婚約破棄してやる!って宣言した婚約者が可愛かったんだけど、どうしたらいい??

さらさ

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19話 村へ

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「本当にびっくりしたわよ! いきなり伝説の青竜の頭に乗って戻って来るんだもん! 穴に落ちた時点でもうダメだと思ってたのに、怪我も治ってるし、一体何があったの? 」

「うん、俺も落ちた時点でもう終わったと思ったんだけどね、下に青竜が居て、話してるうちになんかこの子の子守りを任されちゃってさ 」

そう言って俺の後ろに隠れていたルードを前に出すと、イリヤとマリンの目の色が変わった。

「きゃー、可愛い! 何この子? 青竜の子なの? 」

「うん 、この子の面倒を見る事になった 」

「って、青竜と話した?! どうやって?! 」

一瞬ルードに夢中になっていたイリヤが我に返る。

「俺にも分からないんだけど、何故か普通に話せてたんだ 」

「そんな事あるの? もしかしてカインはテイマーなの? 」

「そんな訳ないでしょ、俺には魔力が無いんだから、そんな芸当出来ないよ 」

確かにテイマーなら意思疎通は出来るかもしれないけど、俺にそんな能力はない。

「ねぇ、急に飛竜が大人しくなったのはもしかしてカインが何かしたの? 」

マリンが問いかけてくる。

「うん、こいつの面倒見る代わりに、二度と人を襲わないと約束させた 」

「えらい! カインやるじゃない! 」

イリヤが俺の背中を思いっきり叩いて褒める。

「痛いよ 」

貶されることはあっても、褒められることの無かった俺はどう反応すればいいのかわからず照れ隠しに何でもないフリをした。
だけど、やっぱり顔がほころんでしまう。
そんな俺を見てイリヤもにっこり笑う。

「さぁ、シンシア達が待ってるわ、帰りましょう 」

「うん、そうだね 」

心配してるだろうな。それともこの未来はシンシアに見えていただろうか?
どっちにしても、早くシンシアの顔が見たい。




「お母さん! 」

捕まっていた人達と村に戻ると、俺が助けたあの子が自分の母親を見つけて飛び出して来た。

良かった、あこの子の母親が無事で。
でも、命を落とした人もいる。一長一短で喜べないな・・・

「カイン様! ご無事ですか? お怪我はございませんか? 」

声の方向を見ると、シンシアがキースに抱き抱えられて俺の所にやって来た。
何でお姫様抱っこされてるんだ?

「うん、大丈夫。何とかなったよ 」

「凄いです。さすがカイン様です 」

「それより、どうかした? 」

「何がですか? 」

キースに抱き抱えられて来たシンシアは、俺の前でキースに降ろしてもらいながら首を傾げる。

「いや、キースに抱き抱えられてたから、足でも怪我した? 」

「あ、いえ 」

俺の質問にシンシアは少し恥ずかしそうに俯いた。

「ん? 」

なんだろう? 

「・・・・・・カイン様がお戻りになったと聞いて居てもたってもいられなくて、早くカイン様のご無事を確認したかったので、キースに私を抱えて走ってもらったんです 」

え? 何それ、嬉しいんだけど。シンシアの表情と言葉が俺の心を鷲掴みにする。
何これ、きゅんってなった。

「そうなんだ 」

嬉しいのと恥ずかしいのとで照れる。
シンシアもちゃんと俺の事を心配してくれてたんだと分かって嬉しかった。
そう思った次の瞬間にはシンシアは2人の方を向いていた。

「イリヤ様もマリン様もご無事で何よりです 」

「うん、カインが飛竜をなだめてくれたからね 」

「飛竜を? 」

「うん、伝説の青竜に乗って戻ってきた時は本当にびっくりしたわ 」

「青竜?? 」

イリヤの言葉に反応したのはキースだ。

「カインクラム様はあの伝説の青竜を手懐けたのですか? 」

「手懐けたって言うか、俺を食べようとしてたんで話しかけたらなんか気に入られた? のかな? 」

キースはますます信じられないという表情で俺を見る。
シンシアはいつも通り、にこにこと笑っているだけで、特に驚いた様子はない。
やっぱり、シンシアには見えていたんだろうか?

「そもそも青竜と話をする事なんて出来るんですか? 」

「うん、なんでか知らないけど、話が出来たんだよね 」

俺にもなぜ話をすることができたのか分からない。

「青竜に会って無事に帰って来る人間がいるとは思いませんでした。カインクラム様は特別な力をお持ちなのですね 」

キースはなんか想像もつかない事実を俺の能力のせいにして納得したいみたいだけど、俺の能力? 魔力も無いのにそんな特殊能力が使えるわけが無い。

「ああ、それと、青竜から預かったものがあるんだ、村人には青竜が原因だからあまり見せられないけど・・・」

そう言って俺はカバンの中に入れていたルードを見せた。

「それは! 」

キースが驚いて食いつく。

「なんですの? 」

シンシアは分からずに首を傾げる。

「青竜の子供なんだけど、面倒見るのを押し付けられちゃったんだよね 」

「竜の子供ですか? 」

「うん、両手のひらに乗るくらい小さくて可愛いよ 」

シンシアに見せてあげられないのが残念だな。
そう思っていると、ルードがカバンから飛び出してシンシアの腕に飛びついた。

「きゅーっ 」

シンシアは突然の事に少しびっくりしたみたいだけど、そっと片手でルードに触れる。

「きゅーっ 」

ルードもシンシアに触ってもらって嬉しそうだ。

「ホント、小さいですね、鳴き声も可愛いです。名前はあるのですか? 」

「うん、ルードって名付けた 」

シンシアの穏やかな微笑みにほっと一安心する。

「ルードですか、これからよろしくね、ルード 」

「きぅー! 」



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