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⑧結果オーライ?
しおりを挟む「お嬢様、今日はもうお暇しましょう。」
ヘンリー王子の姿が見えなくなると、ミカが話しかけてきた。
「え?わたくし今来た所なのよ?」
来て早々にちょっと事件が起こっちゃったけれど、まだ何もしていないわ。
すると、ミカがわたくしを支えていた手を離す。
「では、どうぞ。」
どうぞ?どういう事かしら?ミカの行動が謎すぎるわ。何が言いたいのかしら。
そう思ってミカの方に体を向けようと、一歩踏み出した時、足に衝撃が走り、あまりの痛みに崩れそうになるのをミカに支えられる。
「足が痛いわ、何?」
「先程おみ足を挫かれたのではないですか?」
そういえば、さっきリサ様とぶつかった時に足がぐにゃりとなったわ。
これでは歩けないし、立っているのも辛い・・・
「そうね、今日は帰りましょう。」
「お嬢様、フロアを出るまでお一人で頑張れますか?」
ミカは気遣わしげにわたくしを見る。
わたくしにはその意味が直ぐにわかった。
そうね、使用人に寄り添って、腰を抱かれて歩くなんて令嬢として、ヘンリー王子の婚約者として出来ないわね。
まして、足を怪我したなんて言うと大騒ぎになってしまうわ。
「大丈夫よ。」
そう言ってわたくしは、痛みに耐えつつも顔には出さないよう、伯爵様に退席のあいさつをすると、フロアから出る為にゆっくりと歩いた。
なんとか人のいない所まで来て、ほっと一息着いていると、少し後ろを歩いていたミカがわたくしの腰を支えて「失礼します」と短く言うと、そのまま抱き上げられた。
「ミ、ミカ!まだ誰が来るかわからないわ!」
「大丈夫です。来る前にお嬢様を馬車までお連れします。少し揺れますので捕まっていてくださいますか?」
そう言うと、ミカはわたくしを抱き上げたまま走り出した。
わたくしは慌ててミカの首に腕を回して抱きつく。
わたくしを軽々と抱き上げて走るなんて、いつの間にミカはこんな力持ちになったのかしら。
息がかかりそうなくらいすぐ近くにあるミカの横顔は端正な顔立ちを涼しげに保ったままだ。
ミカは出会った時と変わらず、天使のように綺麗な顔なのよね・・・
すぐに馬車までたどり着いて、私を抱いたまま乗り込むと、わたくしを椅子に座らせてにっこり笑って、わたくしの頭を撫でる。
「よく頑張りましたね。」
その行動に、張っていた気が少し抜けてふにゃりと微笑むと、次の瞬間、ミカは片膝をついて頭を下げる。
「申し訳ございません。お嬢様にお怪我をさせてしまいました。」
「何を言ってるの?ミカのせいではないわ。わたくしの不注意でぶつかってしまったのよ?」
「お嬢様のせいではございません。私が防がなければいけませんでした。」
顔を上げてわたくしを見るミカは、本当に誠実な表情で、わたくしのことを心配してくれているのが分かる。
ミカの綺麗な顔がわたくしのせいで台無しだわ。
「大丈夫よ、ミカは気にしないで。」
ミカはにっこり笑うわたくしを見ると、そっと目をふせてわたくしの足を見る。
そっとヒールを外してくれるけれど、痛みにビクッとなる。
「申し訳ございません。赤く腫れ上がっていますね、お屋敷に戻ったらすぐに冷やしましょう。」
「ええ、ありがとう。」
お屋敷に戻ると、ミカはわたくしを抱いてすぐに部屋まで連れてきてくれて、その間もメイドにいろいろ指示を出していたので、部屋に到着すると氷水と薬が用意されていた。
「申し訳ございません。無理をさせてヒールのまま歩かせてしまいましたので、悪化していますね。足を包帯で固定しますので、横になっていただけますか?」
そう言ってベッドにそっと寝かせてくれる。
そして足をクッションで高くして包帯を巻いた後、氷袋で足を冷やしてくれる。
足が熱を持っていたのか、ひんやりと気持ちいい。
「冷たいわ。」
「少し我慢してくださいね、しばらく冷やしたらお召変えしましょうね。」
ミカが優しく足に氷袋を添えながらドレス姿の私を見て言う。
「うん、分かったわ。」
そしてしばらく冷やしてから一度ルームウェアに着替えると、またミカが氷で足を冷やしてくれる。
それにしても、リサ様は何を急いでいらっしゃったのかしら。わたくしも気が付かなくてぶつかってしまって、シャンパンを掛けてしまって・・・本当に申し訳無いことをしてしまったわ。
わたくしはぼーっと今日の出来事を考えていて、ふと我に返る。
あ、・・・
あれはゲームの中のワンシーン?
レイラがヒロインにシャンパンをぶっ掛けるシーン・・・
あれだわ。あれだけ記憶を辿って予習していたのに、すっかり気が動転して忘れていたわ。
ああ、わたくし、あの時言うべきセリフを言えてないわ。「わたくしのヘンリー王子様に近付かないでちょうだい!」って言わなきゃいけなかったのに、一緒に退席させてしまったわ。
・・・でも、ヘンリー王子とヒロインが仲良くなるのはいいことよね、なんかちょっとゲームの中と違う気がするけれど、結果オーライかしら?
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