49 / 88
49話 絶望と後悔
しおりを挟む「嫌だ!、ギル、ギルーーーー!!!!」
僕は慌てて絶壁から下を覗いた。
遥か下で水しぶきが上がるのが見えた。
「ギル、ギル、嫌だ、嘘だ! 」
「クリス! 辞めろ! 」
僕も下へ行こうとするのを肩を引いて止められる。
見ると、魔物を全て退治し終えたクラウス様が剣を片手に僕の肩を掴んでいた。
「ギルが! ギルが! 助けに行かないと! 」
僕はクラウス様に縋り付くように見上げた。
だけど、クラウス様は首を横に振る。
「クリス・・・この断崖を下へ降りるすべはない。しかも下はかなり流れの早い川だ。下へ降りれたとしても、この場所にギルは居ない。流されてしまっているよ・・・」
「そんな・・・! ギルは? ギルはどうなるの? 」
「・・・この高さを落ちたんだ、・・・水面に叩きつけられて助からないだろう・・・」
「クラウス様、何言ってるの?水面なんだから助かるよ?きっとギルは生きてる、助けに行かないと!」
クラウス様の言ってることがよく分からない。ギルが死ぬはずない。
さっきまで普通に隣にいたんだよ?
「ねぇ、クラウス様! 」
取り乱す僕を、クラウス様が優しく抱きしめる。
「クリス・・・」
その優しい温もりに、一気に涙が溢れる。
「ギル、ギル! 嫌だ!! 何で?・・・・・・うっ・・・わぁーーっ! 」
クラウス様の胸に顔を埋めながらしばらく思いっきり泣いた。
泣き叫ぶ僕を、クラウス様はそっと包んでくれていた。
「ぼく・・・僕ギルに何も伝えてない・・・!」
自分が落ちる瞬間でさえ、僕に微笑んでくれた。
いつも優しいギル、ずっとそばに居てくれる当たり前の存在だと思っていた。
だから、男として生きると決めて、恋する心に蓋をしていた僕には、ギルが僕を好きだと言ってくれるまで、自分の気持ちにも気付けなかった。
やっと自分の気持ちに気付けたのに、僕に勇気がなかったから、ギルに僕の気持ちを伝えることが出来なかった。
居なくなってから後悔するなんて、
8年前と何も変わらない・・・
「僕・・・ギルが好きだ・・・どうしてあの時言わなかったんだ・・・」
クラウス様の胸の中で叫ぶ僕を、クラウス様は強く抱きしめた。
その温もりに、また涙があふれる。
「クリス・・・一度引き返そう。」
クラウス様の腕の中で泣き叫んでいた僕が落ち着くまで、クラウス様はぎゅっと抱きしめていてくれた。
泣き疲れて落ち着いた頃、クラウス様が言うその言葉に、僕は我に返る。
「嫌だ、クラウス様、ギルが生きていたら? 川を流されて何処かで助けを呼んでいるかもしれない。このまま帰るなんて出来ない! 」
訴える僕をクラウス様は優しく見つめる。
「この先私とクリスの2人で切り抜けられると思うか? 今のクリスは平常心じゃない。 私は・・・今のお前を守れる自信が無い。」
クラウス様が悲しそうに僕を見る。
「でも、このままギルを置いて帰れない! 」
もしかしたら生きているかもしれない。きっと大怪我をしている。
僕が行かなかったらギルはどうなる?
もし・・・本当にこの洞窟が魔族の住む国まで繋がっていて、そこまで流されていたら・・・
「僕は1人でもギルを探しに行きます! 」
「ダメだ! 」
「どうして?! 」
「ここまで来れたのも3人の連携があったからだ、クリス1人で何が出来る! 」
クラウス様はそう言ったあと、また僕を強く抱き締めた。
「私にはクリスの安全が最優先だ。ギルは・・・生きている可能性は低い・・・」
絞り出すように言うクラウス様に、クラウス様も辛いのだと理解した。
ギルのことも心配だけど、僕のことも考えてくれてる。
今の僕はきっと何をするか分からない。
ギルが居るなら危険に自ら飛び込んででも行ってしまいそうだ。
それを分かっているから、クラウス様は僕を止めようとしている。
それは団長として正しい判断だと思う。
僕の我儘でクラウス様を困らせる訳にはいかない。
まして、僕が1人で居なくなったらクラウス様も危険になる。
王子であるクラウス様を危険な目に合わせる訳にはいかない・・・
そう思うと、一気に身体の力が抜けて、クラウス様の腕の中で、呆然と空を見ていた。
ギル・・・僕はどうすればいいの?
「クリス、今は自分が無事帰ることだけを考えろ! 」
クラウス様にそう言われて、目の前に居るクラウス様に視点が定まる。
そうだ、進むのも大変だけど、戻るのも大変だ。
ここまで3人だから進んで来られた。
この道のりをクラウス様と2人で戻らなければいけない。
いつまでもクヨクヨしていられない。
クラウス様を守らなきゃ。
「クラウス様、我儘を言ってごめんなさい。もう大丈夫です。」
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【完結】公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる