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61話 優しい腕
しおりを挟む「ギル、ギル、ギル・・・ギル・・・」
僕は床に座り込んだギルに抱きつくと、何度も名前を呼びながら泣いた。
ギルだ、ギルが生きてた・・・
もう会えないと思っていたのに、生きててくれた。
良かった・・・
「ごめん、僕のせいで・・・ギル・・・生きてて良かった・・・」
ギルの肩で泣く僕をギルは優しく抱きしめてくれる。
この温もり、ギルの腕だ。
「クリス、無事で良かった。お前のせいなんかじゃない、気にする事ないよ。」
ギルは優しく背中を撫でながら、僕が落ち着くまでしばらく抱きしめてくれていた。
「ギル、ごめんね。」
顔を起こしてギルを見ると、ギルはにっこり笑って僕を見る。
「気にするな、それより、俺はレティシアに助けられたんだ。目が覚めた時お前とよく似た顔があって、最初はクリスかと思ったけど、レティシアだと分かって驚いたよ、早くクリスにこの事を知らせてやりたいと思ったんだけど、動けなくてな・・・すまん。」
そう言うギルは足が折れているのか、固定している。
あの高さを落ちてこれくらいですんだんだから神様に感謝しないといけない。
「何で謝るのさ、こうやってギルが生きててくれただけで嬉しいのに・・・」
僕がまた涙を流して俯くのを見て、ギルが僕の頭を撫でる。
「俺もまた会えて嬉しい。」
「うん・・・ギル、ごめん、僕今思いっきり抱きついちゃったけど、痛くなかった? 大丈夫? 」
「ああ、大丈夫、これくらい何ともない。」
「嘘ばっかり、やっとちょっと動けるようになったばかりなのに・・・クリス、ギルはかなり無理してるよ。」
なんともないと言って笑うギルの横にクリストファーが座り込んで肩を貸しながら言う。
「おま、それ言うなよ、かっこ悪いだろ。」
「カッコつけても重症なんだからしょうがないでしょ。」
ギルはこの数日クリストファーと一緒に居たんだよな・・・ギルは申し訳ないと言いながらもクリストファーの肩に捕まって立ち上がる。
2人はとても仲良く見える・・・ギルはクリストファーを好きになっちゃったのかな・・・
「ギル! 」
クリストファーとギルの親密な感じに戸惑っていると、後ろから声が聞こえた。
「無事だったのか。」
振り向くと、クラウス様とカルロス様がこっちに向かって歩いてきていた。
「クラウス様・・・落ちてしまってすみませんでした。あの後クリスと2人で大変だったでしょう。」
ギルはクラウス様を見るなり頭を下げた。
ギルはいつも他の人の事ばかり考えて、自分の事は後回しだよな・・・
でも、確かに・・・ギルが落ちた後、僕は泣き叫んで大変だったと思う。
そんな僕をなだめて連れて帰って来るのは大変だっただろう・・・自分のことだけど・・・今更ながらクラウス様、ごめんなさい。
「そんな事気にするな、ギルが無事で本当に良かった。」
「こいつの為にも、生きててくれて良かったよ。」
クラウス様に続いて、カルロス様が僕の頭に手を乗せながらギルに話しかけた。
「カ、カルロス様?! 」
ギルはカルロス様を見るなり明らかに警戒した顔をする。
「何でカルロス様がここに? 」
「おいおい、酷いな、せっかく来てやったのに。」
そう言ってカルロス様が僕の肩に手を置こうとするのを、クラウス様が僕を引き寄せてガードする。
「ギル、カルロス様が一緒に来てくれたお陰で思ったより早く来ることが出来たんだ。カルロス様、めちゃくちゃ強いよ! 」
警戒するギルを安心させようとカルロス様の事を褒めると、ギルは余計に厳しい顔になった。
「クラウス様・・・大丈夫なんでしょうね? 」
「もちろん、道中は私が守ってきたから、クリスには指一本触れさせてないよ、兄上はちゃんとクリスのナイトを務めてくれてたよ。」
クラウス様はギルにそう言ってるけど、僕何度かカルロス様に頭撫でられてるんだけど、それはカウントしなくていいのかな?
まぁ、危険があったわけじゃないからいいか。
「そうでしたか・・・カルロス様、ありがとうございます。」
「まあ、洞窟の先の調査が目的でもあったからな、まさか魔族の国まで本当に繋がってるとは思わなかったがな、危険な洞窟の存在も調べることが出来たし、可愛いクリスと一緒ってだけで、調査の旅も楽しいものになった。お前も無事で良かったな。」
そう言うと、カルロス様はギルの頭をガシガシと撫でた。
「皆さん、感動の再会をお邪魔して申し訳ありませんが、ギルはまだ体調が不十分です。そろそろ休ませてやりたいのですが・・・」
クリストファーの言葉に、僕もギルに無茶させてしまったと思った。
「それぞれ部屋をご用意させて頂きましたので、今日はゆっくりおくつろぎ下さい。」
クリストファーはそう言うと、にっこり笑って僕を見る。
「それに・・・姉との再会を2人だけで味わいたいのです。」
「そうだね、やっと会えたんだから、再会を邪魔してはいけないね。」
クラウス様がそう言うと、クリストファーは「ありがとうございます」と言って、近くに居た使用人らしき人にテキパキと指示を出して、クラウス様と、カルロス様に部屋を案内するよう、伝える。
「ちょっとまて、ギルは歩くのも辛いだろう? ギルの部屋まで運んでやるよ。」
案内される前に、カルロス様がギルを抱きあげようとする。
「え? 良いですよ! 」
警戒するギルを無視して、カルロス様はギルを抱き上げた。
「遠慮するな、さすがにこんなお前をどうこうしようなんて思わないよ、ギルの部屋はどこだ? 」
そうして、ギルはカルロス様にお姫様抱っこで、クリストファーの案内で部屋まで運ばれた。
僕達はぞろぞろとみんなでギルを部屋まで送り届けた後、それぞれ用意してもらった部屋に向かった。
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