婚約破棄してやる!って宣言した婚約者が可愛かったんだけど、どうしたらいい??

さらさ

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5話 突然の出来事

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「・・・シンシアは俺なんかの婚約者になって嫌じゃなかった? 」

「どうしてですか? 」

シンシアは顔色ひとつ変えずに首を傾げる。

「どうしてって、俺が能無しなのは知れ渡ってたんだろ? そんな奴の所に輿入れするなんて嫌じゃないのか?」

自分で言ってて情けないけど、本当の事だし、俺は自分が王にふさわしくないのは一番分かってる。

「そんな事、思った事もありません。私は出来れば少しでもカインクラム様のお役に立てれば・・・と今まで努力してきました。でも、カインクラム様が私をお嫌いなのなら仕方がありませんわね 」

「そ、そんな事ない! 嫌いじゃない・・・と思う! 」

しょんぼりと肩を落とすシンシアを見て、慌てて取り繕ったけど、俺がシンシアに嫌いだって言っちゃったんじゃないか。
昨日に戻って昨日の俺に言ってやりたい! もう少し考えろって!

「・・・そうなんですか?」

虚をつかれたように目を丸くして首を傾げながら俺を見るシンシア。

「カインクラム様は私が盲目なのでお嫌いなのかと思っていましたけど、ご存知なかったのですよね? では他になにか理由がおありなのでしょう? 大丈夫です。運命と受け入れますので、無理はなさらないでください 」

シンシアはどうやら俺が気を使ってると思っているようだ。

「いや、そういう訳じゃないんだけど・・・ 」

「大丈夫ですわ、私は気にしません。それよりも何か私に至らぬ点がありましたら今後の参考に教えて頂ければ幸いです 」

シンシアは気にする様子はなくにっこりと微笑んでみせる。
その様子は俺に嫌われてショックを受けているようには見えない。それだけ俺には興味ないってことなのか・・・そう思うとなんか悔しい。

「俺は・・・お前のそういう何でも出来て澄ましたところが嫌いなんだよ! 」

しまった、思わず言ってしまった。

「そうですか、ありがとうございます。参考になります 」

焦る俺とは裏腹に、シンシアはにっこり柔らかに微笑んだ。

ダメだ、完全に相手にされてない。
そうか、俺が年下だから、年上の余裕なのか? 俺との婚姻が上手くいかなくても聖女様には他にも候補が沢山居るんだろ。
そうだ、そうに違いない。
だけど、悔しい。俺が相手にされてないなんて。

「・・・・・・俺はもう戻る。シンシアはまだゆっくりしてるといいよ 」

いたたまれなくなって一旦その場を離れる事を選んだ俺は立ち上がって去ろうとした。

「あっ、今日はこんな素敵な所に連れてきて頂いて・・・きゃっ 」

シンシアは立ち上がって礼をしようとしたのか、慌てて立ち上がろうとしてチェアーの脚に足を引っ掛けてバランスを崩した。

「危ない! 」

慌てて彼女の身体を支えようと手を伸ばして彼女の腕を持った。その時、一瞬何か目の前が真っ白になった気がした。
だけどそんな事より彼女を支えなければという思いでいた俺の目には周りが映っていなかった。

・・・・・・あれ? 軽い、全然彼女が倒れてこない? そう思ってよく見ると、彼女の従者が腰に手を回して倒れるのを支えていた。

「・・・・・・なんだ、俺が助けるまでもなかったか 」

そう呟いて従者を見ると、従者は目を何度も瞬きさせて当たりを見回していた。

「・・・・・・何だか急に空気が変わりましたわ 」

シンシアも緊張した面持ちで呟く。
空気が変わった?
ふと我に返ったと同時に周りの景色が目に飛び込んでくる。

「・・・・・・・・・ここは何処だ? 」

さっきまで色とりどりのバラが咲き乱れる庭園の東屋に居たはずだ。
なのに、綺麗な薔薇は何処にもなく、青々とした木々に囲まれた森の中に俺達3人は立っていた。

「・・・・・・何処なんでしょう・・・・・・」

シンシアの従者も驚いたように呟く。

「何があったんですか? 」

俺たちの様子に、シンシアが首を傾げて問い掛けてくる。

「・・・・・・俺にも訳が分からない。森の中にいる 」

「え? 」

「シンシア様、カインクラム様の仰る通りです。我々は何処かの森に飛ばされたようです 」

シンシアの従者が俺の言っている事が嘘では無いことを証明するようにシンシアに説明する。

「飛ばされた?・・・・・・そうですか、キース、他になにかあれば詳しい状況を教えてください 」

シンシアは何故かあっさりとその状況を呑み込んだ。
いやいや、飲み込み早すぎだろ、俺も何が起こったのか訳わかんないのに。

「はい、畏まりました 」

シンシアにキースと呼ばれた従者が軽くシンシアに会釈をして俺に向き直る。

「カインクラム様、ご挨拶が遅れました。私はシンシア様の付き人兼護衛をしておりますキース・ド・アグリシュナと申します。以前はアイラム王国第二騎士団の副団長を務めておりましたので、多少は剣に心得があります。どうやら私達は何処かへ飛ばされてしまったようです。ここから城まで戻らなければいけないのですが、カインクラム様は剣の覚えはおありですか? 」

「うん、一応 」

丁寧に名乗ったキースは俺が剣に覚えがあると聞いて少しほっとしたようだ。

「では、まずは今いる場所が何処なのか、確認を致しましょう 」

にっこり笑うキースは身長はおそらく185くらいはあって、鍛えていたのか、細いけど引き締まった体をしているのが分かる。
髪は銀色、瞳は紫色をしていて、うちのジュナと同じ年くらいに見えるから25歳くらいだろうか?さわやかイケメンだ。
あっ、そう言えば、俺の後ろに控えていたジュナは来ていない。て事は、あいつには俺たちが消えたように見えたんじゃないのか?
今頃城で大騒ぎになってるかもな・・・
それにしてもこの二人はなんだか妙に落ち着いてる。

「ちょっと待て、俺は今の状況が飲み込めてないんだけど、シンシアとキースは今までにもこんな事があったのか? 」

良く考えれば落ち着いている理由はそれしか思い当たらない。
なのに、シンシアは顔色ひとつ変えず返す。

「いいえ、初めてですわ 」




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