ヒロインが迫ってくるのですが俺は悪役令嬢が好きなので迷惑です!

さらさ

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26話 セイラ嬢(シルル)

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リリアンナ嬢に好きだと伝える事が出来た翌日、ジュリアスからセイラ嬢についての報告を受けた。

まさか、ほんの少しの嫌がらせを受けていたのかもしれないけど、その噂のほとんどが自作自演?
俺との噂もわざとセイラ嬢が付き合っているように思わせる素振りをしていたのか? なぜ?何のために?
俺を射落とす為ならもう少し違った方法は無かったのか?
ダメだ、本人に問い質したい。
その日の放課後、どうしようか悩んだが、俺はセイラ嬢を呼び出した。

「シルル様、お話ってなんですか? 」
 
セイラ嬢はまさか自分の行いがバレているとも知らず、何時ものぶりっ子笑顔で小首を傾げて問いかける。

「うん、今日来てもらったのは、セイラ嬢が虐められてることについて確認をしたくてね、まぁ、座って  」

俺の言葉に従ってセイラ嬢は正面に腰掛ける。

「リリアンナ様の事ですか? 」

明るい笑顔で俺を見る。

「そうだね、セイラ嬢がリリアンナを貶めようと、わざと噂を広げたことかな 」

にっこり笑顔で俺も返す。
けれどその言葉に、セイラ嬢は一瞬眉を動かしただけで、すぐに笑顔に戻る。

「私が噂を? なんの事ですか? 」

まぁ、簡単には認めないだろうな。

「俺の情報網を舐めないで欲しいな、調べる気になれば直ぐに分かるんだよ、昨日セイラ嬢と話して、その後リリアンナとも話をした。俺はリリアンナを信じる。だとしたら誰が君を虐めているのか、調べれば直ぐにわかったよ 」

今回はジュリアスの情報網の凄さを改めて実感した。
入学当初は、ジュリアスの女好きにも困ったものだと思っていたけど、ある時、ジュリアスの女好きは情報収集も、兼ねていると知ってそれ以上止めるのを辞めた。彼は女性と話したことを全て覚えている。一人一人が話す内容はたわいない話だが、繋ぎ合わせれば重大な真実が見えることもある。それは分かっていたけど、今回ほど彼の能力に驚かされたことは無い。

「何故? リリアンナ様が嘘をついているとお考えにはならないの? 」

「俺は婚約者のリリアンナを信じる。優しいリリアンナが嘘をつくなんて考えられない 」

真っ直ぐにセイラ嬢を見て答えると、セイラ嬢は目線を逸らして何かブツブツとつぶやく。

「そうよ、そもそもリリアンナの性格が違うのよ、だからおかしなことになってるのよ 」

ん? リリアンナの性格が違う? 何言ってるんだ? 

「だから、王子ルートに上手く乗れないんだわ 」

んん??
今なんつった?

俺の疑問を他所に、セイラ嬢は尚もブツブツと独り言をつぶやく。

「悪役令嬢が悪役令嬢らしくないのがそもそもおかしいんだわ」

「ちょっと待った! 」

決定的な言葉に、俺は立ち上がってテーブルに手を着くと、前のめりにセイラ嬢を見た。
俺の突然の動きに、セイラは驚いたように俺を見る。

「え? 」

「君は・・・もしかして転生者? 」

「・・・・・・・・・え? 」

セイラ嬢は一瞬俺の言葉が呑み込めなかったのか、数秒後にもう一度疑問符を浮かべる。

「コンビニ、スマホ、SNS、何の事か知ってるよね? 」

俺の問いかけに、セイラ嬢の表情が明らかに変わる。

「まさか・・・シルル様もそうなの? 」

「うん、ここは『私と王子様のキズナ』の中だろう? 」

その言葉が決定打だったのか、セイラ嬢の表情が一変する。

「え? マジで? 」

なんか久しぶりに聞く言葉でちょっと新鮮だなぁ、なんて感傷に浸っていると、セイラ嬢も前のめりに俺に近づく。

「シルル様は・・・前世男よね? 」

「もちろん 」

「何で『私と王子様のキズナ』を知ってるの? そういう趣味の人だったの? 乙女系男子? 」
 
「いや、至って普通・・・だと思うんだけどな、妹がこの小説好きだったんだよ 」

「へぇー、妹がいたんだ、でも、妹の本を読んでたんだね、やっぱ乙女男子じゃん 」

「・・・そうなるのか・・・俺、悪役令嬢のリリアンナが好きだったんだ、なんか可哀想でさ、だからこの世界に転生したとわかった時は絶対リリアンナを甘やかすって決めたんだ 」

「そういう事か、だからシナリオが変わっちゃったのね、元から王子が婚約者を溺愛してたら他になびくなんて無いわよね 」

ふぅっと溜息をつきながら椅子に座り直してソファに背を預けるセイラ嬢。

「シナリオ通りにしてたらそのうち元に戻るかなって思ってやってたのに、意味なかったんだ 」

「ごめん 」

セイラ嬢はシナリオ通りに演じようと必死だったのかもしれない。そう思うと、なんか憎めない。

「・・・悪役令嬢が好きって、うちのお兄ちゃんみたい 」

空を見上げながらつぶやくその言葉に、俺と同じような事を思う人がいたんだと安心する。

「セイラ嬢にはお兄さんがいたんだ 」

「うん、死んじゃったけどね・・・え? ・・・まさか・・・シルル様はお兄ちゃん? 」

「は? 俺とセイラ嬢は同い年だし、俺は王族だぞ、母の素性もしっかりしてる。そんな訳・・・」

そこまで言ってセイラ嬢が何が言いたいのか理解した。

「まさか・・・心菜ここな? 」

俺は一度落ち着けていた腰を浮かせてまた身を乗り出した。
このテーブル、邪魔だ。

「ホントに、お兄ちゃんなの? 」

今目の前にいる、この学園に入学してから4年、ずっと一緒に居たセイラ嬢が妹の心菜?
ちょっと待って、俺は死んで生まれ変わった、じゃあ、心菜は?

「お前・・・いつ死んだ?! 」



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