悪役令嬢は訳あり執事に溺愛される

さらさ

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⑯意外な展開

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わたくしはおふたりから離れた場所で席を見つけると、そこに腰を下ろした。
ミカがすかさず飲み物を手渡してくれる。

「ありがとう。まさかあんなアップテンポな曲を踊る事になるなんて思わなかったわ。」

「ええ、そうですね・・・」

しばらくそこで休んでいると、三人のご令嬢が近付いてきた。

「レイラ様、ごきげんよう。」

話しかけて来たのは先日アンナ様の所でご一緒したご令嬢、わたくしの取り巻きさん達です。

「あら、ごきげんよう。」

「今日もレイラ様はお美しいですね。」

「まぁ、ありがとうございます。」

「レイラ様、ヘンリー王子様には会われまして?リサ様がずっとそばに居ますのよ!」

一人がわたくしに告げ口するように訴えてくる。

「そうなのです!ヘンリー王子様はレイラ様のご婚約者様ですのに!」

もう一人もぷんぷん顔で訴える。

ええ、存じてます。お二人仲がいいのは嬉しいことなのですけど・・・悪役令嬢なら本当はあの場から逃げてはダメだったのよね。

「ええ、そうなの、さっきご一緒でしたけれど、わたくしより仲が良さそうでしたわ。」

ちょっと怒ってるっぽく言ってみる。

「まぁ、レイラ様を差し置いて何様かしら!」

「ご自分の立場をわきまえない方って本当に嫌ですわね!」

ご令嬢方が口々にリサ様の悪口を言い合う。
女子はこういうお話大好きね、
でも、ヘンリー王子がリサ様と仲良くするのはいい事だと思いつつも、少し寂しさもあったので、わたくしの気持ちをわかって頂いているようで、嬉しくなる。

「レイラ様、ごきげんよう。」

わたくし達の輪の中にアンナ様が入って来た。

「アンナ様、ごきげんよう。」

「レイラ様、先程はとても素晴らしいダンスでしたわ!足はもう大丈夫ですの?」

アンナ様がわたくしを気遣ってくださる。

「まあ、見ていらっしゃったのね、お恥ずかしいわ。実はまだ少し違和感があって・・・今こうしてお休みさせていただいておりますの。」

「まぁ、そうでしたか、ヘンリー王子様とリサ様を二人にして居なくなられたので、どうしてかと思いましたわ。」

アンナ様は怪訝そうな顔をしていたけれど、少し納得したように微笑む。

「でも、リサ様がヘンリー王子様を独り占めされていましたわよ!レイラ様がいらっしゃるのだからご自分は身を引かれるべき立場なのに!」

確かに、婚約者のわたくしが来たのだからリサ様の方が遠慮して席を外されるべきなのだろうけれど、わたくしはお二人に仲良くなってもらいたいので、そこは気にしませんわ。

「そうね、でも、今日はしょうがないわ。わたくしが自ら席を外したんですもの。」

わたくしは素直に負けを認める。

「レイラ様が席を外される必要ございませんのに・・・」

アンナ様が話の途中で声を窄める。
何故かしら?と思ってアンナ様が見ている方向を見ると、ヘンリー王子がこちらに向かってくるところだった。後ろには何故かリサ様も付いてきている。

「レイラ嬢、ここに居たんだね、探したよ。」

ヘンリー王子が慌ててわたくしに話しかける。
わたくしの周りに居た取り巻きさん達は少し距離を空けてわたくし達を見る。

「どうかされましたか?」

「レイラ嬢、さっきは無理させてごめん。ジェフリー公爵から聞いたよ、足を痛めていたんだって?ダンス辛かったろう。」

ヘンリー王子はジェフリー様からわたくしの事を聞いてわざわざ謝りに来てくださったの?

「まぁ、わざわざそれを言いに?お気遣いありがとうございます。大丈夫ですわ。」

ヘンリー王子がわざわざ探してまで来てくださったことが嬉しくて、自然と笑顔になる。

「イスに座ってるって事は辛かったんだね、気が付かなくてごめんよ。」

「わたくしも言いませんでしたし、ヘンリー王子様が謝ることではございませんわ。」

ヘンリー王子はやっぱりお優しい方だわ。
こんな方を怒らせて婚約破棄まで持って行けるのかしら・・・

「なら、今日はレイラ嬢をお送りさせてくれ。しばらく休んだら立てる?」

そう言ってわたくしに手を差し出す。

「そんな、ご迷惑おかけ出来ませんわ。」

わたくしは断ったけれど、ヘンリー王子の意思は固く、わたくしの意見は取り入れられずに送って頂くことになりました。
ヘンリー王子に手を引かれ、腰を抱かれながら歩く私の姿をリサ様が悔しそうに見ていらっしゃるのが目に写って、申し訳なく思いつつも、わたくしはその場を後にした。
こんなはずじゃなかったのだけれど・・・










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