25 / 30
25話 動揺(リリアンナ)
しおりを挟む「誰も通らなかったみたいですね、もう誰もいないのかしら・・・ 」
普通なら誰かが部屋の前を通りがかって、部屋に明かりがついていたら気が付きそうなのに、誰も来なかったと言うとこは、ここには誰も来ないまま、みんな帰ってしまったの?
そう理解した瞬間、急に怖くなる。
ジュリアス様を見ると、窓の外を眺めて時間を確認している。
鼻歌でも歌い出しそうな、余裕のある表情、なぜそんなに落ち着いていられるのかしら・・・
「もうそろそろかな・・・ リリアンナちゃん、俺と一晩ここに閉じ込められるなんて心細いし不安だよね 」
窓の外を眺めていたジュリアス様が振り向いて私に苦笑いで問いかける。
「俺としてはリリアンナちゃんと一晩二人きりなんて、ドキドキで嬉しいんだけどね 」
おどけたように付け加えるジュリアス様。
明るく話していらっしゃるけれど、やっぱり朝まで誰も来ないのね、ジュリアス様に気を使わせてしまってるわ。
「私は大丈夫ですわ 」
そう言った瞬間、開かないと思っていた扉が開いた。
「ジュリアス、居るか? 」
そう言って入ってきたのはラース様とエルヴィン様でした。
「ラース、エルヴィン、ありがとう 」
「いや、・・・まさか本当にリリアンナ嬢と一緒にいるとは思わなかったけど、お前の感は鋭いな 」
ラース様は私の姿を確認すると、感嘆の表情でジュリアス様を見た。
「え? どういう事ですか? 」
私とジュリアス様がここに居るのを知っていてきてくれた様子なのだけど、何故知っていたのかしら。
「リリアンナ嬢、遅くなって申し訳ございません。実は、こういう事が起こるのではないかとジュリアスは心配していたんですよ 」
エルヴィン様の言葉に、私はジュリアス様を見る。
「え? 」
何が何だかついていけない私を見てくすっと笑うジュリアス様。
「実は、さっき話した事には続きがあって、セイラ嬢が虐められてるという噂はセイラ嬢の取り巻きの間で大きくなっていて、いつリリアンナ嬢に危害を加えてもおかしくない状況だった。だから俺たちの誰かがリリアンナ嬢を常に見ていることにしていたんだ。そして、やっぱり予想していた事が起こってしまった。これは警戒を十分に出来ていなかった俺の責任でもあるんだ。分かってて閉じ込められる事になってしまってごめんね 」
眉尻を下げて申し訳なさそうに話すジュリアス様に、私も感心してしまった。そこまで考えてくださっていたなんて・・・
「で、リリアンナ嬢が消えたもしくは俺たちの誰かが日が沈んでも帰って来なかったら校舎を探すように、ジュリアスから言われていたんです。今回は明かりが着いていたので見つけやすかった 」
ラース様の説明に、ジュリアス様の推察の深さを知って驚く。
「ジュリアス様・・・そこまで考えてくださっていたのですね、謝る必要なんて全然ないですわ、ジュリアス様のおかげで一人閉じ込められることも無く、無事助けていただくことが出来ました。ありがとうございます 」
私は深々と頭を下げてジュリアス様に感謝の意を表した。
「そんな大した事はしていないよ、さぁ、あまり遅くなるといけないから、寮まで送っていくよ 」
ジュリアス様はキラキラのスターのような笑顔で微笑みかけてくださる。
この方がいてくださって良かった。
「今日は本当にありがとうございました 」
寮まで送って頂いてから、そう言えばシルル様はどうしたのか、少し気になった。
私が居なくなったというのは知らなくて当然だけど、何だか寂しい気持ちになった。
無性にシルル様に会いたい。こんな気持ちは初めてだわ。
寮の中に入ると、入ってすぐに談話室がある。そこを通らなければ部屋に行けないので談話室に足を踏み入れる。すると何人かが驚いたように私を見る。
「あら、リリアンナ様、ジュリアス様と遅くまで何処にいらしていたのかしら 」
その言葉に何人かがくすくすと笑う。この方達はきっと今日の事に関わっている方達ね・・・
「少し相談に乗っていただいていたのです。失礼致します 」
私は早くその場から離れたくて通り過ぎようと足を進めた。
「まぁ・・・遅いのでセイラ様とシルル様の時のように何処かに閉じ込められてしまったのかと心配していましたのよ 」
嘲笑を含んだその言葉に足が止まる。
「え? 」
シルル様とセイラ様が閉じこられたことがあるの?
「あの時はシルル様がずっと手を繋いでいてくれたので、全然怖くなかったと仰っていたわね 」
「そうそう、真っ赤なお顔で戻っていらして、とてもお可愛らしかったわよね 」
楽しそうに会話をする言葉が胸を締め付ける。
苦しい・・・私にくすくすと嘲笑を向けるその場から逃げたくて、私は早足でその場から抜け出し、そのまま部屋に駆け込んだ。
シルル様とセイラ様が手を繋いでいた?
その言葉だけが頭の中を支配して、心が落ち着かない・・・
10
あなたにおすすめの小説
強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します
天宮有
恋愛
私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。
その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。
シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。
その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。
それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。
私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
異世界転生した私は甘味のものがないことを知り前世の記憶をフル活用したら、甘味長者になっていた~悪役令嬢なんて知りません(嘘)~
詩河とんぼ
恋愛
とあるゲームの病弱悪役令嬢に異世界転生した甘味大好きな私。しかし、転生した世界には甘味のものないことを知る―――ないなら、作ろう!と考え、この世界の人に食べてもらうと大好評で――気づけば甘味長者になっていた!?
小説家になろう様でも投稿させていただいております
8月29日 HOT女性向けランキングで10位、恋愛で49位、全体で74位
8月30日 HOT女性向けランキングで6位、恋愛で24位、全体で26位
8月31日 HOT女性向けランキングで4位、恋愛で20位、全体で23位
に……凄すぎてびっくりしてます!ありがとうございますm(_ _)m
【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。
かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。
謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇!
※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる