侯爵令嬢は弟の代わりに男として生きることを決めました。

さらさ

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24話 戸惑い

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「そういえば、さっき君に声をかけてた二人は顔見知り? 僕の連れだって嘘ついちゃったけど、大丈夫だった? 」

会話の感じからして、どうもあの二人はフローラ嬢の事を知ってそうだった。
僕が嘘をついた事でフローラ嬢に迷惑が掛かってはいけないと思って聞いたけど、僕の言葉にフローラ嬢は少し俯く。
まずいことを聞いちゃったのかな。

「あのお二人は私のお父様のお友達の息子さん達で、小さい頃はよく家に遊びに来ていたんです。でも、いつも意地悪をされて、私はあの二人があまり好きではなかったのです。しばらく会っていなかったのですが、今日、久しぶりに出会ってしまって・・・一緒に踊るように誘われたのですが、あの二人がまた何か意地悪をするのではないかと怖くて・・・」

本当に困ったように話すフローラ嬢。
でも、それって多分、あの二人がフローラ嬢を好きなんじゃないだろうか?
好きな子だからこそいじめたり、ちょっかいかけたくなるって、よくある話だよね。
でも、彼女からしたら本当に嫌な思いをしてきたんだろう。
嫌いになってしまうくらいに。

「そうなんだ。でも、あいつらは第七騎士団に配属になったから、もう会うことはあまりないかもね。」


「こんな所で何してるんだ? 」

急に声を掛けられて声のした方を見ると、さっきの二人が立っていた。

「何してるって、休憩してるんだけど? 」

二人が近づくのを見てフローラ嬢が僕の腕にしがみついてくる。
怖いのかな?

「こんな人気の少ないところでか? 」

「騒がしい所より、心が休まるだろ? 何でそんなこと聞くんだ? 別にお前らには関係ないだろう。 」

「なっ! 関係ある!」

何が関係あるんだろうか?
僕が彼女の近くにいるのが気に入らないのか?

「僕の事が気に入らないなら僕にだけ言えばいいだろ? 彼女が怖がってるじゃないか。」

僕はそう言いながら立ち上がって彼女の前に立つ。

「いい所の坊ちゃんかもしんねーけど、お前みたいなちっちゃいのにフローラを守れるわけねーだろ!」

僕の行動に逆上したのか、一人が拳を振り上げる。
それを見てフローラ嬢が「きゃっ」と悲鳴をあげる。
僕はその拳を交わしてそのまま片手で腕を掴んでひねりあげた。

「痛!」

腕を背中に回され、捻られた男が痛みで顔を歪める。

「女性の前で暴力なんて、騎士のする事じゃ無いんじゃないのか?」

「てめぇー!」

連れが抑えられたのを見てもう一人が向かってくる。
ここが社交界の場だって理解してるんだろうか?
僕は暴れちゃまずいよね?

そう思いながら押さえたやつを左手で押さえたまま、もう一人が殴りかかって来た腕を取ってそっちもひねりあげる。

「女性の前で紳士になれない奴はモテないと思うよ? 」

僕に抑えられて身動きが取れない二人は悔しそうに歯噛みして僕を見る。

「せめて好きな女性の前では冷静でいないと。」

僕がそう言うと、二人はカッと赤くなる。

「お前に何がわかるんだよ! 」

「分からないよ。」

僕の素直な答えに意表をつかれたのか、口をパクパクさせる。

「分からないけど、嫌がる女性に無理やり迫ったり、暴力で解決しようとするのは間違ってるんじゃないかな? それくらいは分かるよ? 」

「くそ、こんなチビに負けるなんて・・・」

「僕の事を侮りすぎたね、もう彼女にちょっかい掛けないって言うなら離してあげるけど、約束できる? 」

「くっ・・・」

僕の質問に無言で答える二人。
これは肯定と捉えていいんだろうか?
悩んでいると、くくっと笑いながら近づいてくる足音に気が付いた。

見るとギルがこっちに向かって歩いてきていた。

「ギル。」

「お前ら、コイツにケンカで勝とうなんて100万年はえーよ。」

そう言って可笑しそうに笑いながら近づいてきたギルを見て二人が怯むのがわかった。

僕一人にも勝てないのに相手が増えたことに対してびびってるのかな?

「もう一度聞くけど、約束出来る?」

そう言うと今度は素直に頷いた。
なので二人を解放してやると、慌てて逃げて行く。

「あの、クリス様! ありがとうございました! 」

振り返ると、フローラ嬢が立ち上がって頭を下げていた。

「別に大したことしてないよ。」

「クリス様はとてもお強いのですね! 私びっくりしてしまいました。」

そう言って僕を見るフローラ嬢は目をキラキラと輝かせている。

「うん、まだまだだけどね・・・」

強いと褒められるとちょっと照れる。
頑張って鍛錬してきた甲斐がある。

「それよりギル、良くここが分かったね。」

ギルの邪魔をしちゃいけないと思って見えない所にいたのに、何でわかったんだろう?

「お前な、動くなよ、心配するだろう。」

ギルが僕の頭を撫でながら見る。

「ごめん。」

とりあえず僕は素直に謝る。

「で、そちらの方は?」

ギルに言われて、フローラ嬢の事を思い出す。

「あ、ごめん、フローラ嬢だよ、さっき会って少し話をしてたんだ。」

そう言うと、ギルがフローラ嬢に手を差し出す。

「フローラ嬢、俺はギルバートと言います。よろしくお願いします。」

「フローラと申します。よろしくお願いします。」

フローラ嬢がギルの差し出した手に手を重ねると、ギルが彼女の手の甲に軽くキスをした。

ギルでもこんな事するんだ。
僕は今までに見た事ないギルにちょっと戸惑う。
そっか、ギルは女性に対してはこんな感じなんだ・・・


「そろそろ戻ろうか。」

僕は何だかモヤモヤする気持ちが何なのかよく分からないまま、フローラ嬢に声をかけると、三人で会場に戻った。





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