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㉗ジェフリー公爵との密会(ミカエル)
しおりを挟む翌日、俺が取り付けたスケジュールで、グレイシス侯爵様はジェフリー公爵様に面会される為、出かけられた。
その時、グレイシス侯爵様に俺も来るよう言われてご一緒させて頂くことになった。
ジェフリー公爵様のお屋敷に到着すると、俺たちは応接室に通された。
俺はグレイシス侯爵様の傍使えという立場で来ているので、グレイシス侯爵様が腰掛けられた椅子の後ろに立つ。
「ジェフリー公爵様、本日は急な申し出を快く受けて頂きましてありがとうございます。」
グレイシス侯爵様が挨拶をする。
「そんなに畏まらないでください。グレイシス侯爵。私に相談と言われると、私にもお役に立てる事があるのかと嬉しくなってしまいます。」
ジェフリー公爵様が謙遜してにこやかに笑う。
このお方は王族なのに、そんな事鼻にかける様子もなく、本当に謙虚な方だな。
「それで?私に相談とは?」
ジェフリー公爵様が改まって聞く。
「実は、うちの娘が何者かに襲われまして・・・」
「レイラ嬢がですか?」
ジェフリー公爵様が驚きの声を上げる。
「大事には至らなかったのですが、襲われたのは一度ではないのです。」
「あのお可愛らしいレイラ嬢が・・・それは許せませんね、で、犯人の心当たりは?」
「それが、まだ調べている最中なのですが、恐らく、レイラとヘンリー王子との婚約関係を壊そうとしているように思うのです。」
「それは・・・」
グレイシス侯爵様の言葉に、ジェフリー公爵様が何かを思い当たったのか、少し考え込まれる。
「ひょっとして私に心当たりがあるように思うのです。この件、私に任せて頂けませんか?」
ジェフリー公爵様はグレイシス侯爵様と、俺にも目線を向けながら話される。
「分かりました。お願いしてもよろしいのでしょうか?」
グレイシス侯爵様が、確認するが、ジェフリー公爵様は力強く頷く。
「私に任せて下さい。」
「では、今後の事なのですが・・・」
そうしてジェフリー公爵様との作戦会議が始まった。
「ジェフリー公爵様に相談したのは正解だったかもしれないな。」
帰りの馬車の中でグレイシス侯爵様が呟く。
「そうですね、まさか、ジェフリー公爵様に心当たりがあるとは・・・前から何かを調べていらっしゃったんでしょうか?」
「そうかもしれないな。」
だから、レイラお嬢様を監視されているような素振りだったのか?
ひょっとして、犯人側ってことは無いだろうな。
レイラお嬢様をヘンリー王子の婚約者の座から下ろしてジェフリー公爵様にメリットがあるとは思えないし、もし、レイラお嬢様を自分のものにする為なら、賊に襲わせたりはしないだろう。
ジェフリー公爵様に限ってないとは思うが、一応警戒はしておこう。
「それにしても、レイラの護衛に王国最強と言われる王国騎士団長の名前を挙げられるとはな。私と騎士団長のマーカスとの仲を知っての事なんだろうか、ジェフリー公爵様の事だから知ってるとは思うが、王国最強の騎士団長よりも数段強い奴がここに居るとは思わないだろうな。」
グレイシス侯爵様が俺を見てニヤニヤしながら言う。
「数段なんて、過大評価が過ぎます。」
そう、俺が記憶を無くしてから剣を教えて貰ったのはグレイシス侯爵様と旧知の仲だというマーカス様だ。
「過大評価なもんか、マーカスもお前と10回やっても1回も勝てる気がしないと言っていたぞ。」
俺は元々剣の腕は良かったみたいで、あっという間に師匠を追い越してしまったのだ。
「この前もマーカスに出会った時、お前を後継者に欲しがっていたぞ。まあ、ミカエルはやらんがな。」
グレイシス侯爵様はちょっと嬉しそうに話す。
俺を自慢に思ってもらえるのは嬉しいことだ。
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