転生魔王は今日もお嬢様を愛でる。

さらさ

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37話 恐怖の時間(アイリーン)

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どうしよう、どうしよう、どうしよう、やってしまったわ、私誰かに誘拐されたみたい。

レオルカ兄様に早く状況を聞きたくて、レオルカ兄様の帰って来たのを確認する為に少し道に出てみたのがいけなかったわ、それもルーが居ない時に、何で私はあんな行動をしてしまったのかしら、きっと今頃ルーが焦ってるわ、責任感の強いルーの事だから自分のせいだと思ってる。
どうにかして抜け出したいけど、ここはどこなのかしら。

突然誰かに口を塞がれたのは覚えてる。
そして気が付くと、ロウソクの光だけが灯った暗い部屋に寝ていた。
両手両足は縛られてるし口も塞がれてるので叫ぶことも出来ない。
周りには誰も居ないみたいだけど、私は何故誘拐されたのかしら、今の所私に危害を加える様子はないみたいだけど、それも何時までなのか分からない。
レオルカ兄様に余計な心配をかけてしまったわ、今は私がこんな所で捕まってる時じゃないのに・・・・・・
どうすればいいの? ルー、助けて・・・・・・って泣いてる場合じゃないわ、きっとルーは私のことを探してくれてる。
助けに来てくれた時に私が泣いてたらルーが心配する。
・・・・・・ああ、昨日は何であんなことを言っちゃったのかしら、私の気持ちを伝えるなんて、真面目なルーにとっては重石になっただけじゃない。

私って本当にバカだわ、ルーに気持ちを伝えることが出来て少し胸の奥がスッキリしてるなんて、自分勝手にも程がある。
ルーはきっと気にしてる。自分を責めてる。
今日は気まずくていつものように接してしまったけど、今度会えたら「ルーのことも考えないで自分の気持ちを押し付けてごめんなさい」って謝りたい。
・・・・・・私はここから生きて帰れるのかしら・・・・・・


冷たい石壁に囲われた薄暗い部屋に閉じ込められてどれくらい経ったのか、扉の外で足音が聞こえる。
1人じゃない、何人か居るみたい。
お願い、来ないで・・・・・・そう祈る私の想いは虚しく扉が開かれる。
扉の外も薄暗いロウソクの明かりしかないらしく、光が差し込むことは無かった。

「おお、本当だ、えらいべっぴんさんだなおい 」

無造作に入ってきた男が私を見るなり軽く口笛を吹く。

「綺麗な嬢ちゃんだけど、手は出すなよ、あのお方が怒るぞ 」

「わかってるさ、捕まえた嬢ちゃんが上玉だってんで見に来ただけだよ、上玉所か特上だったけどな、まあ、俺にゃ無縁なお嬢さんには違いねぇ、あのお方が居なけりゃ手篭めにしてぇ所だが俺も死にたくねえからな 」

あのお方とは誰のことなのか分からないけれど、とりあえず私の身の安全は今の所「あのお方」のおかげで保証されているみたい。

男達は私を眺めて会話をしたあとまた出て行った。
きっちりと閉められた扉を見ながらほっと胸を撫で下ろす。
怖かったけど、今すぐどうこうされる事はなさそうだわ、・・・・・・ルー・・・・・・早く助けに来て・・・・・・でもここがどこかも分からないもの、きっとルーも今頃探してるわよね・・・・・・。


数時間してロウソクの明かりが消えたけれど、誰も付けに来ることは無い。
私の微弱な魔力でもロウソクに火を灯すことくらいは出来るのにやってみたら何故か魔法が発動しなかった。

暗闇で、今が何時なのかも分からない。どれだけ時間が経ったのかも分からない、時折遠くで聞こえる男達の声にビクビクしながら時間を過ごした。

そして、どれだけ時間が経ったのか、私には永遠のように長い時間の後、外が少し騒がしくなり、誰かがこちらに走ってくる足音が聞こえた。

とうとう殺されるのかしら・・・・・・
そう思って身構えていると、扉が勢いよく開いた。

「お嬢様! 」

長い間暗闇の中に居たので外のロウソクの明かりでも眩しく感じる。
光のせいで入ってきた人が誰なのか分からないけど、この声は・・・・・・そう思って胸が熱くなるのと同時に手足と口に巻かれていた布がほどけ落ちた。

「・・・・・・!! ・・・・・・ルー!! 」

「お嬢様! 」

ルーの名前を叫んだ次の瞬間には私はルーに抱きしめられていた。

「お嬢様、申し訳ありません! 俺のせいです! 俺がもっと警戒していればこんなことにならなかったのに! 」

「私こそごめんなさい、勝手な行動をしたばかりに・・・・・・私は大丈夫よ 」

「本当に? どこも怪我してませんか? 」

私の言葉を確認するように、ルーが私の肩を掴んであちこち見ている。

「うん、ただここに閉じ込められていただけだもの、大丈夫 」

「・・・・・・無事で良かった・・・・・・ 」

ルーは本当にホッとしたように大きく息を吐き出しながらまた私を包み込むように抱きしめた。

暖かい・・・・・・ルーの香りだ・・・・・・
ルーの体温が心地よく、何時もそばに居てくれるルーの香りにほっとして、本当に心から助かったのだと安心した途端に張り詰めていたものが一気に解れ、涙が溢れてルーの肩を沢山濡らしてしまっていた。
ルーは私が泣いている間、何も言わずにしっかりと、でも優しく抱きしめていてくれた。





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