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⑱レイラの決意
しおりを挟むヘンリー王子様に家まで送って頂いたのは初めてだったけれど、ヘンリー王子は紳士的でとても優しい方です。
ゲーム通りなら後半年で婚約破棄されなければいけないのだけれど、大丈夫なのかしら。
今日の事はシナリオにはないと思うのだけど・・・
わたくし、失敗していないかしら。
「レイラお嬢様、どうかなさいましたか?」
お屋敷に戻ってからアールグレイのミルクティーが飲みたくなって、入れてもらったお茶を飲みながらぼーっと考え事をしていたら、ミカが話しかけてくる。
ベルガモットの爽やかな香りが心を落ち着けてくれる。
「ねぇミカ、わたくしは悪役令嬢出来てないのかしら・・・きっと今日の出来事はシナリオにはない事なんだけど、ヘンリー王子様はどう思われたのかしら。」
「正直、ヘンリー王子の思いは分かりかねます。リサ嬢と、仲良くされているのも確かですが、レイラお嬢様の事を憎まれるような感じではございません。」
ミカは正直に答えてくれる。
ミカの人を見る目は信頼出来る。
ミカもわからない事があるんだ・・・
「うーん・・・わたくしもっとリサ様を虐めないといけないわよね。」
そうよ、わたくしの押しが甘いから変な展開になるんだわ。
「レイラお嬢様はそのままでいいと思うのですが・・・」
ミカが遠慮がちに褒めてくれる。
「それではダメよ。わたくしの行動が違ったせいで国が滅んだりしたらどうするの?」
「それはないと思うのですが・・・」
ミカは否定するけれど、何が起こるかわからないと思うと怖くて、わたくしは悪役令嬢として婚約破棄されなければと思ってしまう。
真剣に悩んていると、ドアをノックする音がしてお父様が入って来た。
「失礼するよレイラ、今からミカエルを少し貸してくれないかい?」
またいつものお父様のお手伝いね。
「お父様、良いわよ。ミカ、行ってらっしゃい。」
わたくしは手をフリフリしながらミカにお父様の所に行くように促した。
「では、失礼致します。」
ミカはそう言うとお父様と一緒に出て行った。
わたくしは一人になったので、前世の記憶の中のゲームのストーリーをもう一度思い出していく。
ヒロインが攻略する相手は全部で五人。わたくしはヒロインでは無いので、その内の二人とは面識がなくて、レイラが絡むのはヘンリー王子とジェフリー公爵様のお二人、もう一人、ヘンリー王子の弟君のエドワード王子も顔見知りではあるけれど、それ程お話をしたことがないので、ほとんど知らない。
ゲームの中ではジェフリー公爵様とレイラは仲が良かったのよね、リサ様はジェフリー公爵様に好意を抱いている感じは見受けられないし、他の方と接触されているのかもしれないけれど、今の所ヘンリー王子ルートが濃そうよね、ならばわたくしは婚約破棄されるのが筋よね。
そうしてわたくしは決意を新たにする。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その頃ある場所では・・・・・・
「かなり危険な状態ですよ。」
「もう少しだけ待ってくれ、まだ早い。」
「・・・動くべき時に動かなくては後悔する事になりますよ。」
「分かっている。いつでも動けるよう準備はしておいて欲しい。」
「それは理解しています。すぐに決断しなくてはいけない時がもう、すぐに来るでしょう。」
「ああ、・・・その時はレイラ嬢にどう話すかな・・・」
ーーーレイラの知らない所でそんな会話が繰り広げられていたーーー
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