悪役令嬢は訳あり執事に溺愛される

さらさ

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⑦思わぬ出来事

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今日は伯爵家のパーティにお呼ばれの日です。
わたくしはいつもの高いヒールを履いてやって来ました。
ゲームの中ではここでも悪役令嬢がヒロインをいじめるのです。
わたくしは役割を果たすため、朝から何度も記憶をたどってゲームの進行を確認しました。

「これはレイラ嬢、今日はお越しいだだきありがとうございます。」

マイラー伯爵様が私を見つけると寄ってきて挨拶をしてくださる。

「こちらこそ、本日はお招き頂きましてありがとうございます。」

わたくしは淑女の礼をするとニッコリと笑って見せた。

「今日もレイラ嬢はお美しいですね、今日はゆっくりとしていってく下さい。」

そう言うと、ほかの方の挨拶へと行ってしまった。

わたくしはとりあえずシャンパンを受け取ると、何処かくつろげる場所を探して移動する。
歩き始めたと同時に横からどなたかが急いで通り過ぎようと近づいてきて、わたくしにぶつかってしまった。
思い切りぶつかられたので、高いヒールを履いた足がぐにゃりとなり、転びそうになった所をミカに後ろから支えられる。 

「キャ!」

ぶつかった人が悲鳴をあげる。
わたくしは慌ててその人を見ると、わたくしが持っていたシャンパンがその方のドレスに全て掛かってしまっていた。

「申し訳ございません。大丈夫ですか?お怪我はごさいませんか?」

ハンカチを差し出しながら顔を上げたその方を見ると、なんと、リサ様でした!

「冷たーい、ドレスが・・・最悪ー!」

リサ様は悪態をつきながらわたくしを見る。

「も、申し訳ございません。すぐにお化粧室へ行きましょう。」

わたくしは悪役令嬢も忘れて、リサ様をお化粧室へお連れしようと手を差し出した。
けれど、その手は払いのけられる。

「触らないで下さい。レイラ様のおかげでせっかくのドレスが台無しです!」

あきらかに不機嫌さを前面に出して訴えるリサ様。
わたくしは気が動転してしまってどうしていいのか分からない。

「ドレスの事は申し訳ございません。明日にでもマダムリンドール様をお連れ致しますので、お好きなドレスをお仕立て下さい。」

わたくしがオロオロしていると、声を発したのはミカだった。
ミカは私の腰を支えてすぐ横に立っているので、背の高いミカの声が上から降ってくる。わたくしはその声に少しほっとしてしまう。

「そんな事してもらわなくて結構よ。」

リサ様がそう言った直後、周りにざわめきが起きる。
見ると、ヘンリー王子が到着されたようで、こちらに向かってくるのが見えた。

そして、わたくし達を見つけるとこちらに歩いてくる。

「こんばんは、今来た所なんだけど・・・リサ嬢、どうしたの?そのドレス。」

ヘンリー王子がリサ様のドレスに気がついて話しかける。
するとリサ様は顔を赤らめる。

「な、なんでもございませんわ。ちょっとシャンパンを被ってしまっただけです。」

そう言って私の持っているグラスをちらりと見る。

「それは・・・災難だったね、大丈夫?すぐに着替えないと、こっちへおいで、もし良かったらドレスを僕からプレゼントさせてもらうよ。」

「そ、そんな・・・私のような者にもったいないですわ。」

「いいから、遠慮しないでプレゼントさせて欲しいな。」

リサ様がヘンリー王子からの申し出を申し訳無さそうに断ると、ヘンリー王子はリサ様の肩を抱きながら答える。

「はい・・・ありがとうございます。」

リサ様が頬を赤らめながら応えるとそのまま二人はその場を出て行ってしまった。


わたくしはその状況をぼーっとしながら眺めていた。











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