婚約破棄してやる!って宣言した婚約者が可愛かったんだけど、どうしたらいい??

さらさ

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18話 新しい仲間

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俺の人生ここで終わりか・・・15年間長いようで短かったな・・・
でもこれで無能しだって言われることは無くなるか・・・・・・って俺このままでいいのか? 俺が居なくなったらシンシアはどうなる?
国へ帰れるのなら良いけど、シンシアの命を狙うような国で本当に幸せになれるのか?
いや、俺が幸せに出来るのかと問われればそれも分からない。触ることも出来ない俺には無理かも知れない。だけど、このままじゃダメな気がする。

やっぱ死ねない!

ガバッと起き上がったら何かに思いっきり頭をぶつけた。

「いっってっ!! 」

ズキズキと痛む頭を押さえながら何にぶつかったのか見上げる。
薄暗くてあまりよく見えないけど、なんだ?この目の前にあるものは?
そっと触ってみると、固くてごつごつしている。

『 まだ生きていたとはな、まぁどの道餌になるのだから大した問題ではない 』

急に頭の上から声がして見上げるけど、やっぱりごつごつした岩? しかない。

「誰? どこから話してるの?」

『・・・・・・驚いた。我が言葉が分かるのか?  』

その言葉と同時に目の前にあった岩? がせり上がっていく。
正確には声の主が身体を起こしたのだ。

少し距離が出来て俺の目の前にあったものがなんなのか理解した。
竜だ。それもめちゃくちゃでかい。さっきまで対峙していた飛竜が赤ちゃんに見えるくらいに大きい。

「竜?! 」

『ああ、そうだ。我の言葉を理解する人間、お前は何だ?  』

「え? 竜の言葉を? 何って、ただの人間だけど 」

俺は竜と会話出来ている事を不思議に思いながらも、何故か恐怖は感じていなかった。

『 ふっ、ただの人間か・・・ 我は青竜、ここに落とされたなら潔く我が子の糧となれ 』

「はぁ?! 嫌だよ 」

つまりこの青竜は俺を食べると言っているんだ。

「・・・って、我が子? 」

『そうだ。私にはもう時間が無い。もうすぐ寿命が尽きる。我が子を育てる為の魔力が足りないのだ。お前も我が子の糧となって貰う  』

そうか、だから人をいっぱい集めてたのか、だけど・・・・・・

「いや、俺食べても無駄だよ、魔力0なんだから 」

『何??  魔力が無い? そんな・・・・・・ふむ、・・・なるほど確かに・・・・・・だが・・・・・・』

俺に魔力が無いのがそんなに驚いたのか、ぶつぶつと独り言を始める青竜。
確かに、どんな人でも多少なりとも魔力はある。0ってのは聞いた事ないかもしれない。

「きゅぅー 」

「ん? 」

足元でなにか聞こえた気がして下を見ると、そこには両手の平に乗りそうなくらい小さなドラゴンが佇んでいた。
小さなドラゴンは俺をキラキラした目つぶらな目で見つめる。

「可愛い、お前、もしかして青竜の子か? 」

「んきゅーっ! 」

言葉は分からないのになぜか「そうだよ」って言ってるみたいに聞こえた。

「そうか、こんなにちっちゃいお前が青竜みたいに大きくなるなんて信じられないな 」

「きゅーっ! 」

俺に言葉が通じて嬉しいのか、ドラゴンはぴょんっと飛び跳ねて俺の左腕にひっついてきた。

「痛っ 」

痛みが走って左腕を見ると、血が流れていた。そうか、さっき飛竜にやられたんだ。すっかり忘れてた。
よく見たら転げ落ちた時にあちこちぶつかったのか、傷だらけだ。

「お前、そこは痛いから離れてくれる? 」

優しく話しかけたけど、離れる様子はなく、俺の血を舐めている。
血って美味しいんだろうか?

『 そうか、お前は怪我していたのか、我が治してやろう 』

ふと見ると、青竜が顔を俺の高さに下げて俺たちを見ていた。そして、青竜の吐息がフワッとかかった瞬間、俺の怪我は綺麗に完治していた。

「んきぅー・・・」

それを見てドラゴンが不服そうな顔をする。
よっぽど俺の血が美味しかったんだろうか?

『 ・・・・・・お前、名はなんという? 』

「カインクラム。俺はカインクラム・アーシエンダだ 」

『 ふむ、カインクラム、お前に我が子を託す 』

「は? 」

何いきなり言い出してんだ? このおっさん、いや、お母さんか?

『 どうやらその子はお前が気に入ったようだ。私はどの道もう長くない。カインクラムにその子を託す事にする 』

「困ります! 」

何勝手に決めてるんだ。俺に子守りを押し付けようってのか?

「んきゅー 」

そんなつぶらな目で見ないでくれ、俺だって旅の途中なんだ。自分の事で精一杯なのにお前の面倒を見る余裕なんてない。
・・・・・・でも可愛いな、この可愛さは癒される。うん、シンシア達も喜ぶかも知れない。

「・・・そうだ、引き受ける代わりに、上に居る飛竜達が二度と人を襲わないようにして欲しい 」

『 うむ、約束しよう。と言ってもほとんどお前の仲間が倒してしまったようだが・・・ 私の目の届く範囲の飛竜には人を襲わないようにしよう 』

「ありがとう。俺は急ぐからもう戻るけど、本当に連れて行っていいのか? 」

『ああ、頼む。それから、その子に名前をつけてやって欲しい 』

「名前? 」

今まで名前がなかったのか?
いきなりつけろと言われても何も思い浮かばないんだけど・・・
青竜はブルードラゴンだよな、子供も同じ青い竜だからブルードラゴン・・・うーん、それしか思い浮かばん・・・・・・

「・・・ルード・・・・・・お前はルードって名前はどうだ? 」

小さなドラゴンに話しかけると、小さなドラゴンはきゅーっ!っとまた鳴いて喜んでいるように見えた。安直な名前だけど、俺にひねりを求めないで欲しい。

『 ふむ、ルード、カインクラムの言うことを聞いて達者でな 』

青竜も俺のつけた名前に満足したのか、ルードに別れを告げ、俺達は青竜の頭に乗って地上に戻る事が出来た。








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