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24話 第二王子

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「まぁ、お二人はお揃いのお衣装でいらっしゃったのですね? とても素敵ですわ 」

しばらく二人の世界に浸っていたエリザベートが我に返って恥ずかしそうにレオルカ様とお嬢様を見て、やっと衣装に気がつく。

「ありがとうございます 」

素直に礼を言うお嬢様を横目に、エリザベートはレオルカ様に近づくとこっそり耳打ちする。

「妹君とお衣装を合わされるということは、まだ結婚するおつもりは無いのですね? 」

「ははっ、エリザベート嬢はお見通しだね、うん、今日フェリスが私をここに呼んだのはそれが目的だって分かってるからね、事前に手を打たせてもらったんだけど、あの人の事だからそれくらいは読んでるかな 」

「まぁ、そうですわね、ふふっ 」

フェリス王子の事を思い浮かべて肩を竦めて笑い合う二人、二人の会話から察するに、フェリス王子はレオルカ様に結婚を促したくてこのパーティーに呼んだようだ。
レオルカ様も21歳なのだからそろそろ身を固めろって事だろうな。

「でも、そう言うフェリス様こそ結婚相手を早く見つけないといけないんじゃないの? 」

キリクも二人の会話に参加する。
なるほど、フェリス王子には婚約者は居ないのか。

「そうなんだよね、フェリスは人の世話は焼きたがるけど、自分は一生独身でいいとか言ってる奴だからな・・・ そっちの方が心配だよね 」 

「フェリス様が一生独身だなんて、世の女性達が嘆きますわ 」

「そうだよね、不特定多数の女性に手を出してる訳でも無いし、ほんとに女性に興味あるのかも疑わしいね 」

「何が疑わしいって? 」

レオルカ様の言葉を追いかけるように別の声が言葉を重ねる。
声のした方を皆が一斉に見る。そこには腰まで伸びたサラサラの金髪の髪を後ろで束ね、アメジストの様な瞳を穏やかに細めてレオルカ様を見つめるフェリス王子が立っていた。
フェリス王子は色白で物腰が柔らかく中性的な美しさを持っていて、俺も王都にいた時はその美しさの噂くらいは聞いていたが、確かに美人だ。

「フェリス様! どうしてここに? 」

レオルカ様がフェリス王子の登場に驚きの声を上げる。
確かにここはエントランスだ。主催者であるフェリス王子はホールの中で招待客の相手をしているはずだ。

「君が来たって連絡を受けてから随分待ったけど、なかなか現れないから迎えに来たよ、久しぶりだね、レオルカ 」

「私こそご無沙汰しております。フェリス様におかれましてはお元気そうで何よりです。今日はお招き頂きましてありがとうございます 」

ニッコリ笑ったフェリス王子に対し、レオルカ様は畏まって恭しく挨拶をする。

「そんな堅苦しい挨拶はいいよ、そちらの女性は? 」

フェリス王子はレオルカ様の挨拶を堅苦しいと笑い飛ばし、レオルカ様の斜め後ろに控えているお嬢様に目を留めた。

「妹のアイリーンです 」

「君がレオルカ自慢のアイリーン嬢か、よろしく、僕の事はフェリスと呼んでね 」

「アイリーンと申します。どうぞよろしくお願い致します 」

「うん、レオルカが自慢したがるのもわかるね、とても美しい 」

「まぁ、ありがとうございます。ですがフェリス様には及びませんわ 」

「いやいや、僕は女性と間違われる事が多いだけで美しいとは程遠いよ 」

当たり障りのない会話が続く。
フェリス様の美しさにお嬢様も一目で魅入られたのか、頬をほのかにピンク色に染めにこにこと可愛く微笑んでいる。
そんなお嬢様をフェリス様も微笑んで見つめ返した後、その微笑みをレオルカ様に向ける。

「で? 僕の何が疑わしいのかな? 」

「え? なんの事? 」

「へぇー? 惚けるんだ? 僕はちゃんと女性が好きだよ、決してレオルカが好きとかじゃないからごめんね? 誤解のないようにね? 」

「ぶっ! どこから聞いてたんだよ! てか、俺もそんな趣味はないわ! 」

この二人は王都で出来ているとでも噂されていたのか、妙に焦るレオルカ様。
フェリス王子という人はなかなか手強い人物のようだ。あのレオルカ様がこんなに動揺する姿は初めて見た。

「あはは、久しぶりにレオルカの顔が見れて嬉しいな、今日はゆっくりしていってね、キリクとエリザベート嬢もね 」

「「はい 」」

「じゃあ、また後で 」

フェリス様は悪戯っぽく笑ってそう言うと優雅な物腰で会場へ戻って行った。

「私達も会場に入ろうか 」

「そうだね 」

レオルカ様の声にキリクも頷き、歩き出す。
その後をお嬢様もついて行きながらこっそりと俺に話しかける。

「フェリス様って初めてお会いしたけど、とても綺麗な方ね、びっくりしちゃった 」

「そうですね、レオルカ様とはまた違った美しさをお持ちですね 」

そんな二人に並んでも見劣りしないお嬢様もとても美しいんだけど、それは言わないでおこう。
言っても本気で捉えてはくれないだろうから。








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