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㉘ジェフリー様のお迎え
しおりを挟む今日は王城に上がる日です。
先日わたくしが盗賊に襲われたのを考慮して、なんとジェフリー公爵様がお迎えに来てくださいました。
馬車は王族専用の豪華な馬車です。
わたくしなんかのために、ジェフリー公爵様がご対応下さるなんて、申し訳なさでいっぱいですわ。
「こんにちは、レイラ嬢、僭越ながらお迎えに上がらせて頂きました。」
ジェフリー様が畏まって挨拶をしてくださる。
「ジェフリー様、ごきげんよう。わざわざわたくしの為にありがとうございます。」
わたくしは淑女の礼でそれに答える。
「レイラ嬢、お久しぶりだね。」
挨拶をしてくださったのは、王国騎士団長で、お父様とお友達のマーカス様でした。
マーカス様は小さい頃からたまにいらしてお父様とお話されている方なので、何だか安心出来ますわね。
「マーカス様、お久しぶりです!マーカス様もいらしてくださったのですか?」
「ジェフリー公爵様からの依頼でね、レイラ嬢にはミカエルが付いているから心配は無いけど、私も微力ながら護衛させて頂くよ。」
「心強いですわ。ありがとうございます。」
わたくしは深々と頭を下げる。
これだけの人がわたくしの為に来て下さる。
とても心強く、外へ出る恐怖も和らぎます。
「レイラ嬢、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
わたくしがジェフリー様のエスコートで馬車に乗り込むと、馬車はお城をめざして出発した。
「今日はレイラ嬢のナイトになれてとても光栄です。」
向かいに座ったジェフリー様がにっこり笑って言う。
今日はミカは御者席でマーカス様と一緒です。
「わたくしもジェフリー様にこうしてご一緒頂けて光栄ですわ。それに王国騎士団長のマーカス様にまでご一緒頂いて、とても心強いですわ。」
「レイラ嬢をお守りできるのなら、喜んでお迎えに上がりますよ。」
「まぁ、ジェフリー様、頼もしいですわ。」
わたくしがクスリと笑うと、ジェフリー様も穏やかな表情で微笑まれる。
ジェフリー様の笑顔は癒されるわ。
「ところで、レイラ嬢をお守りするのに、最高の騎士をお連れしたのですが、マーカスにレイラ嬢の護衛を頼む時に、マーカスに言われましてね。」
「何をですの?」
「『レイラ嬢にはミカエルが付いているのに、俺なんか行っても役に立たないんじゃないか?』ってね。」
「まぁ、マーカス様がそんなことを?」
「マーカスにどういう事か聞くと、王国一だと思っていたマーカスが、ミカエルには勝てないって言うんですよ。」
ジェフリー様はびっくりしたような表情に変わって、その後伺うような表情に変わる。
「彼は何者ですか?」
何者ですか?と聞かれても、本人が記憶喪失なので、何者か分からないのだけど・・・
「ミカはうちの使用人ですわ。」
それしか答えようがない。
「そうですね、優秀な人材を集めることが出来るグレイシス侯爵はさすがですね。」
ジェフリー様はまた笑顔を浮かべる。
ミカを褒められたのが嬉しくて、ミカはわたくしが拾ったのよ。って心の中で鼻を高くする。
「そういえば、隣国が今大変な状況なのはご存知ですか?」
「隣国?」
「ルシリア帝国です。」
「ルシリア帝国がですか?」
ルシリア帝国と言えば、我がインザンド王国の西側に位置し、国土はイルザンド王国の5倍はある広大な国だわ。そこが大変な状況って?
「ルシリア帝国は、今内部で反乱が起きているようです。」
「そうなのですか?」
ぜんぜん知らなかったわ。
「はい、穏健派の皇帝を過激派の皇子達が排除しようとしてるそうなのです。もし、クーデターが成ってしまえば、この国も危ないかもしれません。」
「え?」
帝国が攻めてくるなんて事になったら、それはとても恐ろしいことになるんじゃないのかしら・・・
「すみません。怖がらせてしまいましたね、そうならないよう、我が国も現皇帝に助力する為、グレイシス侯爵が指揮して軍を集めています。」
「そうなのですか?知りませんでしたわ。」
なんだか怖いことを聞いてしまったわ。
お父様も、大丈夫なのかしら・・・
「レイラ嬢、貴方にはミカエル君が付いているじゃないですか、万一は無いですが、もしも万が一の時はミカエル君が守ってくれますよ。」
ジェフリー様がにっこり笑って言う。
「そうね、ミカがいるから安心ですわね。」
ちょっと不安はあるけれど、お父様もミカもいる。大丈夫よね・・・
そして、馬車は城へと入っていった。
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