侯爵令嬢は弟の代わりに男として生きることを決めました。

さらさ

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52話 同行者

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ふと目が覚めると、外が薄らと明るくなり始めた頃だった。

僕・・・自分のベッドで寝てる。
クラウス様が運んでくれたのかな?

久しぶりにぐっすり眠れて、頭がスッキリした気がする。
だけど、ギルはもう居ないんだ・・・
ギルの寝ていたベッドの方を見ると、ギルのベッドに人が寝て居る。

ギル?!

僕は慌ててベッドを降りてギルのベッドに走った。
そして、近づいて足が止まる。
ギルな訳が無い・・・

ギルのグリーンの髪じゃない。
栗色の髪、クラウス様だ。

ずっと僕の心配をしてくれて、クラウス様もあまり眠れていなかったはずだ。
クラウス様に気を使わせてばかりで、負担をかけていた。
深い寝息を立てて眠るクラウス様に「ありがとう」と呟く。

クラウス様を起こさないように、僕はシャワーを浴びて着替えを済ませると、自分のベッドに座って明けゆく空をぼんやりと眺めていた。


「ん・・・クリス・・・起きていたのか? 」

クラウス様が目を覚まして僕を見る。

「はい、クラウス様、迷惑をかけて本当にごめんなさい。」

「いや、いいんだ、それより、ギルのベッドを借りてすまなかった。」

「起きた時、ギルがいるのかと思ってびっくりしちゃった。」

僕は起き上がりながら話すクラウス様に、にっこり笑いかける。

「期待をさせてすまなかった。クリスを一人にするのが心配で、ギルのベッドを借りてしまったんだけど・・・クリスのベッドに添い寝の方が良かったか? 」

お茶目に笑うクラウス様に、僕も吹き出して笑ってしまう。

「それはさすがにご遠慮します。」

「あんなにひっついて寝た仲なのに? 」

その言葉に、思わず顔が火照る。

「クラウス様! 変な言い方しないでよ! 」

僕の表情にクスクスと笑うクラウス様、僕は頬を膨らませてクラウス様を見る。

「そんな可愛い顔しなくても、クリスは十分可愛いよ。」

可笑しそうに笑いながら言うクラウス様は、どう見ても僕をからかっている。

「こんな顔が可愛いはずないでしょ! 」

余計に顔をふくれさせながら怒ると、クラウス様は立ち上がって僕のベッドまで歩いてくると、僕の頬に触れる。

「クリスはどんな顔をしていても可愛いよ。」

そして僕を愛おしそうに見つめる。
クラウス様はこんな歯の浮くクセリフが何で言えちゃうんだろう?
王子様だから? 英才教育? 
なんてことを思っていると、クラウス様は僕の頭を撫でる。
そして、僕の隣に腰かけて僕を見た。

「クリス、準備が出来次第、もう一度レティシア探しに出るだろう? 」

その言葉に、僕はクラウス様を見つめて頷いて肯定する。

「その前に、同行者を探さなければならない。それは、君が女性だとバレる可能性を増やすことになるんだけど、大丈夫か? 」

僕の答えは決まっている。
僕が女だってバレたって、ギルを探しに行けるのならそんな事どうでもいい。

「はい、大丈夫です。」

僕の答えを聞いて、クラウス様は一拍置くと、また話し出す。

「実は昨日、君が倒れた後、兄とリオには洞窟の存在と魔族の国につながっている可能性を話した。後、何故そんなところに行ったのか聞かれたので、クリスの姉を探していたと話してある。あの洞窟の存在は誰にでも話せるものじゃない。信頼出来るものでないと、パニックになるので、多くの者を同行させる訳にはいかない。」

そこまで言って、また僕を見つめる。

「今回は洞窟の先がどこにつながっているのかの調査が目的だ。多くの者にこの話ができない以上、同行者は私やクリスと同等の実力者でなければならない。」

その言葉に僕も納得して頷く。

「私も誰に頼むか悩んだ。リオに頼みたいけど、団長が離れるのに副団長リオまで隊を離れるわけにはいかない。」

クラウス様の言うことは最もだ。
王都を守るのが第一と第二騎士団の役目なのに、第二騎士団の指揮者が2人とも抜けるのはまずい。

「・・・・・・私は反対だが、兄上が同行すると言っているんだ。」

クラウス様が言いよどみながら僕を見る。

「え? カルロス様が? 」

いやいや、第二騎士団の指揮者が2人とも抜けるのもまずいけど、第一と第二の団長が2人とも抜けるのもまずいでしょ。
しかも、2人とも王子様だよ?
カルロス様が怖いとか以前に、ダメでしょ。

「兄上には断ったんだけど、なかなか聞いてくれなくてね、確かに、同行者として兄の実力は申し分無いんだけど、クリスを危険な目に合わせられないし、クリスが嫌だろう? 」

うん、嫌だ。
そう思っていると、ドアが鳴った。

僕が返事をして入室を促すと、リオさんがドアを開けて覗き込んで来た。

「おはよう、2人とも起きてる? カルロス様が来てるんだけど、良いかな? 」

リオさんの言葉にドキッとする。
そんな僕に気が付いたのか、クラウス様が僕を片手で抱き寄せてくれる。
クラウス様の胸に押し付けられた耳に、クラウス様の鼓動が聞こえて少し安心する。

「いいよ。」


クラウス様の返事を聞いて、カルロス様が入って来た。




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