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62話 姉弟
しおりを挟む僕はクリストファーに案内されて、用意された部屋に入った。
ベッドとソファーセットが置かれた清潔感の感じられる部屋、だけど、あちこちに「可愛い」がちりばめられている。
ピンクのカーテン、小さな花が散りばめられた絨毯。
ソファーには花の形のクッションが2つ並んでいる。
「可愛い部屋だね。」
「ここは僕がここに連れてこられて最初にいた部屋だよ。」
僕の言葉に、クリストファーは微笑みながら僕に答える。
そして、僕をそっと抱きしめた。
「レティシア、僕を探してくれてありがとう。もうとっくに死んだと思われてると思ってた。」
「うん・・・僕にはクリスが死んだとは思えなかったんだ。どこかで生きてると思ってた。だから、探してた。会えてよかった・・・」
僕もクリストファーの背中に手を回して抱きしめながら溢れる涙を拭いもせず、しばらくお互い抱きしめあった。
「それにしても、クリス、何でドレスなんて着てるの? 」
会ってからずっと気になってた、長い髪は想像してたから気にならないけど、ドレスはおかしいだろ。
「ああ、これ? 僕の趣味。可愛いでしょ。」
クリストファーはなんでもない事のように答えるけど、イヤイヤ、可笑しいだろ!
「は? 趣味? 」
「そう、趣味。さらわれる前、レティシアと服を交換して、ドレスを着て目覚めちゃった。」
クリストファーはお茶目にウインクしながら話すけど、おどける時のクリストファーは嘘をついてる。
「・・・嘘だろ? 」
「ホントだよ。・・・ちょっと理由は違うけど。」
クリストファーはちょっと俯きながら顔を逸らして答える。
「・・・話したくないなら無理に聞かないよ。」
「・・・ここに連れてこられた時、僕レティシアのドレスを着てたから女の子だと思われてたんだよね・・・それで、もし男だってバレたら殺されるかもしれないと思って、ずっと女のフリしてたんだ。」
僕が話さなくていいと言うと、クリストファーから話してくれた。
そうだったんだ、魔族の国に連れてこられて、どんなに怖かっただろう。
「クリス・・・辛い思いをしたんだね・・・」
クリストファーがどんな思いだったか想像するだけで胸が痛くなる。
そう思ったのに、クリストファーはにっこり笑う。
「でも、色々あって、今はみんな僕が男だって知ってるよ? だから、別に男のカッコでもいいんだけど、ほら、僕、美人だから、ドレスが似合うでしょ? なんかドレスが気に入っちゃって、だから僕の趣味だよ。」
なんだ、その軽いノリは・・・
「それより、僕はレティシアの方が気になるよ、何で僕のフリしてるの? 僕を探すため? 」
クリストファーにそう言われて、どう言おか悩む。
正直にそうだと言うと、クリストファーが気に病むだろう。
「そうなんでしょ? ギルから聞いたよ。」
僕がどう答えようか悩んでいると、クリストファーが先に言葉を重ねた。
ギルから聞いたのか・・・
「僕の為にごめん。僕の為にいっぱい努力してきたって聞いてる。」
何も答えないでいると、クリストファーが頭を下げてあやまる。
「謝ることないよ、僕がしたくてしてきた事だ。こうしてクリスを見つけることが出来たんだから、僕のやってきた事は間違いじゃない。」
そう言う僕を、クリストファーはくすくすと笑う。
「どうしたの? 」
「レティシア、話し方もすっかり男だね。」
「しょうがないだろ? 9年間男のフリしてたんだから、今更女言葉なんて使えないよ。」
「これじゃどっちかわかんないよ。」
クリストファーは可笑しそうに笑う。
確かに、2人ともこの話し方だと、どっちも男みたいだよな。
「レティシア、お供の王子様達はレティシアがクリスでなくレティシアだって分かってたみたいだけど、ギルは? 」
突然、クリストファーに真剣な目で見られて焦る。
クラウス様は何故か知ってた。カルロス様には僕から話した。
だけど、ギルはまだ僕が男だって伝えてない。
だけど、クリストファーと会っていたのなら、僕が女だってバレたんじゃないのか?
「ギルは僕の事をレティシアだと思ってるよ。」
僕の考えを読んだのか、クリストファーが答える。
「僕からは話してないよ、シアが話したくないなら、みんなにも協力してもらってこのまま黙っとく? 」
ギルに出会って、僕を前みたいに友達と思ってくれてると思うと、打ち明けるのが怖い。
だけど、クリストファーがこうして目の前に居るのに、僕がいつまでもクリスで居るのはおかしいよね。
「このまま僕がレティシアのフリしとく? そんな事出来ないよね? 」
僕が黙り込んでいると、クリストファーが優しく問いかける。
「僕がレティシアの9年間を奪ってしまったんだ。シアには幸せになってもらいたい。それがどんな形でも僕はシアに協力するよ? 」
「何言ってるの? 僕は僕の意思でこうして来たんだから、クリスが気に病むことは無いよ。」
僕は申し訳なさそうに僕を見る僕より少し背の高いクリストファーの頭を撫でた。
「でも、ありがとう。クリスは相変わらず優しいね。」
クリストファーはいつもにこにこと僕の後を付いてきてくれてたけど、いつも僕のことを考え、大切に思ってくれてた。
魔物に襲われたあの時も、クリストファーが咄嗟にかばってくれなかったら僕は死んでたかもしれない。
離れていた時間が長くても、やっぱりクリストファーだ。
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