婚約破棄してやる!って宣言した婚約者が可愛かったんだけど、どうしたらいい??

さらさ

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21話 面白設定

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「触れないって、何それ? 」

イリヤの隣でマリンも俺を見つめる。

「前に俺達が何で飛ばされたか分からないって言っただろ? あれ、俺とシンシアが原因なんだ 」

「どういう事? 」

「俺たちにもよく分からないんだけど、俺がシンシアに触れたらどこかに飛ばされるんだ 」

「何その面白い設定 」

イリヤが水を得た魚のように生き生きとした目で俺を見る。

「面白設定とか言うなよ、こっちはそれで苦労してるんだから 」

「ねぇねぇ、やってみてよ! 」

「無理だよ、やったらどこ行くか分かんないんだぞ? 」

イリヤは新しい玩具を得たように面白がってる。

「でも、そんな便利なものがあるならわざわざグリエル公国に入る事無いじゃない 」

イリヤの言う事は確かにそうだ。だけど、せっかくここまで来たのに振り出しに戻る可能性もある。もっと遠くに飛ぶ可能性もある。
もしかしたら上手く行って、国に帰れるかもしれないけど、一か八かの賭けだ。

「国に帰れるまで何度でも試してみれば良いんじゃないの? 」

俺が思案しているのを見て、イリヤが言う。
確かに俺も最初はそう思った。だけど、シンシアに乱用するのは危険な気がすると言われたので控えてる。
感のいいシンシアだから何かを感じているのかもしれない。それとも何か嫌な未来が見えていたのかもしれない。

「シンシア、どう思う? 」

シンシアならまともな意見をくれそうだと思いシンシアに聞いてみる。

「そうですね、何度か試してみるのも良いかもしれませんが、危険も含まれています 」

それは、何回か試したら帰れるかもしれないけど、そのどこかで危険が待っているって事か?

「大丈夫かな・・・ 」

「分かりません。自分の事はぼんやりとしか分からないので何とも言えません 」

そうなんだ、確かに自分の未来が見えるのも怖いもんな、だけど、どんな機嫌が待ってるかも分からないのに飛ぶのは危険だ。どうする?

「何が起こっても私たちが付いてるわ 」

頼もしい事を言ってくれるイリヤは満面の笑みで、目はキラキラと輝いている。
絶対に試したいだけだろ・・・・・・

「分かった、危険な所に出たら直ぐに飛ぼう。イリヤは俺に、マリンはシンシアに触れて、この移動は俺かシンシアに触れてないと置いてかれるからな、絶対に離すんじゃないぞ」

「分かったわ 」

「あ、そういえば、馬は? どうする? 」

原理からすれば乗っている馬毎飛べるんだろうけど、本当にそうなんだろうか? 建物の中に移動してしまったら?
まぁいいか、試して見ればわかる。

「馬に乗ってるから馬ごと行くと思うけど、馬にもちゃんと触れといてよ 」

「「「了解」」」

みんなの返事を待ってシンシアを見る。

「シンシア、触るよ 」

「はい 」

俺がシンシアの手に触れた瞬間、目の前が真っ白になる。



そして次の瞬間、目の前にあったグリエル公国に入る前に超えるべき山は無くなっていた。

「・・・・・・凄い、本当に移動したわ 」

辺りをキョロキョロと見回すイリヤを見ながら、馬も一緒に移動出来たことにほっとする。
これって何人まで移動可能なんだろう?
そんな疑問が浮かんだけど、飛んだ場所の確認の方が先だ。

「ここは何処だろう? 」

目の前に見えていた山は無くなったけど、どこかの街道みたいだ。

「ねぇ、ここって・・・ 」

マリンの声に後ろを振り返ると、少し離れた所に街が見えていた。

「あれ・・・? ここって通って来た道? 」

「そうみたい・・・ 」

はるか後方に2週間前に食料を買い込んで出た街が見えていた。

「振り出しに戻った・・・・・・ 」

「まだまだ、もう一度試してみよう? 」

肩を落とす俺にイリヤは嬉しそうに言う。

「・・・面白がってるだろ 」

「え? そんな事ないよ? ちょっと、ちょーーーっとだけ楽しいけど、そんなのほんのちょっとよ? 」

・・・絶対うそだ。めちゃくちゃ楽しんでる。目がキラキラしてる。
まぁ、こんな経験初めてだろうから、メンタル強い奴は楽しめるのかな、俺は最初の時いっぱいいっぱいで無理だったけどな。
イリヤは頼もしいな。

「うん、そうだね、もう一度試そう 」

にこにこと笑うイリヤに答えてシンシアを見る。

「シンシア、もう一度やってみるよ 」

「はい 」

「みんな、ちゃんと俺かシンシアに触ってるな? 」

皆が頷くのを確認してから、もう一度シンシアの腕に触れる。

次の瞬間、光も入らない鬱蒼とした森の中に居た。

「はっ、カイン! すぐに飛んで! 」

イリヤの声の前に俺にも伝わった。ここはヤバい。禍々しい魔力が満ちている魔物の巣窟だ。

「みんな繋がってるな、飛ぶよ! 」

そうして三度目の移動の先に現れたのは城。
紛れもなく何処かの国の城だ。

「何奴! どこから入った! 」

気が付くと目の前に剣を構えた兵士が二人立って居た。見ると後ろにも三人居る。
目の前にそびえ立つ白亜の城にほんの少し目を奪われている間に囲まれていた。



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