったけれど。ギルドはちょっと無理かな」
「どうして!」
リオンは苦笑を浮かべながらわたしを見た。
「ギルドは“冒険者”しか入れないんだよ。リラはまだ冒険者じゃない」
「だったら、今から冒険者になる!」
キャラメイク画面では幼い子供のような見た目も作れた。それならば子供のわたしでもなれるはずだ。
なんて、そんなの屁理屈に過ぎないというのにわたしは駄々をこねる子供のようにリオンになんでどうしてと詰め寄ってしまう。
「リラ。君はまだ五歳で幼い子供だよ。おまけに体も弱い。そんな子に冒険者適正があると思うかい?」
「……うっ」
なにも言い返せなかった。
リオンの意見はもっともだ。事実わたしはまだ幼い子供。前世の世界でもまだまだ親に守ってもらう立場の人間。おまけにこんな体が弱いというのであれば、冒険者にはまず向かないだろう。
押し黙り俯くわたしに、リオンは優しく微笑みながら頭を撫でた。
「リラは本当にノエルに憧れているんだね。そんなに焦らずとも、大きくなったら冒険者になればいい。その時は私もリラを応援するよ」
なんて優しい紳士。思わずわたしの胸がきゅんと音がなった気がした。
「……本当に?」
「ああ。だからまずはしっかり体を治そう。今日は領地を軽く散歩するだけにしようか」
こちらをまっすぐ見つめてくるリオンにわたしは頷くしかできなかった。
どうやら異世界転生ものの主人公のように、わたしにはチート能力などのギフトは存在していないようだ。それもそうだ。人生そう簡単にうまく行くわけがないのだから。
あんなに優しくて素敵なお父様と、こんなに紳士的で素敵なお世話係に出会えただけでわたしは恵まれているのだろう。
慌てずともゆっくり行動していけばいい。わたしの人生は始まったばかりなのだから。
「……ねぇ、リオン」
「ん?」
「じゃあ、帰ってきたらアップルパイを作って。リオンのアップルパイは世界一おいしいんだから」
「いいよ。じゃあ、帰ってきたらとびきり美味しいパイを焼こうね」
二度目のおねだりは了承してくれた。
人生はチュートリアルのようにはサクサクとは進まないけれど、ようやくわたしは屋敷の外に出られることになった。
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