悪役令嬢は訳あり執事に溺愛される

さらさ

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⑭今日は甘えたいのです。

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「レイラお嬢様、おはようございます。今日はジェフリー公爵様のパーティーにご出席予定ですが、午後から準備を始めても充分間に合うでしょう。午前中いかがなさいますか?」

昨夜は少し怖い事があったのでなかなか寝付けなかったので、わたくしは寝不足気味でぼーっとしていた。

「レイラお嬢様?もう少しお休みになられますか?」

ミカが気付いて優しく話しかける。

「ごめんなさい。昨夜はちょっと寝付けなくて・・・もう少しゆっくりさせて頂くわ。」

「無理もございません。ではホットミルクをお持ちしますのでもう少しお休み下さい。」

そう言ってミカが部屋を出ていくのをぼーっと眺めていた。

ミカは賢くて頭の回転も早いからお父様のお仕事のお手伝いもよくしている。それに昨日のように腕も相当な物で、小さい頃はミカが剣の先生に教わっているのをよく見ていたけれど、あっという間に上達して、先生も勝てなくなってしまった。
だからお父様もミカがわたくしのそばにずっと居ることを何も言わない。
わたくしもミカに頼ってばかりだけれど、ミカは疲れないのかしら。ちゃんと睡眠は取れているのかしら。

考え事をしていると、コンコンとドアが鳴りミカが入って来た。手に持ったトレーの上にはホットミルクが乗っている。

「ホットミルクをお持ちしました。これを飲んだら少しお休みください。」

わたくしは差し出されたカップを受け取る。
カップが暖かくて、ミルクの香りが心までほんわか暖かくしてくれる。

「ありがとう。ミカは疲れてないの?大丈夫?」

カップを両手で持ってちびちびミルクを飲みながら尋ねる。

「大丈夫ですよ、私は少しの睡眠でも回復出来る身体なので問題ありません。」

そうね、ミカはいつも遅くまで起きているようだけれど、わたくしよりも早く起きて元気に活動してるのよね、眠そうにしてる所なんて見たことないわ。

「そうなの?羨ましいわ。わたくしはちゃんと寝ないと眠くて・・・」

「その方が健康的で良いですよ。飲み終わったら少し横になってくださいね。」

「うん。」

わたくしは飲み終わったカップをミカに渡すとベッドに横になった。

「ミカ、待って。」

しばらく目を閉じていたけれど、出ていこうとするミカの気配に、わたくしは慌てて呼び止める。

「どうされました?」

ミカがベッド脇まで戻ってくる。
わたくしはベッドの端をぽんぽんと叩いてミカに座るよう促す。

「わたくしが起きるまでここに居てくれない?」

わたくしの言葉に、ミカはベッドの端に座りながら答える。

「小さな子供みたいですね、悪役令嬢らしくありませんけど?」

「今日はいいのよ!ミカも少し休んで欲しいの。」

「分かりました。ゆっくりお休みください。」

ミカはそう言いながらわたくしの頭をゆっくり撫でてくれる。

ミカはわたくしの使用人として尽くしてくれるけれど、お父様に聞いた事がある。
ミカは記憶を失っているけれど、教養があって剣の心得もある。何処かの貴族のご子息だろうって言っていた。けれど、貴族の間で子供が行方不明になったなんて話が出てこなかったみたい。
だからお父様はわたくしがここの子になればいいのよって言った時、見つかるまではここの子で良いと思っみたい。
でも、ミカはその申し出を断った。
そして、使用人として働きたいと言ってくれた。
ミカの事が心配で仕方なかったわたくしはそばに居てくれるならそれでいいと思った。
でも、わたくしはミカに無理をさせているんじゃないかしら・・・
剣の先生から王国騎士団に入ってくれって誘われたりもしていたけど、騎士団に入ったら使用人なんて仕事しなくていいのに、ミカはその申し出を断った。
ここに居たいと言ってくれた。
わたくしはそれが嬉しかったけれど、ミカはそれでいいのかしら・・・

色んなことを考えているうちにわたくしはまどろみの中へ落ちていった・・・





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