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㉓グレンの役割
しおりを挟むドアが急に開いて、またあいつらの仲間が入ってきたんだと思った。
「シンラ!」
その声に、慌ててドアの方を見ると、そこにはキラキラのイケメンが怒り狂った顔で立っていた。
「ゔーーー!」
叫びたいけど、口が塞がれてるから叫べない。
来てくれた!嬉しい。ずっと不安だったんだ。俺このままここで死ぬのかと思った。
来てくれた。
「シンラ、遅くなってすまない。酷いことをされていないか?」
部屋の中に居た奴らをあっという間に始末して俺の元に駆けつけてきて、手足を縛られてる紐と猿ぐつわを外してくれる。
「グレンっ・・・!」
俺は泣きながらグレンにしがみついた。
「怖かったよぉ・・・!」
泣きつく俺を、グレンは優しく包み込むように抱きしめてくれた。
「シンラ、本当にすまない。少しでいい、お前に触れさせてくれ。」
そう言った後、涙でボロボロの俺の顔を見て顎を持ち上げると、唇を重ねる。
最初は優しく触れてから、次第に激しく求めるように・・・
俺はその口付けを呆然と受け入れていた。
普段の俺ならいきなり何すんだよ!とか言ってそうなのに、安心と、グレンの温かさに、不覚にも触れる唇が気持ちいいとか思ってしまった・・・
長い口付けの後、グレンから黒い固まりが出ていくのが見えた。
そっかー、俺としばらく会ってなかったから、グレンも苦しかったんだ。
「いきなりすまない。」
唇が離れた後、俺を見つめてグレンが呟く。
「ううん、助けに来てくれてありがとう。」
そう言った後、後ろにユリアンさんがいるのも目に入った。
ユリアンさんも来てくれたんだ。
安心した途端、俺は気を失った。
「う・・・ここは?・・・」
目が覚めると閉じ込められていた部屋のベットでは無い所にいた。
薄ピンクの花の舞う壁紙・・・俺の部屋?
「良かった。目覚めたんですね。」
横を見ると、ユリアンさんが心配そうに覗き込んでいた。
「俺、寝ちゃったの?」
そうだ、助けて貰って、そこから記憶が無い。
「ずっと眠れていなかったのでしょう?ゆっくり休んでいていいんですよ。」
起き上がる俺に優しく微笑みかけてくれるユリアンさん。
ああ、俺、助かったんだ。
そう思うと、また涙が溢れてくる。
ぽろぽろと涙を流す俺をユリアンさんが優しく抱きしめてくれた。
「怖かったよーっ」
ユリアンさんの温もりに安心したら涙が止まらなくなって、わんわん泣いていたら、いつの間にかグレンも来ていて、俺のベッドに腰掛けて頭を撫でてくれていた。
「シンラ、なにか酷いことされませんでしたか?」
ユリアンさんが優しく聞いてくれる。
「・・・おしり触られた。胸も触られた。」
「なっ!」
「アイツら・・・殺すだけじゃ足りん!もう一回殺してくるか!」
「ええ、そうですね、賛成です。」
グレン、怖いよ。死んだ人はもう殺せないからね?それにユリアンさんまで!目が座ってるよ?そんな性格だった?
でも、俺の為に怒りを露わにする二人を見て思った。俺、二人に愛されてるみたい。
嬉しくなってへらりと笑う。
ぐぅーー。
その時雰囲気をぶち壊すお腹の音が盛大に鳴り響いた。
「・・・お腹空いた。」
「くすくす、そうですね、食事を用意してもらいましょうか。」
ユリアンさんが笑う。
グレンがくくっと笑いながら、控えていたメイドさんに用意をするよう伝えてくれている。
「何も食べさせて貰えなかったからお腹すいちゃった。喉乾いた。」
「水飲みますか?」
すかさずユリアンさんがお水の入ったグラスを渡してくれる。
「ありがとう。」
お水がこんなに美味しいなんて・・・
「シンラから食事を取り上げるなど、やはり、殺すだけでは物足りんな。四肢を引き裂いてやれば良かった。」
いや、だから怖いって!やめて!
ところで、俺はなんで誘拐されてんだろう?
「犯人はなんの目的で俺を攫ったの?」
「それは、俺を魔王にする為だ。」
グレンの言葉に俺は首を捻る。
ん?グレンは魔王だよね?
「グレンは魔王じゃないの?」
「ああ、俺を恐怖の魔王にしようとしていたんだ。」
ん?余計わかんないよ?
「どういうこと?」
「今の俺は、自我を持って悪気をコントロールしているけど、以前の俺は悪気を吸収するだけして、自我を失い、目に入るもの全てを焼き付くさんとする悪の魔王だった。その頃に戻って欲しい輩がいたんだよ。」
「んん?グレンは怖い魔王だったの?今は怖くないよね?」
訳分からん。
「そうだな、俺は怖くないか?」
「うん。」
グレンはたまに意地悪だけど、基本優しいんだよね。
「シンラが居てくれるからだよ。」
そう言ってまた頭を撫でてくれる。
「どういう事?」
「俺はこの世界の悪気を吸い続けている。それを吸いすぎてコントロールできなくなる前に、シンラが浄化をしてくれるから俺は正気を保っていられるんだ。俺は世界を悪に向かわせない為の役割を果たしているのだが、シンラはそれを中和する存在なんだ。俺とシンラは一緒で無ければこの世界を守ることが出来ない。」
へー、そうなんだ。そういえば、神様が魔王はこの世界との繋がりが大きいから殺すことは出来ないって言ってたな。
そういう事なんだ。
「グレンはこの世界を守ってるんだね!すごい!カッコイイ魔王様だね!」
俺はグレンが凄くかっこよくて頼もしい人に見えて、にこにこしながら尊敬の眼差しでグレンを見上げた。
グレンはそんな俺の頭を撫でてくれる。
「怖い思いをさせてすまなかった。」
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