侯爵令嬢は弟の代わりに男として生きることを決めました。

さらさ

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40話 おっちょこちょいな令嬢

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「マリアンヌ様、私にお話って何ですか?」

会場から少し離れた所にあるテラスに出ると、彼女達が立ち止まったので、話を促してみる。
何か僕に聞きたいことでもあったのかな?

「貴方、本当は何処の誰なの?」

マリアンヌ様が唐突に聞いてくる。
うーん、今の僕は何処の誰でもないんだよな・・・レティシアは金髪だし、黒髪のシアっていう女性は実際存在しない。

「私・・・は・・・」

「怪しいわね、貴方、クラウス様をたぶらかしているんじゃなくて? 」

言い淀んでいると、マリアンヌ様が蔑むように見てくる。

「そんな事ないです! 」

「今まで誰も選ばなかったクラウス様が突然貴方を連れてくるなんて、絶対におかしいわ! 」

うん、確かに、おかしいよね。

「そんなこと言われても・・・」

恋人を演じているだけなので、そんなことを言われてもどう答えたらいいのか困る。
でも、クラウス様が恋人だって信じさせないといけないんだよね、しっかりしないと。

「クラウス様が私を選んでくださったのです。こればっかりは嘘ではありません。」

僕はマリアンヌ様の目を見つめて本当なのだと信じさせようとした。
だけど、マリアンヌ様は僕の言葉に明らかに怒りを表す。

「それは私が振られた負け犬だって言いたいの? 」

え? そんなことを言ったつもりはなかったんだけど・・・
何でそんな事になるの?

「ちょっと顔が良いからって、思い上がらないでちょうだい! 」

マリアンヌ様はそう言いながら僕の肩に勢いよく手を伸ばしてくる。

僕は思わず避けてしまったんだけど、マリアンヌ様は勢いが強かったのか、僕が避けた事でそのままよろめいて倒れそうになる。

「キャッ! 」

ええ? 何で?
と思いながらも咄嗟に彼女のお腹を右手で支えて受け止めた。

「大丈夫ですか? 」

驚きで崩れ落ちる彼女を支えながら問いかけると、彼女はキッと僕を睨みつける。

「何するのよ! 危ないじゃないの! 」

え? 僕のせい? 
なんかちょっと理不尽な気がするんだけど・・・

「離してちょうだい! 」

そう言って僕の手を振り払って立ち上がった彼女だけど、慌てて足がもつれたのか、また転びそうになっている。意外とおっちょこちょいだな。
彼女が転びそうになっているその先にはガラスの扉がある。

「危ない! 」

僕は咄嗟に彼女の腕を引っ張ってかばいながら一緒にガラス扉に突っ込んでしまった。

ガシャーーーン!!

大きな音を立ててガラスが割れる。
その音にみんなが何事かと集まり出す。

「マリアンヌ様、大丈夫? 」

僕は胸に抱えたマリアンヌ様をそっと離しながら話しかける。
僕は背中から突っ込んだからあんまり痛くない・・・?・・・ん?柔らかい?

僕を包む柔らかい感触に後ろを見ると、クラウス様が僕を抱えて背中から突っ込んでいた。

「クラウス様!! 」

「全く・・・シアは無茶をするな、これだから目が離せない。」

そういうクラウス様の顔には窓ガラスで切った擦り傷がいくつかある。

「シア様・・・クラウス様・・・ありがとうございます。」

マリアンヌ様が起き上がりながらお礼を言ってくれる。

「マリアンヌ様、お怪我は無いですか? 」

「はい、シア様が庇ってくださったので何処も・・・シア様! お顔に傷が!! 」

マリアンヌ様が僕の顔を見て慌てる。
傷? 僕も切っちゃったのかな?

「私はこれくらい大丈夫です。マリアンヌ様にお怪我が無くて良かった。」

心配かけないようににっこり笑ってみせると、マリアンヌ様が頬を赤らめる。

「私の心配なんて・・・本当に申し訳ございません。」

マリアンヌ様は自分の行動を反省してくれたようだ。
良かった。

それより、クラウス様だ。
マリアンヌ様が僕から離れてくれたので、僕は僕を抱えてくれてるクラウス様に向き直る。

「クラウス様、ごめんなさい! 大丈夫ですか? 」

慌ててクラウス様を起こそうと手を引っ張りながら頭と背中を確認する。

「私はなんともない。それより、シア、君は女の子なんだよ? 顔に傷を作って平気な顔しないで欲しいな・・・」

そう言いながら僕の傷口の血を親指で拭ってくれる。

「クラウス様・・・ありがとうございます。」

いつ僕の後ろに入ったんだろう?
全然気が付かなかったけど、僕が顔の傷一つで済んだのはクラウス様のおかげだ。


「すごい音がしたと思ったら何事だ? イチャイチャタイムの披露か? 」

カルロス様がそんな事を言いながら現れた。
イチャイチャタイム?
そう言われてよく見ると、僕はクラウス様の膝の上に乗って、クラウス様の頭の傷を確認しようと手を頭に回していた。クラウス様は僕の顔を包むように触れている。
周りから見たらとても恥ずかしい場面に見えているのだと気がつく。

「あっ、ごめんなさい! 」

僕は慌ててクラウス様から離れる。

「ちょっと令嬢を庇って窓ガラスに突っ込んでしまっただけですよ。お騒がせして申し訳ない。」

クラウス様は何事もなかったように立ち上がると、みんなに事の成り行きを説明して、危ないので近寄らないようにと指示を出す。

「兄上、私はシアの傷の手当をしてやりたいのでこれで失礼します。」

「ああ、早く手当してやれ。」

カルロス様が後は任せろと言うとクラウス様は僕を促して会場を後にした。





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