13 / 44
⑬天使の護衛(ミカエル)
しおりを挟む今日はレイラお嬢様はミルフォード公爵令嬢のアンナ様のお茶会にお呼ばれされている。
俺はお嬢様の座る席の後ろで待機している。
時折チラチラとご令嬢からの視線を感じるが、基本無視だ。
アンナ嬢はレイラお嬢様とは同じ侯爵令嬢なのにレイラお嬢様を立ててくださる。見た目は・・・
アンナ嬢はレイラお嬢様を立てるふりをして他のご令嬢を捲し立ててレイラお嬢様の悪役令嬢の演技に便乗している。俺はそう見ている。
アンナ嬢の狙いは恐らくヘンリー王子だろう。
レイラお嬢様が失脚すれば、身分共に申し分ない自分に婚約者の話が回ってくるとでも思っているのだろう。
レイラお嬢様はお優しいのでそんな疑いは全く持っていらっしゃらないようだが・・
アンナ嬢の誤算はレイラお嬢様が婚約破棄を望まれていることだろう。アンナ嬢が陥れているつもりかもしれないが、実はレイラお嬢様の悪役に徹しきれない悪役令嬢っぷりを手伝っているだけなのだ。
まぁ、レイラお嬢様に実害が及びそうな事は阻止させてもらうが、今は泳がせている。
女性というのはある一点に意見が一致するととてもおしゃべりになるようで、さっきから会話が止まない。お嬢様はついて行けず、とりあえず相づちを打っている感じで可愛らしいけどな。
しばらく会話は続き、終わったのは日が暮れ始めた頃だった。
お屋敷までの道のりでレイラお嬢様はリサ嬢を心配されていた。ならば悪役令嬢なんてしなければいいのに・・・と思ってしまうが、レイラお嬢様がしたい事なので何も言わない。
俺が心配なのはお嬢様が巻き込まれて傷つかないかという事だけだ。
馬車は暫く走り、森に差し掛かった頃、急に馬車が大きな音を立てて止まる。
急に止まった勢いで椅子から投げ出されそうになるお嬢様を片手で受け止めて、俺はもう片方の手を剣に伸ばす。
外から馬の嘶きと、人の争う声、剣がぶつかり合う声が聞こえる。明らかにこの馬車が何者かに襲われている。
この馬車をグレイシス家の物と知っての事なのか、行きずりの犯行なのか、分からないがお嬢様の名を知られるわけにはいかないな・・・
「お嬢様、ドアを開けますので私の後ろに付いていてください。」
俺はそう言うと勢いよくドアを開けた。
ざっと外を見渡すと、見えるだけで七人の男がいる。御者と護衛は・・・殺られてしまったようだ。
下衆がお嬢様を渡せとか汚い声で叫んでいる。
その汚い声に反応して、レイラお嬢様が俺の服をぎゅっと掴む。レイラお嬢様に嫌な事を聞かせてしまったな・・・
「お嬢様、しばらくここで動かないでください。絶対出ないでくださいね。」
俺はレイラお嬢様を見ると笑顔で安心するよう笑って見せてから、馬車を降りた。
「お嬢様を渡す?そんな事するわけないだろう。」
「お、偉く綺麗な兄ちゃんだな!お前も侵して売ってやろうか!」
俺を見た男達が目をギラギラとさせながら口汚く笑う。
俺は男達を前にため息を吐く。
「目の前に居る相手の力量も分からんとは・・・下衆が。」
これ以上汚い言葉をレイラお嬢様に聞かせるな!
俺は剣を振るいながらもレイラ嬢様の居るドアの前からはほとんど動くことなく、レイラお嬢様に俺が切った奴らを見せないように立ち回る。
全部片付け終わると、レイラお嬢様の方に振り返り、笑顔で安心させる。
「お嬢様、お待たせ致しました。お怪我はございませんか?」
するとレイラお嬢様が「終わったの?」と聞いてくる。その声は明らかに緊張で上擦った声だ。
お嬢様は人の生き死にに敏感で、すぐに心を傷められる方だ。盗賊とはいえ、何か思うところがあるのだろうが、そのことは口に出さない。
本当は怖いだろうに、平気なフリをする気丈なお嬢様だ。
「前のお二人は?無事なの?」
前に乗っていた二人を心配するレイラお嬢様。
とにかく、このままここに居るのは危険だ、すぐに動かなければ。
「お二人は・・・助けられませんでした。今から私が馬車を操舵して帰りますので、お嬢様は中に居てくださいね。」
「そう・・・」
レイラお嬢様の不安が伝わってくる。
きっと俺と離れて一人室内にいるのが怖いのだろう。
けれど、どんな攻撃が来るかわからない以上、御者の席にレイラお嬢様を座らせる訳にはいかない。
「おひとりでは怖いのですか?」
俺はずるい手を使ってレイラお嬢様の要望に答えるわけにはいかない事を暗に言ってみる。
「だ、大丈夫よ!」
レイラお嬢様は予想通りの答えを口にする。
「お屋敷までよろしくね。」
ニッコリ笑った顔はやはりまだ不安がかげる笑顔だったが、レイラお嬢様は俺が陽動した事を解っていて微笑んでいらっしゃるんだ。
俺はレイラお嬢様の頭を優しく撫でた。
「しばらくの辛抱ですので、我慢してくださいね。」
そう言って俺は馬車の扉をゆっくり閉めた。
とりあえず今は一刻も早くレイラお嬢様をお屋敷までお連れする事が先決だ。
盗賊が何故、この馬車の中にお嬢様が乗っている事を知っていたのか、気になる事はあるが・・・調べるのは後だ。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ
しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”――
今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。
そして隣国の国王まで参戦!?
史上最大の婿取り争奪戦が始まる。
リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。
理由はただひとつ。
> 「幼すぎて才能がない」
――だが、それは歴史に残る大失策となる。
成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。
灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶……
彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。
その名声を聞きつけ、王家はざわついた。
「セリカに婿を取らせる」
父であるディオール公爵がそう発表した瞬間――
なんと、三人の王子が同時に立候補。
・冷静沈着な第一王子アコード
・誠実温和な第二王子セドリック
・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック
王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、
王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。
しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。
セリカの名声は国境を越え、
ついには隣国の――
国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。
「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?
そんな逸材、逃す手はない!」
国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。
当の本人であるセリカはというと――
「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」
王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。
しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。
これは――
婚約破棄された天才令嬢が、
王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら
自由奔放に世界を変えてしまう物語。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~
小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。
そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。
幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。
そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――?
「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」
鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。
精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
【完結】捨てられた皇子の探し人 ~偽物公女は「大嫌い」と言われても殿下の幸せを願います~
ゆきのひ
恋愛
二度目の人生は、前世で慕われていた皇子から、憎悪される運命でした…。
騎士の家系に生まれたリュシー。実家の没落により、生きるために皇宮のメイドとなる。そんなリュシーが命じられたのは、廃屋同然の離宮でひっそりと暮らすセレスティアン皇子の世話係。
母を亡くして後ろ盾もなく、皇帝に冷遇されている幼い皇子に心を寄せたリュシーは、皇子が少しでも快適に暮らしていけるよう奮闘し、その姿に皇子はしだいに心開いていく。
そんな皇子との穏やかな日々に幸せを感じていたリュシーだが、ある日、毒を盛られて命を落とした……はずが、目を開けると、公爵令嬢として公爵家のベッドに横たわっていた。けれどその令嬢は、リュシーの死に因縁のある公爵の一人娘……。
望まぬ形で二度目の生を享けたリュシーと、その死に復讐を誓った皇子が、本当に望んでいた幸せを手に入れるまでのお話。
※本作は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さんにも投稿しています。
※表紙画像はAIで作成したものです
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる