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㉘自覚
しおりを挟むグレンにからかわれながらの朝食を終えてから俺はユリアンさんの元に向かった。
ユリアンさんの部屋の前まで来ると、ドアをノックする。
「はい、どうぞ。」
中からユリアンさんの声がして、俺はそっとドアを開けて中に入った。
「ユリアンさん、大丈夫?」
ユリアンさんはベッドの上で枕をクッションにして座って何かを書いていた。
「何書いてるの?」
俺はユリアンさんのベッドに腰掛けながらユリアンさんの手元を覗き込む。
「一応、騎士団に報告書をね、たまにシンラに連れてってもらってるとはいえ、基本こちらで生活しているので、この機会に魔族の生活や性格など、人間と共存できる可能性や、魔王陛下についての謝った解釈の訂正など、やる事は色々あるんですよ。」
そう言ってにっこり笑うユリアンさん。
少し顔色が悪い。
あれだけ血を流したんだもんね・・・
「ごめんね、俺が失った血全部元通りにしてあげれたら良かったのに、そこまで力がなくて・・・」
「何を言ってるんですか、十分ですよ。シンラは心配しなくても、少し休めば戻りますよ。」
ユリアンさんって俺と少ししか歳変わんないのに、大人だよなー。
たまに切れてるとこ見るけど、基本落ち着いてる。切れてるのも俺の事を心配しての事だし。頼りになるお兄ちゃんだよね。
「それより、今日は魔王陛下に笑顔見せてきましたか?」
そう言われて思い出す。
そういえば、いつものプレゼントのお礼も言ってないし、食事中はずっとからかわれてたので笑ってない気がする・・・
「・・・笑ってないかも。」
「それではまた魔王陛下は少し辛いかもしれないですね、シンラ、今から魔王陛下の所に行ってきなさい。」
「えー、今来たところなのに!・・・あ、さっきちょっとちゅーしたよ。」
さっきグレンに、からかわれて軽いキスされた。
思い出してユリアンさんに言ってから、ふとグレンの事を思い出す。
「シンラ?どうしました?」
「なんでもない。」
俺はそう言いながら自分が赤面してることに気がついて下を向いた。
「・・・魔王陛下の事を好きになりましたか?」
突然ユリアンさんに言われてびっくりする。
「な、なんで?」
「そんな顔をしていましたから。」
にっこり笑って俺を見るユリアンさん。
え?俺どんな顔してたの?
「そんな訳ないじゃん。」
俺がグレンを好き?
そんな事、・・・ない・・・でも、何でグレンの事考えるだけでこんなにドキドキするの?
「シンラは魔王陛下にキスされて嫌でした?」
ユリアンさん!何を突然言い出すの!
そんな恥ずかしい事聞かないでよ!
俺は顔が火照るのを隠すためにまた下を向く。
「その反応は、嫌じゃないってことですよね?」
う・・・ユリアンさんにはお見通しみたい。
「グレンのキスが嫌じゃないから困ってるの。ユリアンさん、俺ってキス魔なのかな?」
ひょっとして、グレンのキスが嫌じゃないんじゃなくて、俺ってキスが好きだったりするのかな?
「キス魔?なんでそんなこと思うんですか?」
「だって、俺、キスしたの初めてだし、グレンのキスが好きなんじゃなくて、キスが好きなのかもしれない。」
あれ?なんか言ってて何言ってんだ?って感じ・・・
「なら、私とキスしてみますか?」
「・・・え?」
「してみたらキスが好きなのか、魔王陛下が好きなのかわかるんじゃないですか?」
「なっ!何言ってるの?ユリアンさん?」
真面目な顔して何てこと言うの?
てか、いくら試す為とは言え、ユリアンさんにそんな事させられないよ?
「俺なんかとそんな事しなくていいよ!」
思わず赤面してユリアンさんを見る。
「シンラだからしたいって言えば?」
今日のユリアンさんどうしちゃったの?
俺を見つめる瞳がマジなんだけど!
俺とキスしたい?そんな事ないよね?
そう思ってると、ユリアンさんが俺の顎を持ち上げて顔を近づけてくる。
「ち、ちょっと待って!」
俺は思わずユリアンさん口に手を当てて止める。すると、ユリアンさんが、クスっと笑いながら俺を見る。
「ほら、やっぱり他の人のキスは戸惑うでしょ?」
そう言われて俺は気付いてしまった・・・
ユリアンさんの寂しそうな表情に。
「・・・俺、今グレンの顔がよぎった。・・・ユリアンさんごめんなさい・・・」
「なぜ謝るのですか?」
ユリアンさんはいつも俺に笑顔で話しかけてくれる。優しくしてくれる。そばに居てくれる。出会った時からずっとそうだったから気が付かなかった。
俺、ユリアンさんに愛されてたんだ。
グレンの事を好きなのかどうか分からなくて、ユリアンさんに酷いことしちゃった。
「俺・・・ユリアンさんの事大好きだよ。でも、グレンと違うの。ごめんなさい・・・」
ユリアンさんのおかげでグレンの事好きだって自覚した。
思わず涙が溢れる。
こんな時にずるい奴って心の中の俺が蔑んでる。
「そんな事、最初から分かっていましたよ。」
ユリアンさんはそう言って、俺を優しく抱きしめてくれた。
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