10 / 44
⑩甘やかされてます
しおりを挟むあの後ミカはお父様に訳を説明して、私を守れなかったことを謝っていたけれど、お父様は身の丈に合わない高いヒールを履いていたわたくしも悪いと言って、そんなにミカを攻めなかったのでほっとした。
けれど、ミカは自分の気が治まらないのか、わたくしの足が治るまで甘々に甘やかしてくれた。
朝起きると、お着替えはベッドの上で腰かけたまま、そのまま洗顔して、朝食はミカにお姫様抱っこでお父様達の待つ部屋まで連れていってくれる。
食べ終わると、またミカにお姫様抱っこで部屋まで戻ってきて、ベッドに降ろされるとそのままミカが足を冷やしたり、マッサージをしたりしてくれる。午前中はベッドの上で過ごして、昼食後はお庭にミカにお姫様抱っこで連れてってもらったり、読書をしたりして過ごして、夜はまた寝る前にミカが足を冷やしてくれる。
一生分のお姫様抱っこをしてもらったんじゃないかしら。
わたくしの足はかなり酷かったらしく、二週間は歩くことが出来なかった。二週間経ったくらいから少しずつ歩けるようになったけれど、まだ痛い。ミカは常にわたくしの手を取り、わたくしを支えて負担がかからないよう歩いてくれる。
本当に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
ミカはとてもいいお嫁さんになるんじゃないかしら。
顔はとても綺麗だし、身長は確か183って言ってたかしら。お嫁さんにしては高すぎるわね・・・
わたくしが152センチなので約三十センチも身長差があるのね・・・
スラリとしていて綺麗なミカは目立つのよ。気位の高いご令嬢方は気にはなっても、使用人でしかないミカに興味は無いようだけれど、大半のご令嬢方はチラチラと見ているのを知っている。
ミカは時々眼鏡をかけたりして、出来るだけ目立たないようにしているけれど、敏感なご令嬢は気がついているし、おじ様達からも狙われているのを知っているわ。
わたくしのミカに変な事しようとしたらわたくしが許さないんだから!
「レイラお嬢様、どうかなさいましたか?」
庭園でお茶をしながらぼーっとしていたわたくしに、ミカが話しかけてくる。
変な事考えてたのがバレたのかしら?
「な、なんでもないわよ。」
慌てて答えたけれど、ミカが怪訝な顔で見ている。
「疲れましたか?」
ミカはどうやらわたくしが疲れてしまったと勘違いしているようで、心配そうに顔を覗き込んでくる。
これは、そういうことにしておいた方がいいわね。
「そうね、少し疲れちゃったわ。」
「では、お部屋に戻りましょうか。」
そう言ってわたくしを抱っこしようとする。
「ミカ、わたくし歩けるわよっ、」
「お疲れなのにご無理なさってはいけません。」
そう言ってまたお姫様抱っこされてしまった。
ミカの首に捕まりながらミカの顔をすぐ近くで見るのは恥ずかしいのだけれど、とても好きな事に最近気が付ついた。
グレーの髪の間から除くサファイアブルーの瞳は本当に綺麗で、その瞳を覆い隠すような黒く長い睫毛も色っぽくて、ずっと見ていたくなるくらい美しいの。
ヘンリー王子のコバルトブルーの瞳も綺麗だけれど、ミカの瞳の方が引き込まれそうな感じがする。
「私の顔になにか付いていますか?」
わたくしがマジマジと見ていると、不意にミカがわたくしの方を向いて言った。
顔がとても近くて、わたくしは顔が赤くなるのを感じて、隠そうと俯いて目をそらす。
「ん?どうしました?」
「なんでもないわ。」
「そうですか?」
ミカは何か気がついているのかもしれないけれど、その後は何も聞かなかったので、ほっと胸を撫で下ろす。
なんだかいけない事をしていた気分だわ。
0
あなたにおすすめの小説
転生した女性騎士は隣国の王太子に愛される!?
桜
恋愛
仕事帰りの夜道で交通事故で死亡。転生先で家族に愛されながらも武術を極めながら育って行った。ある日突然の出会いから隣国の王太子に見染められ、溺愛されることに……
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
急に王妃って言われても…。オジサマが好きなだけだったのに…
satomi
恋愛
オジサマが好きな令嬢、私ミシェル=オートロックスと申します。侯爵家長女です。今回の夜会を逃すと、どこの馬の骨ともわからない男に私の純潔を捧げることに!ならばこの夜会で出会った素敵なオジサマに何としてでも純潔を捧げましょう!…と生まれたのが三つ子。子どもは予定外だったけど、可愛いから良し!
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる