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㉝俺の記憶(ミカエル)
しおりを挟むレイラお嬢様がヘンリー王子から婚約破棄を言い渡された翌日、俺とグレイシス侯爵様はジェフリー公爵様に呼び出されて、事のあらましを聞いた。
レイラお嬢様を襲った犯人にもう目星がついていて、ジェフリー公爵様は捉える準備が出来たと仰った。
まさか、前から疑っていた人物がいたとは・・・犯人と疑わしき奴の名前を聞いた時、俺が探ってた人物と一致した。俺は正直、犯人、バカなのか?大バカか?と心の中で悪態をついてしまった。
あんな奴にレイラお嬢様が酷い目に合わされそうになったと思うと、本当に腹がたつが、後の事はジェフリー公爵様に任せることにした。
これで、レイラお嬢様に害をなすものは居なくなる。ある意味、このタイミングで方が着いて良かった。
安心してここを離れられるーーー
俺はレイラお嬢様にずっと隠してきたことがある。俺の素性だ。
俺はレイラお嬢様に助けられた時、記憶をなくしていた。
本当に、自分に関する記憶だけがすっぽりと空白になっていたんだ。
だけど、半年ほどたった頃、そう、剣の練習を始めた頃、今まで記憶を隠していた霧のようなものが一気に晴れて、俺は記憶を取り戻した。
思い出した時、この事を伝えるべきか、このまま姿を消すか悩んだ。だが、グレイシス侯爵にだけ打ち明けることにした。
グレイシス侯爵は、俺が記憶を思い出したと言うと、あまり驚くことも無く、「そうですか、良かった。」と言った。
どうやら、俺の記憶喪失は事故による一過性のもので、そのうち思い出すだろうと思っていたらしい。
そして、おもむろに鍵のかかった金庫を開け、何かを取りだした。
「これは貴方がここに来た時、身に付けていたものです。」
そう言って手渡された袋には確かに見覚えがあった。簡単に見つかったり、盗まれないよう、太ももに巻きつけていた物だ。
「大事なものだと思い、誰にも言わず、保管していました。」
「中を見たのか?」
俺の質問に、グレイシス侯爵は肯定する。
「貴方の身元には検討がついていました。ですが、危険があったため、貴方が記憶を取り戻すまでは・・・と黙っていました。これは私しか知らないことです。」
確かに、記憶のない状態で身元を明かされても、危険以外の何物でもない。
俺は袋の中身を確認する。
確かに俺のものだ。
「グレイシス侯爵、ありがとう。貴方の判断は正しい。」
「その髪は・・・カツラですよね?」
グレイシス侯爵の問いかけに、俺はそれを取ってみせる。
「ああ、取れないように随分頑丈に作ってもらったので、俺自身も気がついてなかったけど、取り方が解っていれば簡単に取れる。だが、これはこのまま付けておこうと思う。グレイシス侯爵、貴方を危険に巻き込むことになるが、協力して貰えないだろうか?」
俺は、俺の今後について、グレイシス侯爵に助けを求めることにした。
虫のいい話なのは分かっている。助けてもらった恩人を危険に晒すことになるのだ。
だが、グレイシス侯爵は快く承諾してくれた。
「協力させていただきます。クロード皇子殿下。」
グレイシス侯爵は恭しく一礼をしてみせた。
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