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㉕グレイシス侯爵様との対面(ミカエル)
しおりを挟むレイラお嬢様の身支度が整うと、お嬢様と共にダイニングルームへと向かう。
「おはようございます。お父様、お母様。」
レイラお嬢様は部屋を入ると、すでにいらっしゃっていたグレイシス侯爵様と奥様に挨拶をし、俺も後ろで頭を下げる。
「まぁ、!レイラ、大丈夫なの?」
奥様がレイラに駆け寄ってきてあちこち触って確かめる。
「お母様、大丈夫ですわ。」
レイラお嬢様がにっこり笑ってみせる。
「酷いことをされたんじゃなくて?」
奥様が心配そうにレイラお嬢様を見る。
「ちょっとドレスを破られただけです。ミカが助けてくれたので大丈夫でしたわ。」
お嬢様はなんでもない事のように言うけど、恐怖はそう簡単には消えない。無理をしているのは分かる。
「無事でいてくれて良かったわ。」
奥様がレイラお嬢様を抱きしめる。
「お母様、・・・」
その温もりに、レイラお嬢様は涙があふれるのをぐっと堪えているようだった。
「レイラ、昨夜は眠れなかったんじゃないかい?大丈夫かい?」
グレイシス侯爵様が心配そうに尋ねる。
それ、聞かないで下さい。グレイシス侯爵様。
俺は一瞬息を飲む。
「ミカが付いていてくれたので、ぐっすり眠れたわ。だから元気よ。」
レイラお嬢様は無邪気にありのままを話す。
やっぱり、レイラお嬢様は全然悪気が無いので話すよな・・・
「ミカエルが?」
グレイシス侯爵様がチラリと俺を見る。
「一晩中一緒に居たのか?」
「そうよ、ミカが手を繋いでいてくれたので、安心して眠れたわ。」
レイラお嬢様!そこまで言わなくても!
それを聞いたグレイシス侯爵様がまた俺を見て、目で訴える。
「そうか、良かった。ミカエルが居てくれると安心だな。」
グレイシス侯爵様、笑顔でレイラお嬢様に話しかけてるけど、目が笑ってないぞ!
そして、グレイシス侯爵様が俺に何を言いたいのかも、だいたい想像がつく。
分かっている。言われなくてもそのつもりだ。
俺は心の中で呟く。
その後はいつもの食卓と変わりなく、和やかな朝食となった。
お嬢様が部屋に戻られる時、グレイシス侯爵様が俺に話しかける。
「ミカエル、後で私の執務室に来てくれ。」
お呼び出しか・・・
「分かりました。後程向かわせて頂きます。」
俺はそう言うと、一礼をしてその部屋をレイラお嬢様と共に退出した。
レイラお嬢様と一緒に書庫に行って、何冊かお嬢様が見繕われると、一緒にお部屋に戻る。
レイラお嬢様をお部屋まで送り届けると、俺はレイラお嬢様に一言告げて、グレイシス侯爵様の部屋へと向かった。
「失礼致します。」
中に入ると、グレイシス侯爵様は執務机ではなく、テーブルセットの椅子に座って俺を待っていた。
「ミカエル、まぁ、座ってくれ。」
侯爵様は俺を向かいの席に座るよう促す。
あれ?お小言では無いのか?
俺が座るのを待ってグレイシス侯爵様が話し出す。
「さて、昨晩のことだが・・・どういう事かな?」
やっぱりそれか!
「レイラお嬢様に手を繋いでいて欲しいとお願いされまして、お傍についていました。申し訳ございません。」
「一晩中?」
グレイシス侯爵様が追い討ちの質問をなげかける。
「はい。」
俺は素直に頷く事しかできない。
「私はミカエルのことは信じているが、未婚の男女が同じ部屋で一晩過ごすというのはどういう事か、解らんミカエルでもあるまい。まして、レイラはヘンリー王子の婚約者という立場なんだぞ。変な噂でも流れたらどうするつもりだ?」
「はい、ご最もです。大変軽率な行動だったと思っております。」
やっぱり怒るよな。
大切な娘に変な噂が流れたら取り返しがつかない。
まして、ヘンリー王子に言い訳が立たない。
「まぁ、・・・私が言いたいことは分かってるな?」
グレイシス侯爵様はさっきまでの疑う目付きから、イタズラな目付きに変わって俺を見る。
「はい。言われなくても、元よりそのつもりですのでご安心を。」
「なら安心だな。」
このタヌキ親父め、最初からその言葉を待っていたんだろう。グレイシス侯爵様は満足そうに微笑む。
「さて、今後のレイラについてだが、しばらく外出を控えた方がいいか・・・しかし、四日後にはヘンリー王子との面会がある。今回は体調不良で休ませるか・・・」
タヌキ親父・・・失礼、グレイシス侯爵様が真剣な表情に変わり、今後の事を考え始める。
「その事なのですが、犯人が分かるまで、レイラお嬢様をお屋敷から出さないのは簡単ですが、犯人の目的が掴みにくくなります。ここは、ヘンリー王子にもお話して協力頂いた方が良いかと。」
「そうだな、この前のヘンリー王子のように、誰かに送って頂いたら襲われないかもな・・・」
グレイシス侯爵様は何かをしばらく思案しているようだったが、思い至ったように話し出す。
「うん、この件、ジェフリー公爵様に相談するか、一緒に送っていただく方が王族の方が、襲われにくいだろう。もちろん、警戒を怠る気は無い。それに、ジェフリー公爵様はレイラの事をお気に召していただいているようだしな。」
「そうですね、ヘンリー王子が目的の場合、ヘンリー王子に警戒されると、犯人は出てこない可能性もありますね。」
グレイシス侯爵様もジェフリー公爵様のことは気がついていたか、レイラお嬢様に危害を加える様なことはなさらないと分かっているからこその人選だな。
「では、明日ジェフリー公爵様にお目通り出来るよう、手配しておいてくれ。」
「畏まりました。」
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