婚約破棄してやる!って宣言した婚約者が可愛かったんだけど、どうしたらいい??

さらさ

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6話 ちょっと森まで

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「初めてって、こんな状況なのに焦らないのか? 」

突然どこかに飛ばされるなんて聞いたことがない。なのに、この二人は落ち着いている。

「焦ってもどうにもなりませんし、それよりも焦れば危険な事もあります。まずは落ち着いて状況確認からしましょう? 」

「よくそんなに落ち着いていられるな 」

やっぱり聖女様は経験が違うのか?

「何事も運命です。受け入れるより他ありません 」

そう言ってにっこり笑うシンシアを見て思い出した。
シンシアは目が見えないんだ。知らない場所で一番不安なのはシンシアじゃないのか?
俺はギャーギャー騒いで何してるんだ、シンシアを守ってやらないと!
そう思い直した時、急にシンシアが顔色を変えた。

「カイン様!! 剣を抜いて後ろです!! 」

「剣を? 」

俺はなんの事か分からず首を傾げる。
その時、後ろで物凄い気配を感じて肌がピリピリと反応した。
慌てて剣を抜きながら振り返った時には目の前にオオカミの魔物、オルトスが襲いかかって来ていた。

「うわっ! 」

俺は慌てて剣でオルトスを薙ぎ払う。
オルトスは一度は体制を崩したけど、直ぐにくるりと翻って着地すると、また俺の方目掛けて飛び掛ってきた。
だけど敢なく剣にかかって地面に崩れ落ちた。
切ったのは俺じゃない。

「カインクラム様、大丈夫ですか? 」

オルトスそれを切ったのはキースだ。
魔物が瘴気と化して消えるのを確認してから息を大きく吐き出す。

「大丈夫、ありがとう 」

「どうやらここは魔物の住む森のようですね、早く抜けた方がいい 」

キースは辺りを警戒しながらそっとシンシアの傍らに着く。

「そうみたいだね、とりあえず進もう、どっちに行く? 」

「木の育ち方、苔の付き方から南はあちらのようです。南を目指しましょう 」

キースはすぐに答えを返してくれる。
さすが元副団長、判断が早い。

「分かった、俺は後ろから着いて行くからキースはシンシアを守りながら前に進んでくれ 」

「了解しました 」

そうして俺たち三人は森の中を南目指して進んだ。
途中何回か魔物に遭遇したけど、今の所難なく交わしてこれている。

「驚きました。カインクラム様がここまで素晴らしい剣の腕をお持ちとは 」

キースが感心したように言う。

「俺は魔術が使えないからね、剣の腕くらいは磨かないと城も守れないだろ? だけど、魔術が使えないからもっと強い魔物が来たら俺はお手上げだ 」

基本、城は王の結界で守られているけど、俺にはそれが使えない。だから、臣下が俺が王になることに対して心配するのも分かる。

「カインクラム様はお強いのですね 」

にっこり笑うシンシア、俺にその言葉は逆効果だ。だけど嫌味がないのがわかるから何も言えない。

「・・・カインでいいよ、さっきもそう呼んでただろ? 」

「あっ、申し訳ございません、咄嗟に呼んでしまいました 」

シンシアは焦ったように顔を赤らめる。こんな可愛い顔もするんだ。

「いいよ、カインで 」

「はい、 カイン様 」

にっこり笑うシンシアを見て、今度は俺が顔を赤らめる事になった。
ーーー可愛いじゃないか。

「カインクラム様、森を抜けます 」

キースにそう言われて前を見ると、鬱蒼とした森の中に明るい光が差し込んできていた。

「良かった 」

1時間ちょっとで森を抜けることが出来た。

「それほど森の奥地でなくて良かったです 」

キースも肩の力を抜きながら呟く。

森から出ると、小高い丘の上に立っていた。
見渡すと眼下に村が広がっている。

「カインクラム様、ここはアーシエンダ王国内ですね? 」

「うん、ここは見覚えがある。見えているのはハスカ村だ、王都はあの山の向こうだ、ここからは安全だよ 」

見慣れた風景にほっと胸をなでおろした。
俺がカインクラムだと言えば馬車を出してくれるだろう。これでシンシアも不慣れな場所を歩かなくて済む。

「それほど遠くに飛ばされていなくて良かったです 」

キースの何かフラグめいた言葉に思わずドキッとする。

「キース・・・嫌なこと言うなよ・・・ 」

「ふふっ、そうですね、キースが言うと現実になりそうで嫌ですね 」

「シンシアまでやめてくれ、もうこんな事は起こらないだろ 」

俺は深くため息をついてシンシアとキースを見る。

「さあ、村まで行こう 」

俺達は村まで降りると馬車を持っている者を探して、「連れとはぐれてしまって城まで戻りたいんだが足が無い」と説明して王都まで送って貰うことが出来た。



「カイン様! 心配致しました! どこへ行かれていたのですか? 」

俺の帰城に慌てて駆けつけたのは侍従のジュナだ。

「うん、ちょっと森まで 」

「森? ですか? 」

俺の答えに首を傾げるジュナ。

「俺も何が起こったのか分からないんだけど、突然森の中に飛ばされたんだ 」

「確かに、私の目の前で三人は突然消えてしまわれました 」

「何でこんな事が起こったのか分からないんだけど、今までにこんな事が無かったか文献を調べてくれないか? 」

「分かりました、直ぐに調べます 」

ジュナは俺の頼みを聞いて直ぐに書庫に向かった。

「シンシア、疲れただろ? 今日はゆっくり休むといい 」

俺はそう言うとシンシアの返事も待たずに足早に自室に向かった。
正直俺も疲れた。突然の出来事にパニックになりながらも、何とか戻ってくることは出来たけど、精神的にも疲れていた。
俺は自室に戻ってベッドに転がると、そのまますぐに眠りに落ちた。







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