悪役令嬢は訳あり執事に溺愛される

さらさ

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㉜答え

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「今日は本当にわたくしなんかの為にありがとうございました。」

お屋敷まで送っていただいて、ジェフリー様にお礼を言う。

「レイラ嬢、そんなにご自分を卑下しなくても大丈夫ですよ。私達はレイラ嬢の為にやりたくてやってるんですから。気にすることはありません。」

ジェフリー様は本当にお優しい。こんなわたくしを気遣って下さる。

「また、馬車デートしてくださいね。」

ジェフリー様がいたずらっぽく微笑む。
わたくしはくすくす笑いながら「ええ、ぜひ。」と答えると、にっこり笑って馬車へと乗り込まれた。




わたくしはそれから家に入ると、そのまま部屋に閉じこもった。

「レイラお嬢様。」

しばらくそっとしておいてくれたミカが話しかけてくる。

「なに?」

「ヘンリー王子様よりの書簡です。」

ミカは王家の焼印の入った封筒を持っていた。
婚約破棄の正式書類ね。

「ミカ、それはいいわ。これをヘンリー王子様にお返ししなくては・・・」

わたくしは婚約破棄が書かれている書面を読む気にはなれず、用意しておいた小さな剣をミカに渡す。
これは、婚約者となった時に王家より譲り受ける仕来りの剣で、「もし、王家を、貴方を裏切ることがあったなら、この剣で心臓を貫いてください」という意味で、結婚式当日にヘンリー王子に渡すはずだった物だ。
婚約者になると、その覚悟を刻むために一度婚約者に渡される。
これを持っていることが婚約者の証。今のわたくしには意味の無いもの。
これを返せば、ヘンリー王子との縁は切れる。

「分かりました。お返しするよう手配しておきます。」

ミカはそれを受け取って部屋を出ていった。

これで、悪役令嬢の役目は終わりね、もう無理しなくてもいいんだわ。
そう思うと、肩の荷が降りたようでほっとする。


しばらくしてミカが戻ってくると、手には紅茶を持っていた。

「アールグレイね。」

わたくしが微笑むと、ミカも微笑んで頷く。

「アールグレイのミルクティー、最近のお気に入りでしょう?」

「うん、ありがとう。ミルクたっぷり入れてね。」

「承知しました。」

ベルガモットの香りと、ミルクのまろやかな甘さに癒されながら一息着くと、ミカが心配そうにわたくしを見ているのに気がついた。

「レイラお嬢様、大丈夫ですか?」

わたくしの視線に気がついて、ミカが話しかけてくる。

「大丈夫よ。肩の荷が降りてほっとしているの。」

わたくしの顔色を見てほっとするミカ、ごめんね、気遣わせちゃって・・・

「望んでた事とはいえ、婚約破棄を言い渡された時は、あまりの言葉にちょっと泣いちゃったけど、落ち着いて考えると、やっとわたくしは自由になったのよね。」

わたくしはにっこり笑ってミカを見る。

「そうですね、これからはレイラお嬢様の望むことをなさって下さい。」

ミカが穏やかな表情でわたくしを見る。

「そうね・・・やりたい事って特に思いつかないわ。・・・そういえば、帰りの馬車の中で、ジェフリー様に、わたくしはヘンリー王子様に憧れていただけで、好きではなかったのか?と聞かれて、分からなかったのだけど・・・平気でいられるっていうことは、そういうことなのかしら・・・」

「そうかも知れませんね。レイラお嬢様は前世からヘンリー王子の事をご存知のようでしたから、刷り込み効果があってもおかしくありませんし、私としては、その方がレイラお嬢様の心のご負担が少なくて、安心致します。」

ミカ、上手いこと言うわね、そうね、そうなのかもしれない。

「そういえば、その後ジェフリー様に告白されてしまって、どうしていいか分からなかったわ。」

「ジェフリー公爵様がですか?」

ミカが驚く。
そう!あのときはミカの事しか頭に浮かばなくて、ジェフリー様にまともにお返事が出来なかったのよ・・・そう思った時に、ミカの顔が目の前にあることに気がついて、わたくしは顔が火照るのを感じた。

・・・わたくし、ミカを前にして何を言うつもりだったの?
ミカの顔が浮かんで上手くお返事出来なかった?
そんな事を言えるわけない。それじゃあまるでミカを好きみたいじゃない!

・・・・・・っ!
え?わたくし、ミカのことが好きなの?


「レイラお嬢様、どうされました?」

わたくしはその答えにたどり着いた時、心配するミカをまともに見れなくなってしまった。

「な、なんでもないわ!今日はもう休むわね!」

顔を見ずに話すわたくしを、ミカはきっと怪訝に思っているだろう。
だけど、ミカはそのまま何も言わずに、「おやすみなさいませ。」とだけ言って部屋を出ていった。










    
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