7 / 20
1章「運命の幕開け」
6話 それは目覚めの予兆……?
しおりを挟む
「すごい……」
リオンと一緒に訓練場に足を踏み入れたわたしは目の前の光景に目を瞬かせた。
そこはまさしくゲームなどに出てくる武器の訓練場。
様々な武具があり、広場のようなところには樽や的、カカシなど様々なものが置かれている。
そこでは防具を身に纏ったたくさんの人たちが自身の武器の鍛錬に精を出していた。
「……お嬢! リオンさん!」
その内の一人がわたしたちに気づき、大きく手を振った。
ゲームの初期装備のようなザ・冒険者風の格好をしたお兄さん。きっと冒険者になりたての人に違いない。
「お嬢、体調よくなったんっすね」
彼は剣を納めニコニコとわたしたちに歩み寄ってくる。
その大きな声で他の人たちもこちらに気づいたようで、挨拶がわりに頭を下げていた。
「訓練の邪魔してごめんなさい。どうしても訓練場がみてみたくて、リオンに我が儘いって連れてきて貰ったの」
「私たちはすぐに屋敷に戻るから、気にせず訓練を続けて構わないよ」
優しく部下に声をかけるリオン。
リオンはクランメンバーからも一目置かれているらしく、次々といろんな人から声がかかっている。
その隙にわたしはそっとリオンの側から離れ、訓練場のすぐ傍にある武器がたくさん立てかけてある棚を見た。
「剣に槍、弓、盾……ダガーもある」
そこにはずらりと練習用の武器が並んでいた。
どれもゲームの世界で見たものばかり。もしかすると「ドラゴンズ・サーガ」で見たジョブが多くあるのかもしれない。
「お嬢も興味あるんですか?」
「わっ!」
さっきのお兄さんが後ろからひょこりと顔を覗かせた。
「うん、大きくなったらお父様みたいな冒険者になりたいんだ」
「マスターはオレの憧れなんですよ。オレも早く強くなってSランクの冒険者になるのが夢なんですよ」
お兄さんは優しくわたしに色々な武器を教えてくれた。
ふと訓練場に視線を戻すと、中央にリオンが立っているのが見えた。
「……リオンも戦うの?」
「リオンさんは元冒険者なんですよ。引退した今もこうしてオレらの手合わせとか面倒みてくれてるんです。サブリーダーのフィスさんは怖いんすけど、マスターとリオンさんは好きです」
「へぇ……」
たくさんの人たちが一度にリオンに切り掛かっている。
けれどリオンはシャツの袖を軽く捲り、木刀片手に軽く彼らの攻撃をいなしている。汗一つかかずに最小限の動きで戦う彼の姿は素直に格好良かった。
「ねぇ、リオン! わたしも混ざっていい!?」
手すりから身を乗り出してリオンに声をかけると、彼はぎょっとした表情でこちらを見た。
「ダメだよ! まだリラは病み上がりなんだから!」
「一回だけ! 一回だけだからっ! ねぇっ、お願い!」
声を張り上げてお願いすると、リオンは盛大にため息をついて最後の一人の攻撃をはじき返した。
現役の冒険者十人ほどが束になってもリオンは呼吸一つ乱すことはなかった。
「一度、だけだからね。これが終わったら屋敷に帰るよ! いいね!」
「わかった! ありがとう!」
了承を得ると、わたしは手近にあった木刀を手にリオンの元へ走っていく。
「お嬢、頑張って!」
「ありがとう!」
これで冒険者へ一歩近づける。
わたしは上機嫌に訓練場にたち、リオンと向かい合った。
「リラ、本当にやるのかい?」
「ええ、勿論。紳士に二言はないでしょう?」
「はぁ……本当に我が儘なお嬢様だ。いいよ、さぁ。どこからでも仕掛けておいで」
「思いっきり打ち込んでいいのね?」
「もちろん」
リオンは余裕綽綽といった顔でわたしを見下ろしている。
体格的にも彼に敵うはずがないと分かっているが、こうも明らかに下に見られていると燃えあがってくる。
実際に剣を握るのはこれが初めて。
両手で重い木刀をぎゅっと握り、リオンを真っ直ぐに見つめる。息を吸い、一呼吸つくと思い切り踏み込んだ。
「やあっ!」
リオンに向けて思い切り振り下ろす。
「いい踏み込みだけど、振りが大きすぎる! それじゃあ剣に遊ばれているだけだよ!」
それは軽々とリオンにはじき返されてしまった。
「わっ!」
その衝撃にわたしは思わずよろける。
その瞬間、びりっと脳内に電気のようなものが走った。
「——っ!?」
頭から全身に走る電気のような痺れ。
そして脳内によぎる映像。これは、前世の記憶――いや。前世の七海由良がやっていたゲームの記憶?
最初に選択されているジョブ・剣士。その最初に入手できる攻撃スキル「突進突き」の映像だった。
剣を上段に構え、腰を低く落とす。そして敵目がけて一直線に突進し、剣を突く――。
「あれ……」
目を瞬かせた。
この感覚。体に何かが馴染んだような不思議な感覚だった。
握った木刀がさきほどよりも手に馴染んでいるような気がした。なんだかとても軽い。
「リラ、大丈夫かい? 強く弾きすぎてしまったかな」
リオンが心配そうに見つめている。
慌ててこちらに歩み寄ろうとする彼を、わたしは制した。
「ううん、なんでもないの。リオン、もう一回だけ打ち込んでみてもいい?」
「いいよ。どこからでも、どうぞ」
もしかしたら、もしかして。
わたしはリオンを見据えて、今一度木刀を構えた。
ふっ、と息を止めると手は自然と上に向かい、足が引き、腰が落とされる。これはまさに「突進突き」のモーション。
それはまるで自分の体ではないようで。
敵をロックオンするように、リオンを真っ直ぐ見据えて剣を強く握りしめる。
「———っ」
それを見たリオンの目の色が変わった。
これはいけるかもしれない。そうして足を一歩踏み出そうとした瞬間だった。
「——リオンさん! マスターが!!」
訓練場に大きな声が響いた。
私は驚いて剣を下ろし、リオンを見る。彼も困惑気味に私を見つめていた。
暗雲立ちこめる訓練場。穏やかに続くと思っていたわたしの日常は終わりを告げたのであった。
リオンと一緒に訓練場に足を踏み入れたわたしは目の前の光景に目を瞬かせた。
そこはまさしくゲームなどに出てくる武器の訓練場。
様々な武具があり、広場のようなところには樽や的、カカシなど様々なものが置かれている。
そこでは防具を身に纏ったたくさんの人たちが自身の武器の鍛錬に精を出していた。
「……お嬢! リオンさん!」
その内の一人がわたしたちに気づき、大きく手を振った。
ゲームの初期装備のようなザ・冒険者風の格好をしたお兄さん。きっと冒険者になりたての人に違いない。
「お嬢、体調よくなったんっすね」
彼は剣を納めニコニコとわたしたちに歩み寄ってくる。
その大きな声で他の人たちもこちらに気づいたようで、挨拶がわりに頭を下げていた。
「訓練の邪魔してごめんなさい。どうしても訓練場がみてみたくて、リオンに我が儘いって連れてきて貰ったの」
「私たちはすぐに屋敷に戻るから、気にせず訓練を続けて構わないよ」
優しく部下に声をかけるリオン。
リオンはクランメンバーからも一目置かれているらしく、次々といろんな人から声がかかっている。
その隙にわたしはそっとリオンの側から離れ、訓練場のすぐ傍にある武器がたくさん立てかけてある棚を見た。
「剣に槍、弓、盾……ダガーもある」
そこにはずらりと練習用の武器が並んでいた。
どれもゲームの世界で見たものばかり。もしかすると「ドラゴンズ・サーガ」で見たジョブが多くあるのかもしれない。
「お嬢も興味あるんですか?」
「わっ!」
さっきのお兄さんが後ろからひょこりと顔を覗かせた。
「うん、大きくなったらお父様みたいな冒険者になりたいんだ」
「マスターはオレの憧れなんですよ。オレも早く強くなってSランクの冒険者になるのが夢なんですよ」
お兄さんは優しくわたしに色々な武器を教えてくれた。
ふと訓練場に視線を戻すと、中央にリオンが立っているのが見えた。
「……リオンも戦うの?」
「リオンさんは元冒険者なんですよ。引退した今もこうしてオレらの手合わせとか面倒みてくれてるんです。サブリーダーのフィスさんは怖いんすけど、マスターとリオンさんは好きです」
「へぇ……」
たくさんの人たちが一度にリオンに切り掛かっている。
けれどリオンはシャツの袖を軽く捲り、木刀片手に軽く彼らの攻撃をいなしている。汗一つかかずに最小限の動きで戦う彼の姿は素直に格好良かった。
「ねぇ、リオン! わたしも混ざっていい!?」
手すりから身を乗り出してリオンに声をかけると、彼はぎょっとした表情でこちらを見た。
「ダメだよ! まだリラは病み上がりなんだから!」
「一回だけ! 一回だけだからっ! ねぇっ、お願い!」
声を張り上げてお願いすると、リオンは盛大にため息をついて最後の一人の攻撃をはじき返した。
現役の冒険者十人ほどが束になってもリオンは呼吸一つ乱すことはなかった。
「一度、だけだからね。これが終わったら屋敷に帰るよ! いいね!」
「わかった! ありがとう!」
了承を得ると、わたしは手近にあった木刀を手にリオンの元へ走っていく。
「お嬢、頑張って!」
「ありがとう!」
これで冒険者へ一歩近づける。
わたしは上機嫌に訓練場にたち、リオンと向かい合った。
「リラ、本当にやるのかい?」
「ええ、勿論。紳士に二言はないでしょう?」
「はぁ……本当に我が儘なお嬢様だ。いいよ、さぁ。どこからでも仕掛けておいで」
「思いっきり打ち込んでいいのね?」
「もちろん」
リオンは余裕綽綽といった顔でわたしを見下ろしている。
体格的にも彼に敵うはずがないと分かっているが、こうも明らかに下に見られていると燃えあがってくる。
実際に剣を握るのはこれが初めて。
両手で重い木刀をぎゅっと握り、リオンを真っ直ぐに見つめる。息を吸い、一呼吸つくと思い切り踏み込んだ。
「やあっ!」
リオンに向けて思い切り振り下ろす。
「いい踏み込みだけど、振りが大きすぎる! それじゃあ剣に遊ばれているだけだよ!」
それは軽々とリオンにはじき返されてしまった。
「わっ!」
その衝撃にわたしは思わずよろける。
その瞬間、びりっと脳内に電気のようなものが走った。
「——っ!?」
頭から全身に走る電気のような痺れ。
そして脳内によぎる映像。これは、前世の記憶――いや。前世の七海由良がやっていたゲームの記憶?
最初に選択されているジョブ・剣士。その最初に入手できる攻撃スキル「突進突き」の映像だった。
剣を上段に構え、腰を低く落とす。そして敵目がけて一直線に突進し、剣を突く――。
「あれ……」
目を瞬かせた。
この感覚。体に何かが馴染んだような不思議な感覚だった。
握った木刀がさきほどよりも手に馴染んでいるような気がした。なんだかとても軽い。
「リラ、大丈夫かい? 強く弾きすぎてしまったかな」
リオンが心配そうに見つめている。
慌ててこちらに歩み寄ろうとする彼を、わたしは制した。
「ううん、なんでもないの。リオン、もう一回だけ打ち込んでみてもいい?」
「いいよ。どこからでも、どうぞ」
もしかしたら、もしかして。
わたしはリオンを見据えて、今一度木刀を構えた。
ふっ、と息を止めると手は自然と上に向かい、足が引き、腰が落とされる。これはまさに「突進突き」のモーション。
それはまるで自分の体ではないようで。
敵をロックオンするように、リオンを真っ直ぐ見据えて剣を強く握りしめる。
「———っ」
それを見たリオンの目の色が変わった。
これはいけるかもしれない。そうして足を一歩踏み出そうとした瞬間だった。
「——リオンさん! マスターが!!」
訓練場に大きな声が響いた。
私は驚いて剣を下ろし、リオンを見る。彼も困惑気味に私を見つめていた。
暗雲立ちこめる訓練場。穏やかに続くと思っていたわたしの日常は終わりを告げたのであった。
1
あなたにおすすめの小説
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
見習い動物看護師最強ビーストテイマーになる
盛平
ファンタジー
新米動物看護師の飯野あかりは、車にひかれそうになった猫を助けて死んでしまう。異世界に転生したあかりは、動物とお話ができる力を授かった。動物とお話ができる力で霊獣やドラゴンを助けてお友達になり、冒険の旅に出た。ハンサムだけど弱虫な勇者アスランと、カッコいいけどうさん臭い魔法使いグリフも仲間に加わり旅を続ける。小説家になろうさまにもあげています。
【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?
山咲莉亜
ファンタジー
ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。
だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。
趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?
ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。
※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる