侯爵令嬢は弟の代わりに男として生きることを決めました。

さらさ

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41話 クラウス様と俺 (ギルバート)

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「今日は俺の練習に付き合って頂いてありがとうございます。」

俺は改めて向かい合ったクラウス様に頭を下げる。

「お互い、多分目的は同じだろう? その為なら協力するさ。」

クラウス様はニヤリと笑いながら俺を見る。
クラウス様の言いたいことは分かる。
お互いクリスへの気持ちには気が付いているんだと言う前提の話だ。
クリスを守るために、俺にもっと強くなってもらわないと困るって言いたいんだ。

それを分かっているから、今日はクラウス様と差しで教えて欲しいと頼んだ。
クリスがいると、俺達はどうもクリス中心になってしまうので、クリス抜きで、本気で俺を強くして欲しかった。

「クラウス様、この前クリスが顔に傷を作って帰ってきました。クリスはクラウス様に稽古をつけてもらっていて切ったと言ったけど、違いますよね? 何をしたんですか? 」

この前、クラウス様の手伝いをすると言って出ていったクリスが帰ってきた時に、顔に傷が出来ていた。
翌日見たクラウス様の顔にも複数の傷があって、練習の怪我ではないと思った。
クリスがクラウス様にあんなに傷を付けられるはずがない。

二人は何かを隠している。
その事に俺はイライラした。
しばらくしてそれが嫉妬なのだと自覚するまで、クリスにもあたってしまった。

俺の質問に、クラウス様はクスクスと笑う。

「それは言えないよ。クリスと私だけの秘密だ。」

その言葉に俺は気持ちが高ぶる。
落ち着け、冷静に話がしたいんだ。

「クラウス様はクリスの事を守ってくださると信じていたので、あの日は任せました。だけどクリスは怪我をして帰って来た。何があったんですか? 」

二度目の問いかけに、クラウス様が嘆息する。

「あの日は、あるパーティーにクリスに手伝いで行ってもらってたんだよ。そこで偶然近くにいたご令嬢が倒れそうになって、それを庇ってクリスがガラス戸に突っ込んだ。慌てて私がガードに入ったけど、クリスの綺麗な顔に傷を一つ付けてしまった。申し訳ない。」

クラウス様の言葉には嘘はなさそうだった。
それが真実なんだろう。

「そうでしたか、さすがクリスですね、男らしい。」

「ああ、そうだね、自分の怪我よりも、無傷だったご令嬢の事を心配していたよ。クリスらしいね。」

クラウス様は思い出したようにふっと笑う。

その表情に、俺の知らないクリスが居る気がして、少し焼けるけど、やっぱりクリスはどこに居てもクリスらしいと思ってしまう。
自分のことよりも、周りが傷付くことを嫌がる。
そんなクリスだからこそ、俺も守ってやりたいと思うし、クラウス様も身を呈して守ったんだろう。

「クラウス様、クリスを守って頂いてありがとうございます。」

「別に、ギルの為に守ったわけじゃないよ、後、報告しとくけど、兄上にはクリスが私の恋人だと思わせているから、変に勘ぐられる言動はしないようにね。」

「え? 」

クリスがクラウス様の恋人?

「クラウス様、まさか、クリスに気持ちを伝えたのですか? 」

俺の焦りを他所に、クラウス様は涼し気な表情で俺を見る。

「いや、まだ伝えていないよ、兄上から守るためにそう思わせただけだ。」

その答えにほっとしてしまう。

「クラウス様は、クリスに気持ちを伝える気は無いんですか?」

クリスがクラウス様のことを好きなのかは分からないけど、好意的に思っているのは確かだ。
クラウス様が告白したらクリスは受け入れてしまうんじゃないだろうか?

「今の所は見守るつもりだけど、私も男だからね、何がきっかけで気持ちを伝えたくなるか分からないから約束は出来ないよ、それより、ギルは気持ちを伝えないままで良いのか? 私に先を越されるかもしれないよ? 」

クラウス様は余裕の表情で俺を見る。
クラウス様は何でそんなに余裕たっぷりなんだ、クリスがクラウス様を選ぶ自信でもあるのか?

俺? 俺は・・・気持ちを伝えて、気持ち悪いと思われるのが怖い。
今までのように接してくれなくなるのが怖い。
だけど、このままクラウス様に取られるのを指をくわえて見ているのも嫌だ。

クリスがクラウス様を選ぶのなら仕方ないと思うけど、その時俺はどうするだろう?
嫌われても、自分の気持ちを伝えないままだと後悔するんじゃないのか?

ずっとこのまま友達でいる事が出来るだろうか?

「俺は・・・クリスに笑っていて欲しい。その為なら何でもする。」

「それは苦しくないのか? 」

絞り出すように出した答えを、クラウス様は簡単に壊そうとする。
それが俺の本心じゃないと気がついているかのように。

「それは・・・」

「ギルも伝えたいと思った時は伝えたらいいんじゃないのか? それで後悔するならやめとけ。」

クラウス様は俺の後押しをしてくれているのか?
恋敵に? まさか自滅を促しているのか?
でも、今のクラウス様は親身に俺のことを思って言ってくれているように思う。

「そうですね、俺も男なんで、クラウス様より先に伝えたくなるかもしれません。」

少し微笑みながらクラウス様を見ると、クラウス様も、にっこり笑った後、剣を突き出す。

「覚悟が出来たならもっと強くなれ! 」

俺はクラウス様の剣を受けながら話す。

「はい! 」






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