悪役令嬢は訳あり執事に溺愛される

さらさ

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㊲ジェフリー様の訪問とヘンリー王子の真意

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ミカが居なくなってから二ヶ月。
突然居なくなったミカの姿が無いことに慣れるのに随分かかった。
毎日ミカを思って泣いていた。

ミカと一緒にしばらく居なくなっていたお父様が戻ってきた時には、お父様なら何か知っていると思い、聞いたけれど、お父様は、
「彼が何も言わないと決めたのなら、私は彼に従う。」
と言って何も教えてくれなかった。




「レイラお嬢様、ジェフリー公爵様がレイラお嬢様にお会いしたいといらっしゃっています。」

ミーナが伝えてくれる。

「ジェフリー様が?わたくしに?わざわざなんのご用事かしら?」

わたくしはミーナに支度をしてもらうと、ジェフリー様をお通ししてある応接室へと向かった。


「これはレイラ嬢、お久しぶりです。」 

わたくしが部屋に入ると、ジェフリー様が相変わらずの優しい笑顔で挨拶をしてくださる。

「ジェフリー様、ごきげんよう。お久しぶりですわ。」

挨拶をして席につくと、改めてジェフリー様を見る。

「わざわざ起こし頂けるなんて、今日はどのようなご用事ですか?」

わたくしの質問に、ジェフリー様はニッコリ微笑む。

「2点ほどレイラ嬢にお話したいことがございまして。」

「まぁ、何ですの?」

「では、単刀直入に聞きますが、婚約の証をヘンリー王子にご返却されたのは何故ですか?」

え?・・・えーっと・・・ジェフリー様の仰っていることがよく分からないのだけど・・・

「何故って・・・わたくしはヘンリー王子様に婚約破棄を言い渡されましたもの。お返しするのは当たり前では?」

「レイラ嬢・・・ヘンリー王子からの書簡はご覧になられたのですよね?」

ジェフリー様の言葉に、そういえば・・・婚約破棄の正式な書面は受け取ったわ。でも、中を見るのはいやで見ていないままね・・・

「申し訳ございません。読むのが嫌で・・・見ていません。」

わたくしが正直にそう言うと、ジェフリー様が嘆息する。

「なるほど、納得致したました。そういう事だったんですね。」

ジェフリー様、一人で納得していらっしゃるけれど、何をでしょう?

「ヘンリー王子はレイラ嬢から婚約破棄されたと落ち込んでおりますよ。」

「は?」

今日のジェフリー様大丈夫かしら?
さっきから何を言っているのか全然分からないのだけど、婚約破棄されて落ち込んだのはわたくしでは?
何故ヘンリー王子が落ち込んでいるの?

「レイラ嬢は私が何を言っているのか、書簡を読んでいないのなら理解できないでしょう。」

書面に何が書かれていたのかしら・・・

「ジェフリー様、失礼して今書簡を拝読してもよろしいでしょうか?」

「ええ、どうぞ。」

ジェフリー様に確認してからミーナに書簡を持ってきてもらうと、わたくしは蝋印のされた封筒を開いた。

〘親愛なるレイラ嬢、君にまず謝りたい。 〙

そんな文面から始まった。

〘君に酷いことを言ってしまって申し訳ない。ジェフリー公爵に君が泣いていたと聞いて、とても心が痛かった。君を守るためとはいえ、婚約破棄などという言葉を使って君を傷付けてしまって、本当に申し訳ない 。今日の俺の言葉は嘘だ。俺は婚約破棄など望んでいないので、それだけは理解して欲しい。
何故こんな事をしたのか・・・長くなるが読んでもらえるだろうか?
始まりは、リサ嬢が噴水に落ちたという事件、覚えているかな?偶然通り掛かった私はリサ嬢に何があったのか聞いた。すると、リサ嬢はレイラ嬢に押されて噴水に落ちたと話した。私はそれを聞いた時、あんなに心優しいレイラ嬢がそんな事をするのか疑問に思った。だが、目の前のリサ嬢はレイラ嬢に虐められていると言って泣いたんだ。もし、これが本当ならレイラ嬢に話をしなくてはならない。そう思ってレイラ嬢が私の元に来た時に聞いてみた。答えはレイラ嬢も知っての通りだと思うが、レイラ嬢も挙動がおかしかったので、どちらが本当なのか、第三者に聞くことにした。私はレイラ嬢と一緒に居たアンナ嬢に聞いてみたが、アンナ嬢もレイラ嬢がやったと言った。私はレイラ嬢がリサ嬢を虐めているのは事実だと認めかけた。だが、ジェフリー公爵が一部始終を見ていたと言ってくれた。押したのはレイラ嬢ではなく別の者で、むしろ、レイラ嬢は助けようとしていたと聞いた。リサ嬢を置いてその場から立ち去ったのも、これ以上リサ嬢に酷いことをさせない為に、皆を引き連れて立ち去ったのだと。
だとすると、リサ嬢とアンナ嬢は何故嘘を付くのか?私はレイラ嬢が傷付く様なことにならないか心配だったので、ジェフリー公爵にレイラ嬢を見ているように頼んだ。すると、次はリサ嬢がレイラ嬢にシャンパンを掛けられたと言った。レイラ嬢は使用人に護られるように立っていたので、レイラ嬢に何かあったのだと思った。レイラ嬢を守るため、リサ嬢をレイラ嬢から離す方がいいと判断し、レイラ嬢の事は君の護衛のミカエル君に任せて、私はリサ嬢を連れて行った。あの時、レイラ嬢に何があったか聞いていれば、もう少し違った結果になっていたのかもしれない・・・あの件も、後からジェフリー公爵に確認すると、リサ嬢がレイラ嬢に体当たりして、危うく倒れそうな所を使用人に助けられたと聞いた。リサ嬢は明らかにレイラ嬢を狙っている。なんの目的なのか、探ろうとしていた頃、レイラ嬢が盗賊に襲われたと聞いた。この件がリサ嬢と繋がるのかは分からないが、このままではいけないと思い、レイラ嬢が登城する今日に合わせて、リサ嬢を呼んで今までの嘘を問いただそうとしたんだ。
だが、今日もリサ嬢がレイラ嬢を階段から落とそうとした。私は見ていた。リサ嬢がその後、自分から落ちるのも。私はリサ嬢の狙いはレイラ嬢を婚約者の座から引き落とし、自分がその場所に立つために、レイラ嬢を悪者にしたり、傷付けたりしているのだと判断した。今思えば、レイラ嬢が社交界デビューする以前からリサ嬢は私によく接触して来ていた。婚約者のいる私に色目を使っているようであまりよく思っていなかったのだが、本格的にレイラ嬢を排除しようとしているように思う。これ以上私の婚約者で居るともっと危険な目に会うかもしれないと思い、リサ嬢の前で婚約破棄という嘘の言葉を叫んだ。言われのない罪を挙げられて、きょとんとしているレイラ嬢の事は見ていた。何故その場でリサ嬢を責めなかったのか、それはこの件が片付いた時に話をさせてもらう。今は私を信じて待っていて欲しい。
私の愛するレイラ嬢へ・・・・・・ヘンリーより。〙

わたくしは読み終わって口を覆う。
そんな・・・ヘンリー王子はわたくしを守るために婚約破棄の振りをしたの?

それなのにわたくしは剣をお返ししたの?
・・・という事は、わたくしから婚約破棄をした事になるじゃない!





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